たまには映画の話でも書いておきましょう。クリストファー・ノーラン監督の「オデュッセイア」の公開が近づいてきました。2026年9月11日から日本公開です。
北米では7月17日に公開済みで、これまで大ヒットを記録しています。その評価も概ね好評といった感じで、他でもないノーラン監督案件ということもあり、今年もっとも見るべき1本ということで間違いはないでしょう。そしてノーラン案件のお約束、172分という長尺です。もちろん、IMAXカメラで撮影。撮影監督はいつものホイテ・バン・ホイテマです。
キャストも主演のマット・デイモン以下、アン・ハサウェイとかトム・ホランド、ロバート・パティンソン、ゼンデイヤ、シャーリーズ・セロンなどなど、かなり豪華な布陣となっています。
しかし予告編を見たところ、スペクタクルな演出は迫力満点なのですが、話の内容がさっぱり分かりません。原作は少年の頃に読んだ記憶がありますが、まったく覚えていない。トロイの木馬と関係がある? ない?
https://www.youtube.com/watch?v=0kMXZmA5K00
ということで、予備知識のないまま3時間を耐えるのは辛すぎるので、原作本を図書館で借りて、予習することにしました。
まず、岩波文庫の「オデュッセイア」(松平千秋訳)を手に取ってみたのですが、これがけっこう文語調で仰々しい。「国宝」の曽根崎心中のくだりを彷彿させるような表現が冒頭から連打され、読んでいる自分の首や腕が勝手にぐるぐる回る感じがします。ちょっと引用してみましょう。
「クロノスの御子にして至高の王者たる、われらが父君よ、思慮深きオデュッセウスがわが家へ帰還することをば、まこと至福の神々が善しとなされるのであれば、神々の使者、名に負うアルゴス殺しのヘルメイアスを、オギュギュへ遣わして、断乎たるわれらの決議、すなわち堅忍不抜のオデュッセウスを帰国せしめる件を、髪美わしきニンフに即刻伝えさせようではありませんか。(以下略)」
……これは無理だ。文が長いし漢字も難しい。ネットの文章に慣れきってしまった自分に読破は不可能と断念し、別の本を探したところ、おあつらえ向きがありました。
岩波少年文庫の「ホメーロスのオデユッセイア物語」(バーバラ・レオニ・ピカード作 高杉一郎訳)上下巻。
同じ岩波書店なのに、表記が「ホメロス」と「ホメーロス」で違っているのが不思議です。また「岩波少年文庫」ってのもちょっと気になって、古典文学を子ども向けに超訳したような代物なのではないかと。
しかし「訳者あとがき」によれば、この本はオックスフォード大学出版部から1952年に出たもので、もともとの「オデュッセイア」の構成を、2部→1部→3部の順番に再構成し、少年少女でもついてこれるように翻案したものであるとのこと。要は、日本で子ども向けに翻案したものではなく、オックスフォードで制作された初心者向けバージョンでした。
読み進めてみると、文語的な表現はほぼ見あたらないし、漢字も平易だし、ルビが多いのがちょっと気になりますが、オリジナルよりも遙かにサクサク読めます。
オデユッセイアは、例の木馬の作戦でトロイア戦争で勝利をおさめるが、故郷イタケー島に帰る航海で神々の逆鱗にふれ、10年もの間漂流することになる。オデユッセイアが不在の間、イタケー島の住居を守る妻ペネロペの元には多くの男たちが集い、住居を不法占拠してペネロペに求婚を迫っている……。
気がつけば、一週間とかからずに上下巻を難なく読破。実にカタルシスの大きな、壮大な英雄叙事詩であることが分かりました。映画では、ギリシャの神々がどう描かれるのか非常に興味がわきます。また、けっこう残虐なシークエンスもありそうで、どんなVFX処理が施されているのか興味津々。
この本(上下巻)の「まえがき」や「訳者あとがき」には、今から3000年前に成立した叙事詩「オデュッセイア」と「イーリアス」にまつわるさまざまな世界中の研究と論争がかいつまんで紹介されています。さらにはオデュッセウスが航海した経路の地図なども収録されており、映画を見る前に大変有意義な予習活動になりました。
そして、上下巻読み終わったあとで先の予告編を見直すと、その内容が驚くほどヴィヴィッドに理解できるというわけです。
てなわけで、9月11日の公開が大変楽しみです。9月4日にIMAXの先行上映があるようですが、グランドシネマサンシャインの3回は、すべて売り切れていますね。さすがです。やっぱIMAXで見たいもんね。



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