2017年9月13日水曜日

東京の自転車シェアが拡大してた。これ、マジで便利だよ

もうだいぶ前から、紙の本は極力買わないようにしています。読みたい本は図書館で借りるか、Kindleで電子版を購入する。図書館は、圧倒的な蔵書量の文京区図書館をメインに、サブで新宿区図書館、さらに中央区の図書館もたまに利用します。自分の生活圏内では、この3区の図書館が読みたい本にリーチできるトップ3です。

私の住まいは新宿区ですが、文京区の区界に近いため、もっとも近いのは文京区の水道端図書館。でも、徒歩で10分以上かかる。次に近いのは新宿区の中町図書館で、こちらは徒歩で15分。これがなかなか不便な距離なんですわ。

読みたい本は図書館のWebサイトで予約しておきます。本が確保されるとメールで連絡が来るんですが、本をピックアップしに行けるのが週末なので、だいたい週末は図書館をハシゴすることになります。これが徒歩だと30分以上かかる。車で行けば楽なんですが、図書館には駐車場がないので、路上駐車のリスクをとるか、コインパーキングでお金払うか。

そして、図書館はいずれも駅から遠く、電車を使うという選択肢はありません。さらに、区の走らせるコミュニティバスも検討したのですが、区をまたいで走行するバスはありませんので、これまた役に立たない。

徒歩で行くか、車で行くかしかない。他に、何かいい方法ないの?

あったんです。


自転車という選択肢が。シェア自転車ですよ。

かつて、勤務する会社が中央区にあった頃、自転車シェア用のポートがあちこちに設置され、赤い自転車が並べられていた光景を覚えています。しかし、当時その自転車は貸出も返却も中央区内でしか行えず、「こんなの意味ね〜じゃん」って思ってまったく使う気にならなかった。

それが、ちょっと調べてみたところ、今年(2017年)の1月から、千代田、中央、港、江東、新宿、文京の6つの区をまたいで乗り降りできる自転車シェアリングの広域実験が始まっていたのです。ちゃんと、新宿区と文京区も含まれていますよ。


サービスエリアとステーションの分布をGoogleマップでみるとこんな感じ。いいねえ。

早速乗ってみましょう。まずは、Web上でユーザー登録します。スマホ用のアプリもあるので、こちらもダウンロードしておきましょう。最寄りのポートを探すのに断然便利です。

PC、スマホでユーザー登録する際に、クレジットカードも登録します。クレカ決済の他には、dアカウントによる決済も可能です。

利用料金です。まず「1回会員」は、最初の30分が150円。以後、30分ごとに100円の超過料金がかかります。次に「月額会員」になると、月額2000円。最初の30分が0円で、超過料金が30分100円。続いて「1日パス」というのがあって、何度乗っても1500円。


1回会員でやってみましょう。最寄りの自転車ポートに行って、アプリを起動します。

アプリから「借りる」をタップ →「新宿区」をタップ →ログイン →「サービスを利用する」から「駐輪場から選ぶ」→「ポートを選ぶ」→「自転車を指定する」という感じで自転車を特定し、4ケタのPINコードをゲットして利用します。


サドルの後ろにある、コントロールパネルから4ケタのPINコードを入力します。この場合、ICカードは使いません。これを「やりかたA」としましょう。

「やりかたB」ならもっと簡単です。ユーザー登録の際に送られてくる8ケタのPINコードを、上と同じコントロールパネルに入力して、ICカードをタッチすれば、以後、ICカードだけで施錠を外すことが可能になります。私はアップルウォッチでやりました。アップルウォッチの場合は、サイドボタンを2クリックして、スイカ画面を呼び出して使ってください。

ただ、自転車によっては、この「やりかたB」に対応していない(8ケタのコードを入力できない)車種があるようで、その場合はAの方でやってみてください。


今日は天気がいいので、自宅のそば(新宿区東五軒町)で自転車を借りて文京区の水道端図書館まで行ってみましょう。返却する本が1冊あります。

乗って初めて気づいたことには、この自転車、電動アシストがついてます。お〜、らくちん。これはいい。


メーターが切り替え式になっていて、バッテリーの残量、走行可能距離、速度計の3モード。自転車借りる前に、バッテリーの残量は確認した方がいいですね。バッテリーがゼロだと、電動アシストが効きませんから。

電動アシストで走りが楽だってことが分かったので、足を伸ばして中央区の京橋図書館まで行ってみましょう。

今日は日曜日で、お堀端の内堀通りがサイクリング道路になってます。これは快適です。家族連れとか、サイクル野郎がたくさん走っています。もしかして電動で走ってんの、オレだけ?


およそ7キロを30分ほどで走って本を返したら、けっこう足が疲れたので、京橋図書館の敷地内にあったポートに自転車を返却し、有楽町線に乗って自宅へ帰ります。片道自転車、片道電車ってなかなか新しい。

私の場合、勤務先が千代田区なので、通勤でも使えますね。自転車にはカゴもついているので、荷物もそこそこ運べます。

久々に便利な乗物を見つけました。日常の足として積極的に利用していこうと思います。しかしこの、電動アシスト自転車のシェアリングって、オペレーションが意外に大変なんじゃないですか。バッテリーの充電って、どんな頻度でやってんだろ。

あとは、ロンドン並みにポートをたくさん増やして欲しいのと、1日パスの料金をもっと安くして欲しい。1日乗り放題で1500円ってことは、150円を10回乗るのと同じ料金だもんね。割安感まったくナシ。ちなみに、東京メトロの1日乗り放題は600円。東京メトロ&都営地下鉄乗り放題キップは900円でっせ。

区長さん、よろしくご検討のほど。

▼東京・自転車シェアリング広域実験
http://docomo-cycle.jp/tokyo-project/

2017年9月11日月曜日

驚嘆と爆笑の一冊「どうしてプログレを好きになってしまったんだろう」

最近、こんな本を読んでおりました。


「どうしてプログレを好きになってしまったんだろう」(市川哲史・著、シンコーミュージック・刊)

ティーンエイジャーの頃、プログレ(プログレッシブ・ロック)にどっぷりハマっていた私ですが、実はいまだにプログレは骨の髄まで染み込んでいて、この本にしても「オレが読まずに誰が読む」って思いましたよね。でも、今さら大昔の自分探しの記憶をほじくり返してもなあって気持ちもあって、読むの止めようかとも思ったんですが、目次をチラ見してしまったら、もう止められなくなっちゃった。

全480ページという超大作です。分厚い。取り上げられているのは、プログレ全般というわけではなく、「キング・クリムゾン」「イエス」「エマーソン・レイク&パーマー」「ピンク・フロイド」「ジェネシス」(登場順)という5大メジャーバンド。

冒頭、日本人のプログレ好きに関してこんな書き出しで始まります。以下引用。
日本人は、地球上でいちばんプログレッシヴ・ロックを好きな民族である。
ジョン・ウェットンに言わせると、南米・オランダ・ドイツ・ポーランド・チェコ・イタリアもプログレに熱心で、一時はこれらの諸国のおかげでプログレは生き延びたようだ。
(中略)とはいえやはり、日本人が地球上でいちばんプログレッシヴ・ロックを好きな民族だ。
うんうん。分かる分かる。日本人はプログレ大好きなんだよね。私も学生の頃は、クラスメートを「プログレ好きかそうでないか」で人物判断してたもん。プログレ好き=同志、プログレ嫌い=野蛮人って感じで。今思えば、世間知らずでアホな若者だったよね。

さて本書ですが、まずは順当にキング・クリムゾンからスタートします。なんとクリムゾンだけで138ページが費やされてる。当該部分の目次はこんな感じ。

第1章 キング・クリムゾン ロバート・フリップ「被害者の会」
1 90年代クリムゾン全史
2 フリップ翁とダリル・ホール
3 宮殿の中の懲りない面々(i)はじまりはジョン・ウェットン (ii)ごめんねデヴィッド・クロス (iii)さよならエイドリアン・ブリュー (iv)1993年10月のロバート・フリップ
4 もしもクリムゾン


第1章では、「尊師」ロバート・フリップの求道者としての一徹な姿勢と、この面倒くさい男を取り巻く面々について詳細に語られます。尊師に振り回され、ディスられ、翻弄されたミュージシャンたちの恨み節の数々。そして尊師その人がインタビューで語る、必要以上に婉曲的で意地悪で、終始上から目線な発言。

私もかつては、ミュージックライフとか音楽専科とかロッキングオンとか読んで事情通を気取ってましたけど、今さらながら、驚きと発見がいくつもありました。2件だけご紹介。

まず、尊師がデビッド・シルビアンをクリムゾンに誘ったが断られたという事実。デビシルと言えば、JAPANというバンドのリードボーカルとして、その美貌と根暗なムードで日本のネエちゃんを次々に失神させていたことで有名です。尊師とは「シルビアン&フリップ」名義で何枚かアルバム出してます。そのユニット活動の流れで、フリップはデビシルをクリムゾンに引きずり込もうとしていたらしい。でも、それはちょっと違うよねえ。思いとどまったデビシルは偉い。

そしてもうひとつは、驚いたというよりはガッカリなんですが、初期のクリムゾンの歌詞にまつわるエピソード。

これは引用しときましょう。
キング・クリムゾンを批評する際に必ず語られたのが、その特異な“文学性”だ。<コンフージョン・ウィル・ビー・マイ・エピタフ>やら<スターレス・アンド・バイブル・ブラック>といった優秀なフレーズを輩出し、聴いた者は<我々は常にカオスの中に在る、逃れることの決してできない袋小路の中にいる>という哲学的命題として捉えてきた。私はいまでもそのメッセージ性を肯定しているし、ずっと信用してきたのである。

もっと言えば、情緒性と文学性と衝動性が非常に高いレベルで調和している点こそが、クリムゾンがクリムゾンたるゆえんだ。しかしフリップは私に、「自分にとってのクリムゾンとは<エネルギー><激しさ><折衷性>、これが本質である。そしてバンドのアイデンティティーとは<目標の追求>である」と断言した。

あのー……文学性はどうですかね?

フリップ 詞は私自身が書くものではないからね。<スターレス〜>はディラン・トーマスからの借用だし、<コンフュージョン〜>はピート・シンフィールドだ。

市川(筆者) わかってます。でもそうしたフレーズを、我々プログレッシャーは哲学的命題として捉えてきちゃったんですよねぇ。

フリップ それは私には受け容れられない。そういう立場は僕がとっているのとは違うものだ。

(中略)
市川 あなたにとって実は<文学性>なんて、知ったこっちゃねえものなんでしょうか。

フリップ 私が歌詞にそれなりに気を配っているかということであれば、もちろんそれはしている。だがーー私自身が書くものではないからね。

30年以上遡って、夢をブチ壊されたような気分になりました。フリップ先生、そりゃないよ。あんたの頭の中には「哲学」って言葉はなかったんですかい? 「混乱こそ我が墓碑銘」って歌詞に無条件にシビレ、受験にはとうてい必要ない「epitaph」って単語をしっかり暗記していた少年時代のオレが憐れに思えてしょうがない。

学生の頃、私にとっての精神的アイドルは、キング・クリムゾンとスタンリー・キューブリックでした。キューブリックはどこを切っても「本物」だけど、フリップはそうじゃなかった。文学や哲学には興味ないんだって。

そんなわけでこの本では、ロバート・フリップは終始、「己のエゴ」を「バンドの建前」というオブラートで包んだ物言いをする、「かなり面倒臭い男」として語られていきます。でも、そこがプログレっぽいんだよね。いやあ面白い。

第2章 イエス たった紙一重の「理想と妄想」
5 <ABWH対90125イエス>戦記
6 <牢名主>クリス・スクワイアの生涯
7 ロジャー・ディーンの<地球幻想化計画>


イエスの章も最高に笑えますよ。ジョン・アンダーソンの能天気な感じ炸裂で。自分こそが「Yes」というバンドの化身と信じるジョンが、トレバー・ラヴィンの「シネマ」っていうバンドにちょろっとゲストで参加したら、いつの間にかバンドそのものを乗っ取っちゃってて、「90125」という大ヒットアルバムを「Yes」名義でリリースすることになった経緯とか。まあ、実際には仕組んだのはレーベルで、ジョン・アンダーソンはあくまでポジティブ思考な(だからバンド名がYes)夢見がちなオッサンでしかないっていうね。

いやー、ジョン・アンダーソンは全然憎めない。だけど、全然大人じゃなかったんだってことが痛いほどよく分かりました。

第3章 エマーソン・レイク&パーマー 「偏差値30」からのプログレ
8 キース・エマーソンは死なない
9 ELPのアートワークはなぜズバ抜けてダサいのかーーに関する考察


これも笑える章でした、引用。

さて山火事(スモーク・オン・ザ・ウォーター)や暴走族(ハイウェイ・スター)をなぜか唄っちゃうディープ・パープルも頭が相当悪かったが、実は我らのELPの偏差値もかなり低い。

そもそも<クラシックと融合すればアカデミックで新しいロックが生まれる>的な、プログレの前身ムーヴメントであるアート・ロック誕生の頃から流布する都市伝説を、懲りずに実践してるとこにまず低偏差値ぶりが露呈している。それは当時の日本人の価値観にも似たようなものなので、天に唾棄してもしょうがないのか。

ただしELPの場合は、大抵のプログレ系鍵盤奏者が大好きな浪漫派色が希薄な、バルトークにムソルグスキーにバッハにヤナーチェクにコープランドにヒナステラといったエマーソンっぽい選曲が、教養ありげに映ったのかもしれない。特にファンファーレやポリリズムなど勇壮な躍動感を感じさせる古典(クラシック)の楽曲を改作するという十八番の方法論が、なんとなく利口そうな雰囲気を醸し出して人々の誤解を誘ったような気がする。

なんとラッキーなバンドだろう。

引用終わり。書きっぷりは身も蓋もないんですが、確かに仰るとおり。「なんとなく利口そうな雰囲気」にまんまと騙されて、ELPのレコードを買いまくっていた自分が情けなくなりましたね。まあ、みんな買ってたけどさ。

第4章 ピンク・フロイド 積み上げた「壁」は誰のもの
10 私がピンク・フロイドである(パート1)
11 デイヴ・ギルモアは馬鹿だから偉い
12 ロジャー・ウォーターズの被害妄想は偉い
13 私がピンク・フロイドである(パート2)

ピンク・フロイドは「ザ・ウォール」以降、脱退したロジャー・ウォーターズと、残ったデビッド・ギルモアが泥沼の法廷闘争を繰り広げたことが、当時のファンには苦い思い出として記憶されています。

市川 どうぞやっちゃってください。
ウォーターズ そうかい? 僕は「ザ・ウォール」を自分の内面の最深層から、身を切るような想いで切り出してきて書いた。それを連中はまるで愉しいお芝居か何かのようにヒラヒラ演奏して、世界中を回ってるんだからな。

私も、ロンドンまでデビッド・ギルモアが主導権を握ったピンク・フロイドの、ワールドツアーを見に行ったクチです。そして何とこれが、光とサウンドの一大ページェントって代物で、オシッコちびりそうなほどに興奮したステージだったんですよ。だけど、身を切る思いで産んだ我が子(「ザ・ウォール」の楽曲)を、ツアーのハイライトに借用されたロジャー・ウォーターズは怒ってたんですよねえ。

でも、ライブは本当に凄かった。ロンドンで見たピンク・フロイドのステージは、私の人生において決して忘れられない経験です。

第5章 ジェネシス 永久不滅の「B級」味
14 私、<ピーガブ抜きジェネシス>の味方です
15 ピーターと玉葱
16 その名はハケット


ピーター・ガブリエルは、70年代中盤「幻惑のブロードウェイ」を最後にジェネシスを脱退しました。リード・ボーカルであり、精神的な支柱を失ったジェネシスはどうなっちゃうの?ってみんな思ったんですよ。当時。

結局、フィル・コリンズがボーカルになってジェネシスは続いていきます。ところが、この本によれば「検証してみると、ピーター・ガブリエルが詞を書いていない曲が意外と多い」という驚きの事実が。

だとするならば、そして残った四人の誰が一体「トリック・オブ・ザ・テイル」で再び、ジェネシスをプログレ色に染めたのだろうか。

自分一人で2曲、四人全員の共作で2曲、マイク・ラザフォードと一緒に2曲、スティーヴ・ハケットと一緒に1曲、フィルコリとも1曲ーーそう、収録8曲全てでイニシアティヴ執りまくりだった、トニー・バンクスっ。

金看板のピーガブでもフィルコリでもなく、実はバンクスこそがジェネシスそのものなのだ。良くも悪くも。

実は、ジェネシスの章が一番意外な内容でした。5大プログレバンドの中で、解散せずにもっとも長く継続しているのがジェネシスです。しかも、恐らくアメリカでもっとも成功したのもジェネシスです。それはフィル・コリンズがボーカルをやってた時代ですね。しかし、バンドのコアは、ピーガブでもフィルコリでもなく、キーボードのトニー・バンクスだったという事実には、当時全然気がつかなかった……。

ロックが今よりもはるかに巨大産業だった時代、その最先端にいた「進歩的=プログレッシブ」なバンドの実態が、赤裸々に暴かれていてこの本は実に楽しい。読み始めは、軽薄な文体がけっこうウザいと感じるのですが、だんだん慣れていくのと、そこで語られるエピソードが面白すぎて、文体などどうでもよくなるというね。

プログレにハマってた人にしかオススメしませんが、この5大バンドを聞いてた人なら、絶対に読んだ方がいい。最高に楽しい一冊です。

「あんたら、本当はそんなに頭良くなかったんだな」

「ロケンロール!」


2017年9月5日火曜日

「ツイン・ピークス」が終わってしまった。達成感と喪失感と

9月4日(日本時間)、「ツイン・ピークス The Return」が完結、終了してしまいました。あ、日本ではWOWOWが絶賛放映中です。アメリカShowtimeでの全18話の放映が完了してしまったのです。

シーズン・フィナーレは、17話と18話が連続で放映されました。この2話連続ってところがキモで、17話に視聴者を喜ばせる展開をぶち込む一方で、18話は一転して視聴者を混乱させるという実にイヤらしい構成。ほんと、イヤらし過ぎです、デビッド・リンチ。

ネタバレしたくないのでこれ以上は踏み込みませんが、終わった瞬間の気分は、とても複雑で何とも説明が難しい。なかなか気持ちの整理ができないという。そして1日経った今、じわじわ来てるんですよ。余韻が、喪失感が。


主演のカイル・マクラクランは「さらなる新シーズンについては、何も話がない」と語っていますし、私も「それは作るべきではない」と思います。だけど、この先いくらでも続けられる可能性はあります。

今回、ほかでもない「ツイン・ピークス」の25年ぶりの新シーズンということで、アメリカの放映をほぼリアルタイムで視聴したのですが(日本で見るときはShowtimeのオンデマンドで)、いろいろ楽しい経験ができました。


「ツイン・ピークス The Return」の撮影は、徹底した秘密主義の下に行われたそうです。出演者は、自分のパートのみ記された台本を渡され、詳しいストーリーは一切知らされなかった。だから出演者たちも、毎週の放映を心待ちにし、楽しんでいたわけですね。それがTwitterでシェアされる。

「私がしゃべったあの台詞は、とんでもなく重要じゃないの。初めて知ったわ!」

「オレが演じたシーンは、こんなタイミングで出てくるのか! オレの出番は、あと何回放映されるんだろ?」

みたいな感じで、キャストが放映を見て興奮してるわけですよ。それがTwitterに流れる。


それから、非常に面白かったのは、放映の翌日ぐらいにファンによる攻略ページや攻略動画が続々アップされること。

「謎解き」が売りのシリーズですから、オーディエンスが「その謎、オレが次々に解くぞ!」ってノリで、謎シーンについてあーだこーだ語りまくる。これはムチャムチャ参考になりましたね。



「SNSを活用した、TVシリーズの正しい放映の仕方」を学んだ気分です。Netflixのビンジウォッチ(イッキ見)よりも、この「ツイン・ピークス」の毎週オンエア(+オンデマンド)のやり方の方が正解な気がします。共感→拡散→加入(有料会員に)。

残念ながら、日本は今週末(9月9日)に第8話ということで、アメリカのリアルタイム進行からはだいぶ遅れての放映なんですが、WOWOWには是非頑張って欲しいと思います。アメリカでの盛り上がりを、少しでも日本で再現できるといいですね。


ちなみに、日本語版がDVDやVODで見られるようになるのは、来年みたいです。

イッキ見ならば18時間で済みますので、それはそれでアリかも知れません。来年まで待って、DVDを手に入れて、一日を潰せばいい。でも、こんなのをイッキ見したら、脳内が酸欠状態になるの間違いなしですよ。

ああ、それにしても楽しい5カ月間でした。5月21日の放映開始から9月4日のシーズン・フィナーレまで。もっと言えば、新シーズン製作決定から丸3年。ここ10年ぐらいで、こんなにエネルギーを費やしたプロジェクトはありません。SXSWでカイル・マクラクランとすれ違い(1日違いで会えなかった)、カンヌ映画祭でビッド・リンチとすれ違い(同上)、でも、最終的に東京でカイル・マクラクランと会うことができました。


ツイン・ピークス用に立ち上げたTwitterを通じて、キャストやスタッフたちとも交流できました。キャンディ役のエイミー・シールズは、新シーズンを通じてのマイ・フェイバリットです。たくさんRTしてくれたし。現時点で、会いたい女優ナンバーワンだよ。

そこそこの達成感。そして、とてつもなく大きな喪失感。

25年前の最終回は「えええ〜〜! これで終わりかよ! そりゃないよ」だったんですね。だけど今回は「あ、こんな感じで終わるんだ。ふ〜ん」っていう感じ。一応、現実として受け入れられるんだけど、翌日になるとじわじわ来るんだな。

今週末から、またWOWOWで見よ(現実逃避)。 

2017年9月3日日曜日

LINE WAVEが届いたんだが、クローバはまだ何もできないんだな

2017年は、日本における「音声アシスタント元年」になるはずだったんですが、Amazon EchoもGoogle Homeも、まだ日本市場向け日本語バージョンを発売するに至っていません。

そんな北米勢の不在をついて、8月の終わり、LINEが独自デバイス「WAVE」を投入してきました。このジャンルの日本市場において、LINEが一番乗りに成功したと。

LINE WAVE、先行販売で7月に1万円で予約購入してありました。それが今週届いたわけです。


早速セットアップしてみましょう。本体を取り出し、同梱の電源プラグを入れます。

続いてアプリをインストール。app storeに行って「LINE Clova」というアプリをダウンロードします。本体はWAVEですが、ボイスアシスタントの名前は「Clova(クローヴァ)」といいます。Amazon Echoにおける「アレクサ」がLINE Waveの「クローヴァ」ってこと。


アプリを使ってWAVEをWiFiに接続し、アプリを自分のLINEアカウントにヒモづけて設定完了。割と簡単に設定できました。

早速会話してみましょう。下唇を噛んで「クローヴァ」って言う必要はなく「クローバ」で全然通じます。


「クローバ」と呼びかけると、本体下部のランプが緑色に点灯します。早速質問していきましょう。

「クローバ、今日は何日?」
「9月3日です」
ほいほい。正解。でも、なんかそっけないなあ。ちなみにAmazonのアレクサは、その日が何かの記念日だとか、誰かの誕生日だとか、色々なTips情報を加えてくれるんですよ。

クローバが答えている時は、本体下部のランプはピンクに変わります。


「クローバ、今日の天気は?」
「本日3日、東京新宿区は晴れのち曇りです。最高気温は28度、最低気温は19度の予想です」

予想なんだ。予報じゃなくて。ふーん。

アレクサよりも若干反応速度が遅い感じがしますが、許容範囲と言えます。日本語音声も意外になめらか。

「クローバ、ビートルズかけて」
「申し訳ありません。言い方を変えてもう一度おっしゃっていただけませんか」

「クローバ、レッド・ツェッペリンかけて」
レッド・ツェッペリン、来ました。やればできるじゃん。ビートルズは、LINE MUSICのライブラリにないのかも。しかしスピーカーの音質は、お世辞にもグッドとは言えません。


この辺は、音源を変えてたくさん試してみないと分からないけれど。Amazon Echo(写真右)の方が全然音質がいいと思います。

「クローバ、今日のニュースは?」
「日々のニュースをお届けできるよう、今準備しているところです」

よしよし、このタスクについてはいずれ対応可能になるんだな。


インテリアとしても、そんなに悪くないですよ。

そうだ。LINEのデバイスなんだから、LINEに届いたメッセージも読んでもらえるよね。

「クローバ、LINEのメッセージを読んで」
「思いを伝えるのは、大事なことですね」

何てトンチンカンな。これは想定外でした。LINEとの連携もまだできてないのか。

「クローバ、肉じゃがのレシピを教えて」
「どのようにしましょうか?」

「クローバ、アメリカの大統領は誰?」
「それについて今は分からないんですけれど、勉強しておきますね」

クローバ、まだ何もできません。アプリで確認したら、できることはこれだけだって。

WAVEで利用可能な機能(8/23現在)
- LINE MUSICの再生
- 天気予報の確認
- アラーム・タイマーの設定
- Bluetoothスピーカーとして利用
※その他機能も順次追加予定です。

まあ、出たばっかだからしゃあないかもなあ。

試しに、テレビの近くに置いておいてみると、バラエティ番組なんかで出演者がわーっと大騒ぎしてボリュームが上がった瞬間、クローバは反応していました。

「何をすればよろしいでしょうか」って。

あと、WAVEは充電池も内蔵しており、AC電源を抜いても動きます。スタンバイ状態で14〜15時間ぐらい保ったので、これはEchoに対してアドバンテージですね。

以上、クローバのファーストインプレッションでした。現時点で、デキの悪いSiriって感じ。あまりにも機能が少ない。でも、声はSiriよりセクシーかもね。

クローバ、早く賢くなった方がいいよ。そうでないと、これから日本に上陸してくる北米勢にやられちゃうよね。


先日、日経新聞にナイスまとめがあったので貼っておきましょう。音声アシスタントをめぐるプレイヤーたちの状況は、こんな感じです。日本では果たしてどうなるか、大変興味深い。ちなみに、北米ではAmazon Echoが2500万台、Google Homeが800万台、すでに出荷されています。

日本、2周遅れ。