2017年8月25日金曜日

全米「住みたい町ナンバーワン」ポートランドに関する覚え書き

さて、皆既日食ハンティングは微妙な結末を迎えてしまいましたが、今回、人気沸騰中の町ポートランドを見てみたかったというのも、この旅を決行した理由のひとつ。じゃ、初ポートランドどうだったのよってことで、早速町にフォーカスしていきましょう。


えーと、その前に。

ポーランド(Poland)じゃないですよ。ポートランド(Portland)。ヨーロッパじゃなくてアメリカのオレゴン州にある都市。ちなみに、メイン州にもポートランドって町がありますが、こちらはオレゴン州の方の10分の1規模のスモールタウンです。

何しろ、いまアメリカ人の住みたい町ナンバーワンです。東京で言えば吉祥寺なわけです。いったい、この町の何が、アメリカ人にそう思わせる?

実質2日半の短い滞在でしたが、日食の翌日に、ポートランド郊外の滝をめぐる半日ツアーに参加した際、ガイドしてくれた谷田部さんという方(ポートランド在住50年超!)から色々話が聞けたので、その内容半分、私の体験(&印象)半分で覚え書きを綴っていきます。


・ポートランドの人口は64万人。気候が快適
ポートランドは、人口がじわじわ増えています。16年の統計でおよそ64万人。日本人は、ポートランドとその近郊で5000人ぐらいが住んでいるそうです。ポートランドの緯度は稚内とほぼ同じだそう。その割には気候は快適。夏場は爽やかで雨が少なく、冬場はやや雨が多いが、気温が氷点下を下回ることがあまりない。

ホテルで下着を洗濯して部屋に干しておくと、エアコン切ってあってもすぐ乾くんだこれが。基本、夏場は乾燥してます。

・町がコンパクト

ダウンタウンは、面積が2キロ×3キロほどしかない。かなりコンパクト。移動はMAXライトレールというトラムが便利です。このトラム、運賃も安い。2時間有効券が2.5ドル。1日有効券が5ドル。なんと、このトラムでポートランド空港(PDX)から2.5ドルでダウンタウンまで来ることが可能。空港から300円たらずでダウンタウンのホテルまで移動できる町なんて、世界中でも珍しいんじゃないか。


トラム運営元のTRIMETがアプリを出しています(ケツにリンクあり)。このアプリでトラムもバスも乗り放題。しかも、トラムは改札もないので、タダ乗りも可能なんじゃないかと思えちゃうレベル。だけど、安いからちゃんとキップ買おうね。アプリの場合は、最低5ドル以上じゃないとクレカ決済できません。

・州税(日本における消費税)がゼロ
これは画期的ですね。アメリカでは、オレゴンの他にデラウェア、モンタナ、ニューハンプシャーが州税ゼロなんだそうです。


ほら、ホールフーズマーケットで買い物した領収書を証拠に貼っておきましょう。「Tax/Fee」が「0.00」です。あとで気がついたんですが、アップルストアで買い物しとけば良かったなと。iPadのケースとか、AppleWatchのベルトとか、電源ケーブルを刺さなくて使えるものはどこの国で買っても一緒なので、税金の安いところで買うのが一番割安。

ポートランドのアップルストアは、店の前にトラムが走っててなかなか珍しい感じ。


もちろん、いいことだけではありません。ネガティブな面も紹介しておきましょう。

・ダウンタウンにはホームレスがけっこう多い
ポートランドでは、女性のホームレスもけっこう見かけます。今年行った、サンフランシスコやサンノゼよりもホームレスは多い印象。ホームレスにとっても、住みたい町なのか。

先の谷田部さんによれば、ポートランドには、毎日100人〜120人が流入して来るそう。これは全米でもいちばん多いレベルなんだとか。


アメリカ人は、仕事も決めず、行き当たりばったりで他の州に移住しちゃう人が結構多いんだって。「暮らしやすそうだから、取りあえず行っちゃおう」ってノリでポートランドにやってくる輩が多いらしい。いわゆる難民だよね。

・山火事が多い
今回、滝をめぐる半日ツアーに出かけましたが、その際に谷田部さんが「今日は空があまりキレイじゃない。残念です」と繰り返していました。確かに、コロンビア川を望む景色は雄大ですが、遠景はクリアじゃない。


「これは、山火事が原因なんです。オレゴンの夏は山火事が多いんです」と。山火事の主な原因は落雷なんだそうです。で、火が南風に煽られてポートランド方面にやって来る。アメリカ西海岸は、カリフォルニアにしても、カナダのバンクーバーにしても、夏は山火事がやっかいですよね。

・産業と日本企業
ポートランド港は、全米で一番小麦の出荷量が多い港なんだそうです。橋にはクレーンが装備され、船に対してエレベーター式に小麦を昇降させる装備がついてます。


グルテンフリー継続中の私にはどうでもいい話ですw

日本企業とポートランドの関わりについて言うと、まず1950〜60年代、小麦の輸出のメッカであるポートランドに、日本の商社がやって来ました。次いで、80年代に電機メーカーが来ました。NEC、富士通、エプソンetc。シリコンバレーが有名になった後、ポートランドは「シリコンフォレスト」という呼称を流行らせようとしましたが、失敗したようです。

そしていま、ポートランドでいちばん勢いのある日本企業は「味の素」だそうです。ラーメン専門の会社を設立したほか、ウインザーという北米での餃子シェアNo.1の会社を買収。ラーメンと餃子のツインタワーでポートランドを、いや北米市場全体を攻めまくっているんだとか。

・ストロングポイント
ポートランドの主要な資源(=ストロングポイント)は3つあるそうです。まずは「人」、次に「自然」、そして「気候」の3つ。「自然」と「気候」については大体分かります。が「人」についてはよく分からなかったので、谷田部さんに聞いてみました。「ポートランド人って、どんなキャラなの?」と。


「とにかく明るくてフレンドリーです。ロサンゼルスやニューヨークの人とは全然違って、気取ったところがありません。それに、どうも大都市の人たちとは価値観が違うみたいなんです。分かりやすく言うと、一発当てたい、大金持ちになりたいって人はあんまりいなくて、むしろ、より素朴に、人間として評価されたいという……」

「なるほど。もうちょっと詳しく知りたいので、具体的な例はありませんか?」

「例えば、ポートランドには屋台(Food cart)が700もあります。屋台商売では、どんなに流行ったところで大金持ちになることはできませんよね。だけど、低資金で開業できるところがいいところ。しかし、屋台はたくさんあるから競争も激しいですよね。味が美味しいだけじゃダメ。だから、接客がとても大事なんです。とにかくお客さんにフレンドリーに接して、友達になって、リピーターになってもらう。そういうところを、彼らは一生懸命やるんです」

そうかぁ。確かにこの町にはバブリーな感じは一切ありません。スモールビジネスで十分なんだから、マーケティング云々じゃなくて、そこそこ美味しい料理と気立ての良さで人に認めてもらおうって方向性なんですね。地に足つけて、お金じゃない、心豊かな人生を送りたい人たち。

ポートランドのスローガンは、「Keep Portland Weird」だそうです。(いい意味で)「変わった町」であり続けようと。スティーブ・ジョブズの「Stay Hungry, Stay Foolish」を思い出します。

・ナイキのお膝元
ポートランド(というかオレゴン)で大成功した企業の筆頭といえば、ナイキです。


この、オレンジ色のチャリ。ポートランドのバイクシェア(Dock to Dockの自転車シェア)は、100%ナイキの寄付だそうです。市内に100カ所、1000台の自転車があって、1回2.5ドル、1日12ドルで使えます。

・松茸が安い
滝は、夏場は水量が少なくて、秋が深くなるにつれて水量が増すそうですが、当地では秋になると松茸が採れるんだそうです。マーケットで買うと、15本で20ドルぐらいだって。そりゃ激安ですよ。飛行機内への持ち込みも簡単らしいので、秋は日本へのお土産にいいかもしれません。


ポートランドには日本食レストランもたくさんあります。寿司屋は40以上あるそうです。うち、日本人経営(=ちゃんとした寿司屋)は3件ぐらいだとか。

以上、かなりディープな情報をゲットできました。アメリカの町は、どこも観光資源に乏しいので、史跡名所よりも経済とかビジネスの話の方が面白いですね。

ポートランド、なかなか良さげな町ですよ。また来るかもです。次回は秋だな。松茸食いにね。


最後に、もっとも有名なマルトノマ滝の写真を貼っておきます。落差189メートル。なかなか見応えのある名滝揃いですよ、ここは。


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