2018年8月2日木曜日

W杯2018観戦の旅。2度目のロシアの覚え書き20本

もう2週間以上経ってしまいましたが、FIFAワールドカップ・ロシア大会はフランスの優勝、クロアチアが準優勝という結果で幕を閉じました。今回、個人的には2006年ドイツ大会以来久々のW杯現地観戦となりました。そして、ロシアには2016年以来2度目の渡航。長いようであっという間だった17日間のロシア滞在をふり返り、覚え書きを20本ほど記しておきます。


1. ワールドカップは、お祭りです!
モスクワの赤の広場から北に伸びるニコルスカヤ通りは、常時歩行者天国で、朝から深夜まで各国のサポーターが練り歩いて大賑わいでした。夕方から夜になると、人の数が増えすぎて、歩くのも大変になります。夜になるとすだれ状の照明がキラキラと輝き、オサレ感が増しますが、各国サポーターの野太い雄叫びとチャントが照明によるロマンチック感をぶち壊し、フェス気分を盛り上げてやみません。


2. FAN ID最高! 次のW杯やオリンピックなど今後のスタンダードになるかも
今回、ロシア入国にあたり、ビザは必要ありませんでした。代わりに「FAN ID」という身分証明書を取得して使ったのですが、これが最高に便利。カンヌ映画祭のパスみたいなもので、これを首からぶら下げておけば、「W杯を観戦しに来た旅行者」だと分かるのでいろいろなことがスムーズに運びます。地下鉄やバスに無料で乗れる、ボランティアが話しかけてくる、美術館などの入場料が安くなるなど、色んなメリットがありました。特に、交通機関フリーパスは超絶便利で、モスクワの地下鉄やバスを使い倒すことができました。東京オリンピックでも、これやったら評判上がりますよ。誰が費用負担するかの問題はありますけどね。


3. モスクワの地下鉄ハンパないって。どんなダイヤで運行してんだ?
モスクワでは、ルジニキスタジアム(旧スターリンスタジアム)というサッカー専用スタジアムで4試合ほど観戦したのですが、毎度驚いたのは、帰りの地下鉄です。例えば、埼玉スタジアムで日本代表戦を観戦した後など、浦和美園の駅は大混雑し、駅に着いて行列に並んでから30分ほど待たないと帰りの電車に乗ることはできません。


しかし、ルジニキスタジアムの試合が終わり、最寄りのスポルティーバ駅にたどり着いてみると、そこには一切行列がありません。駅も混雑していません。何故なら、30秒おきに電車が入線してきて、どんどん乗客を運んでいくからです。東京の地下鉄も相当優秀だと思いますが、モスクワの地下鉄にはみんな驚きますよ。1分も待たないで次の電車が来るんです。8万1000人収容のルジニキスタジアムの帰り道が、こんなにサクサクだなんて! これが、今回ロシアで一番驚いたことかも知れません。


4. モスクワのSuicaはトロイカカード
FAN IDのフリーライドは、当該都市で試合が行われる日のみ有効です。では、試合がない日はどうするか? 「トロイカカード」を使うんです。このプリペイド方式のカードに200ルーブルぐらいチャージしておけば、地下鉄に5回ぐらい乗ることができます。なくなったらチャージして、Suicaみたいに使います。トロイカカードは、モスクワのみ有効なカードです。


5. 電動キックスクーターが大流行。次回チャレンジしてみる
モスクワでは、バイクシェアを利用している人がけっこういましたが、自転車よりも楽に移動できる乗り物がこれ。LAやサンフランシスコでも絶賛流行中の電動キックスクーターです。今年の5月から始まったシェアリングサービスで、1時間使って100ルーブルだとか。最大で25キロぐらいスピードが出るらしい。もしも次回モスクワに来ることがあったら、是非使ってみたいですね。


6. ロシアの人たちは親切だ。しかし、英語が通じない
今回、驚いたことには、ロシア人が皆親切だったこと。滞在中、あちこちで道を尋ねたり、電車の乗り方とかさまざまな質問をする機会があったのですが、みんな嫌な顔ひとつせず対応してくれました。エカテリンブルグに日本vsセネガル戦を見に行った時、私たちのグループには7歳の子どもが1人いたのですが、ロシアのおばあちゃんが寄ってきて、アメをくれたり、クマの人形をくれたり、色んなものをプレゼントしてくれました。しかし、残念なのは英語がなかなか通じない点。まあ、日本もおんなじぐらい英語が通じない国ですが……。


7. ロシアはメシが美味い。しかし、英語が通じない
ロシアは食事もかなり美味しいんですよ。食事するたびに、ロシアはヨーロッパだなあと感じます。ボルシチは2日に1度ぐらい、ビーフ・ストロガノフは4日に1度ぐらい食べていましたが、こうした定番メニューはどこで食べてもそこそこ安定しています。しかし、特に田舎の方にいくと、レストランでも英語が通じないことが多く、なかなか苦労します。田舎では、基本、接客もドン臭くなりますが、人間はモスクワより温かいと感じましたね。


8. カフェプーシキンのルーフトップ席が最高に気持ちいい
色んなレストランに行きましたが、中でもモスクワのカフェプーシキンが印象に残っています。オンラインで予約していったのにも関わらず、入り口で30分以上待たされたのですが、店員が「ルーフトップの席なら空いてるんだが、それでもいいか?」と聞いてきたので「ダーダー。もちろんダー」と即答。鉄格子扉のエレベーターで上った屋上のテーブルは、オープンエアで超気持ちのいい席でした。花火も見えたし。ちなみに、滞在中に行こうかと試みたパークハイアットのルーフトップは、テーブルあたりのミニマム料金が50000ルーブル(約10万円)からだと返事が来て、敢えなく断念。ミニマム10万円って、ずいぶんだよねえ。もっとも、カフェプーシキンにしても料理の値段は決して安くはないのですが、変なチャージなどなく、接客もこなれていて大変快適な食事となりました。


9. キャビアバーでキャビアを食べたよ
モスクワ滞在中、グムデパートの1Fにあるキャビアバーで、キャビアを食べました。10グラムのブラックキャビアとウォッカ50ccで2600ルーブル(約5200円)。これ美味いんだよね。晩メシの前のアペリティフだね。晩メシより高いけどw


10. 寿司も何度か食べたよ
ロシア料理は、日本人にも食べやすいものが多いのですが、日本料理にも頻繁に出合えます。もっとも遭遇率の高いのは寿司で、寿司屋以外でも、イタリア料理店やアジア料理店などで巻物を出す店が意外に多かった。あと、温かい枝豆を出す店などもあって、滞在中「食事に困る」という経験はあんまりなかったですね。


11. レストランのスタッフは、決してオーダーを間違えない
ロシアのレストランは、W杯期間中はどこに行っても大混雑でした。いろいろレストランに行ってちょっと驚いたことには、店員の仕事ぶりです。3〜4人で行ってバラバラに10品ちかくオーダーしている間、メモを取らない店員に「ちゃんと覚えてんのか?」と不安になるんですが、オーダーは完璧に通っています。ロシア滞在中、オーダーを間違えたレストランはありませんでした。これは嬉しい驚き。


12. お土産は、マトリョーシカ一択!
ロシアのお土産は、相変わらずバリエーションに乏しいですね。チョコレート、マトリョーシカ、キャビアぐらいかな。なかでもやはり面白いのはマトリョーシカ。チェブラーシカの耳デカ版があったり、サッカー日本代表のもあったし、トランプ大統領やプーチンなんかも鉄板です。しかし、値段もそこそこするし、案外かさばるので、なかなか悩ましい。日本からの観光客って、ひとりあたり何個ぐらいのマトリョーシカを買ってるんでしょう?


13. モスクワは雲がモコモコしてる
ロシア滞在中の写真を眺めていると、改めて目を見はるのは、空の色、そして雲の姿です。この写真はモスクワ郊外のモニノ空軍博物館におけるミサイル爆撃機の写真ですが、流線型でレトロな機体が、モコモコの雲を散りばめた青空を背景に何ともシュールな味わいを醸しています。ページのトップにおいたワシーリイ教会の写真も、なかなかインスタ映えしそうな一枚。これ、ヴォルゴグラードやサランスクではあまり感じなかったかな。モスクワに行ったら、毎日空を見あげてください。


14. タクシーは、基本、ぼったくり
モスクワでこんなことがありました。ベラルースキー駅からタクシーでゴーリキー公園まで行こうとして、駅の前にいたタクシーに値段を聞いたら「2000ルーブル(約4000円)だよ」と。ちょっと高いなと思ってパスし、配車アプリ「Yandex.Taxi」で調べると、表示料金は「230ルーブル(約460円)」の表示。で、さっきのタクシーに「2000じゃなくて、200ルーブルの間違いじゃない?」ってもう一度聞いたら「いやいや、2000だ。それ以下にはならない」という答え。モスクワのタクシーは、メーターがなく、事前に値段交渉のものが多かった。で、配車アプリの5倍から10倍ぼったくる。配車アプリも、Uberがなぜかモスクワでは使えず(エカテリンブルグでは使えた)、Yandex.Taxiの一択でしたね。ただ、Yandex.Yaxiは言葉の問題もあってあまり使い勝手が良くなかったのよ。


15. 翻訳アプリを使いこなすロシア人
アプリについては、言葉の問題で若干苦労しましたが、翻訳アプリを使いこなしているロシア人もいました。ヴォルゴグラードでは、タクシーの運転手が、スマホのGoogle翻訳アプリに音声入力で町の観光ガイドをしてくれたし、レストランのウェイトレスからは「あなたは昼食代を支払っていません」というスマホ画面を見せられて、「おお〜。払うよ払うよ」と支払いを行ったこともありました。昼食代が無料だと言われていたのだが、ドリンク代は無料じゃなかったというオチです。ヴォルゴグラード恐るべしで、2日ぐらいの間にGoogle翻訳コミュニケーションを何度も経験しました。モスクワでも、サランスクでも、こんなことはなかったもんね。


16. ロシア代表サポーターは、アイデンティティーが今ひとつ固まっていない
今回、大会を予想以上に盛り上げたのは、ロシア代表の快進撃であることは間違いありません。グループリーグ敗退を危惧する声をはねのけ、見事にベスト8まで駒を進めました。私は、決勝トーナメント1戦目の「ロシア対スペイン」を現地で観戦したのですが、「3対0でスペイン勝利」を予想していたところ、延長PKでまさかのロシア勝利。スタジアムは大変な盛り上がりを見せていました。で、現地で大勢のロシアサポに遭遇していて気になったことが2点あります。それは「代表のユニフォームを着ているサポが少ない」「チャントが1つしかない」というやつです。チャントは「ロッシーヤ!」のワンパターン。残念すぎです。そして、サポーターにおける代表のオレンジのユニ着用率は20%ぐらいでしょうか。あとは普通の私服。現地の関係者には、ビジネスチャンスが山のようにありますよ。「ロシアにおけるサッカーブームがようやく始まった」ってことですかね。


17. ハリルホジッチに何が? 各国サポとのサッカー談義はいつだって楽しい
同じホテルに泊まっていたギリシャ人と、シャトルバスに乗りあわせた際に「日本人か? いったい、ハリルホジッチに何が起きたんだ?」と尋ねられました。「うーん。説明するのがとても難しいんだが、監督と選手のコミュニケーション不足が問題らしい」としか答えられませんでした。相手は全然納得してませんでしたけど。


また、ドイツが韓国に0-2で負けた翌日、中華レストランでドイツサポと相席になりました。今度はこっちから「いったい、ドイツに何が起こったんだ?」って尋ねると、ドイツサポは「マシーンはグッド、エンジンもグッド。どこに問題があるか分からないよ」。さすが自動車大国だけあって、サッカーチームも車に例えるんですね。「じゃあ、ドライバー(監督)は?」って聞いたら「とてもリスペクトされている監督だよ」と。前回優勝国のドイツは予選リーグでロシアを去りましたが、その原因を明らかにするのは、案外難しいかも知れません。


18. W杯では、キリスト教の国しか優勝できない
これ、今まであまり言われてない事実なんですが、W杯で優勝経験のある国は8カ国。ウルグアイ、イタリア、ドイツ、ブラジル、イングランド、アルゼンチン、フランス、スペインです。すべてキリスト教の国です。今大会で、クロアチアが優勝していれば、9番目の優勝国になるはずでした。そのクロアチアにしても、ばりばりのカトリック国です。ちなみに、これまでW杯でベスト4になったことのある国のうち、非キリスト教の国は、2002年のトルコ(3位)と韓国(4位)ぐらいでしょうか。まあ、韓国もキリスト教国家とみなしてしまえば、トルコのみってことになりますね。非キリスト教の国が、W杯で優勝する未来はやってくるのでしょうか?


19. 今回のワールドカップ、中国に寄りすぎ?
ところで、W杯最終盤の3・4位決定戦(7月14日)が日本時間で23時キックオフ、決勝(7月15日)が24時キックオフと、日本では案外見やすい時間に試合が組まれていましたよね。これ、モスクワ時間ではそれぞれ17時、18時。ロンドンだと15時、16時と、ゴールデンタイムからはほど遠い時間。これの理由について考えてみるに、やはり「中国合わせ」の力学が働いた可能性が高いんじゃないかと。北京時間では、それぞれ22時、23時で日本よりも見やすい時間帯。これは現地観戦してると否応ナシに分かることですが、大会のスポンサーは半分近くが中国の企業です。時計部門はハイアール、乳製品の蒙牛乳業、スマホはVivo、あと、不動産のワンダグループ(万達集団)といった企業が、会場でブース展開したり、ピッチ広告でめちゃめちゃ目立っていました。こんだけ中国マネーが流れてくると、中国の視聴者をケアする必要も出てきますよね。ある意味、中国代表が出場していないのに中国企業がこんだけ出広しているというのも凄いと思いますが、決勝の試合時間は中国人民が起きている時間に寄せてきたんじゃないかと推測しています。まあ、日本人には結果ラッキーでしたけど。


20. 次はカタール大会ですが、また行きますか?
次回、2022年のW杯はカタールです。ちなみにその次、26年はアメリカ・カナダ・メキシコの3カ国共催という意味不明な大規模大会。さて、カタール大会は本当に実施されるのでしょうか? サウジアラビアやUAEなどアラブ各国がカタールボイコットを行っているという政治的な問題や、40度を超える猛暑の中、試合なんかできるのかという問題もあります。そして私にとっては「カタール、酒飲めんのか?」というもっと大きな問題もあります。



しかし、中東の地図を眺めていると、大きな発見がありました。カタールは、ドバイに近いんです。1番目と2番目の問題はさておき、3番目のアルコールの問題は解決できそうな雰囲気ですよ。つまり、ベースキャンプをドバイに設置して、試合を見る時だけカタールに飛んで行くんです。試合を生観戦しない日は、ドバイのレストランでワインを飲みながらテレビ観戦すると。大枠、その線で行けるんじゃないでしょうか。カタール大会のFAN IDは、ドバイの町でも使えるようになるといいなあ、なんてね。 

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