久々に本のご紹介。日本料理の深遠なる世界に英国人が感嘆するという、日本人の愛国心をくすぐる1冊です。
「英国一家、日本を食べる」マイケル・ブース著、寺西のぶ子訳
ル・コルドン・ブルーで料理を学んだ英国人の筆者(トラベル・ジャーナリスト)が、妻と子ども2人の4人で、北海道から沖縄まで3カ月にわたって日本料理を食べまくった記録です。
彼が日本を訪れるきっかけは、料理仲間の友人から一冊の本をプレゼントされたこと。以下引用。
辻静雄とは、辻調理師学校の創設者です。この本に心を奪われてしまったマイケル・ブースは、衝動的に日本行きを決めてしまうのです。そして、日本での食べ歩きの一部始終を一冊の本にまとめたと。ル・コルドン・ブルーで料理を学んだ英国人の筆者(トラベル・ジャーナリスト)が、妻と子ども2人の4人で、北海道から沖縄まで3カ月にわたって日本料理を食べまくった記録です。
彼が日本を訪れるきっかけは、料理仲間の友人から一冊の本をプレゼントされたこと。以下引用。
その本は、1980年に出版された、辻静雄の「Japanese Cooking : A Simple Art」の新装版だった。「Gourmet」誌の編集者、ルース・レイシュルと、アメリカの伝説的なフードライター、故M・F・K・フィッシャーが序文を書いているのを見れば、これはありきたりの料理本でないとすぐにわかる。
最初は、日本のことを軽くバカにしていた筆者が、日本に来ていろんなものを食べ歩くほどに、その魅力にズブズブにはまっていく様子が読んでいてなかなか楽しいんですね。焼き鳥、ちゃんこ、天ぷら、カニ、ラーメン、寿司、etc。
この本を読むと、日本食が、いや、日本人の食の嗜好が再発見できます。例えば、筆者が札幌でカニを食べたあとのこの記述。
その後数週間、僕は奇妙な感覚に襲われ続けた。北海道から南へ向かって移動するにつれて、北海道のカニが恋しくなったのだ。列車のなかで、飛行機のなかで、頭にはあのとらえ難い風味がよみがえった。その風味の大部分を占めるのは食感で、生のカニ身の半分液体で半分固体の不思議な味わいは、舌の上で余韻を楽しもうにも、早々にかき消されてしまう。こういうことからも、日本人の食感に対する意識が異常なほど洗練されていることがはっきりとわかる。
日本人は口に入れた食べ物の舌触りを味と同じように重視し、料理の温度についてはさほどではないものの(なにしろ、温かい料理はやけどするほど熱々にするのが、デフォルト設定だから)、食感についてはとてもきめ細かいニュアンスを大切にする。
料理の温度についてもご明察です。確かに汁物は熱々じゃないと許せないですよね。東南アジアなんかに行って麺を注文すると、出てきた麺のスープがぬるいケースって意外に多い。韓国で朝食にお粥食べに行ったら、出てきたお粥がヌルくてがっかりしたことを思い出しました。熱々を好むのって、日本人だけなのか?
筆者一家の、大阪を訪れた時のエピソードも実に興味深いものがあります。大阪編の冒頭の、「大阪に関するトリビア」がふるっています。
次の大阪に関するトリビアのなかで正しいのはどれか? 間違っているのはどれか?
1. 大阪の回転寿司のベルトコンベアーは、東京の回転寿司よりも40%早く回っている。
2. 大阪人が歩く速さは秒速1.6メートルで、東京人の秒速1.54メートルを凌いで世界一だ。
3. 大阪の交通機関の券売機の硬貨投入口は日本一大きく、硬貨をすばやく入れることができる。
4. 大阪人の普段のあいさつは、「もうかりまっか?」である。
5. 大阪では、エスカレーターに乗るときに右側に立つのが慣わしだが、大阪以外では左側に立つ。
6. 世界最速のファストフードは、大阪で生まれた。
7. 大阪のGDPは、スイスとほぼ同じである。
答え:すべて正しい。
余談ですが、この本を読んで無性に大阪に行きたくなり、週末のホテルの空きを調べたところ、全然空いてない。
「何で?」ってことで、よっぽど大きなイベントがあるんじゃないかと気になって調べてみたら、ひとつ思い当たるふしが。
前売りで長居のチケットが完売したのって、初めてだそうです。Jリーグの試合では。全国のセレ女が大集合して、試合見たあとにお好み焼き食べて大阪に泊まるんでしょうか???
ま、大阪ダービーとホテルの混雑の因果関係について、本当のところは分かりませんが、今週は大阪行きは諦めて、テレビでダービー観戦ですね。
話を戻します。
日本の食べ歩きを終えて、パリ(英国人だが、パリ在住)に帰った著者に、辻の本を渡した友人が言った言葉を紹介して、本エントリを締めることにしましょう。
「もうひとつある。覚えとけ。『ごちそうさまでした』って言うんだ。
僕はおうむ返しに言ってみた。「ごちそうさまでした。それ、何だい? 白人には料理ができないっていう意味?」
「仏教から生まれた言葉で、食べ物を収穫する人や料理をしてくれる人に感謝するという意味だ。今度から、食事のたびに言えよ」
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