2016年5月11日水曜日

今さらだけど、今年のオスカー作品賞「スポットライト」を軽くDISっておく

今年のアカデミー賞作品賞受賞作は「スポットライト 世紀のスクープ」でした。公開間もない時に見て、このエントリも当時書いてあったのですが、ポストしそびれていたのを思い出し、1カ月遅れながらポストしてみることにします。


この映画を語る前に、まずは物語の舞台となる「ボストン・グローブ」という新聞社について確認しておきましょうか。以下Wikipediaから引用します。

ボストン・グローブ(The Boston Globe) は、マサチューセッツ州ボストンにおいて最大の部数を発行する日刊新聞で、2002年9月現在の1日当たり発行部数は467,745部。ボストンにはもう一つの日刊新聞、ボストン・ヘラルド(Boston Herald)がある。

1872年にエベン・ジョーダンを始めとするボストンの実業家6名が15万ドルを投じて設立。創刊は1872年3月4日で、当時の価格は4セントであった。

グローブ社はもともと私企業形態で運営されていたが、1973年にアフィリエイテッド・パブリケーションズ(AP)社に買収され、同社の子会社となった。1993年10月1日には、AP社は、ニューヨーク・タイムズを発行しているニューヨーク・タイムズ社と合併したため、グローブ社はニューヨーク・タイムズ社の100%子会社となった。その後は購読者が減少し、2013年8月3日、ボストン・レッドソックスの主要オーナージョン・ヘンリー(英語版)に7000万USドル(約70億円)で売却することが発表された。

引用おわり。

いわゆる地方紙ですね。ローカル新聞。参考までに、日本の主要な全国紙の部数を紹介すると、朝日新聞が710万部、読売新聞が926万部、日経新聞が275万部という感じ。部数が46万というのは、国内の地方紙で言えば、河北新報とか信濃毎日新聞、京都新聞といった新聞と同等の新聞社だとお考えください。


そんな地方紙勤務のたった5人の記者が、世界を震撼させる大スクープをものにするという映画です。5人は独自の秘密調査に基づく特集記事を掲載する「スポットライト」というコーナーを担当する記者で、彼らがこの映画で追うのは、カトリック教会の神父が教区の子どもたちに対して、長年にわたって性的虐待を行っていたというネタ。2002年の1月に記事が掲載され、ローマ・カトリック教会を揺るがす大スキャンダルへと発展しました。後にローマ法王が被害者たちに直接謝罪しに渡米するという事態になったほど。

ジャーナリズムの意義、新聞記者としての矜恃、聖職者のあるべき姿など、この映画で描かれるテーマはどれも「正義」という言葉に収れんされていきます。満塁ホームラン級のスクープは、清廉でなくてはならない教会の悪を暴き、世に正義を問い質す内容です。ボストン・グローブの記者たちにとっては、非常に大きなカタルシスだったことでしょう。

2002年当時だったら。

だけど今、時代は流れて、インターネットの時代なわけですよ。

足をつかいコネを駆使した手間のかかる取材を行って、ライバル紙に出し抜かれないように情報漏洩に気をつけて、記事がもっとも効果的に世間に伝わるように掲載日を選んで……といったような、「レガシーメディア」のお仕事を、この2016年に映画館で見る意義って何なのでしょう?

これは「ブリッジ・オブ・スパイ」を見たときに抱いた感想と似ています。確かにいい話です。それは認めます。しかし、今頃こんな話を見せられてもねえ……。


冒頭のWikipediaの引用にもありますが、「その後は購読者が減少し、2013年8月3日に7000万USドル(約70億円)で売却することが発表された」新聞社ですよ。オワコンじゃないですか。

こんな、老人にしかアピールしないような映画作りはもうおしまいにして、もっと前のめりに行きましょうよ。若い世代に「スゲエ!」と思わせるような映画を作りましょうよ。

個人的には、「新聞社に新しくやってきたユダヤ人の社長が、町で悪事を繰り返すカトリック教会の連中を懲らしめる話」と解釈しました。そんな主題だから、映画化が実現したんじゃないでしょうか。

いずれにせよ、オスカー作品賞は出来すぎです。2年連続でイニャリトゥ(今年は「レヴェナント」、昨年は「バードマン」)に作品賞を渡すのははばかられたという分析で正解だと思います。

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