2013年11月4日月曜日

ニューヨークでユダヤ人の集会に行ってみた

10月27日の夜、イダン・ライヘル・プロジェクトのライブを見に、アッパーウェストサイドのビーコン・シアターに向かいました。

前回のエントリで、イダン・ライヘルのライブは、各地のユダヤ人コミュニティの集会でもあるという説を書きました。ユダヤ人、大勢いるかなあと想像しながら72ndストリート駅を出て、ビーコン・シアターへ辿り着きました。


何と、そこで目にしたのは抗議デモの人たちです。「ボイコット!イダン・ライヘル」とか「イスラエルのパレスチナ占領反対」とか書いてあるプラカードを手にしています。


そうです。イスラエルは、アラブ諸国から目茶苦茶嫌われているんです。今晩、この会場で何か起きるかも? こちとら、典型的な平和ボケの日本人。ちょっと緊張してきました。

今夜、ニューヨーク中からユダヤ人が集まるこの会場って、テロの標的としては絶好なんじゃね?

会場に入るときも、持ち物チェックが結構厳重です。

しかしよくよく考えるに、ユダヤ人を攻撃すると、その報復は倍返しどころじゃ済まされません。それは中東の歴史が物語っています。今夜ビーコン・シアターで爆弾テロが起きたら、翌日、ガザのパレスチナ自治区はイスラエル軍によって空爆されるでしょう。

そう考えると、逆にここは世界一安全な場所ってことになります。

テロのリスクを頭から追い払い、落ち着いて会場内を見回すと、やはりほとんどの客がユダヤ人のようです。ユダヤの小さい帽子(キッパ)を頭に乗せてる人がけっこういます。ヘブライ語も飛び交っています。


2800席あるビーコン・シアターは満席です。年代的には、30代から40代が中心でしょうか。70歳以上と思われるお爺さんもちらほらいます。こういうお爺さんは、例外なくキッパをかぶっています。敬虔なユダヤ教徒なんですね。しかし、こんな若者の音楽聞きにくるなんて、お爺さん、若いですね!

始まる前に、発泡酒でも買おうと売店に行くと、ほとんど客がいません。普通、ライブ会場の売店はごった返しているのに……。ユダヤ人ってあんまり酒を飲まないんですよね。

19時開始のところ、ぴったり30分遅れてライブはスタートしました。

バンドは13人編成。イダン(キーボード、ヴォーカル)の他は、ヴォーカルが3人、パーカッション&ドラムスが2人、ギター、イスラエルのギター、ベース、フルート&サックス、ブラスが3人といったところ。

ライブの雰囲気は、別の場所のライブですが、このYouTubeの動画が参考になるでしょう。1曲目がこの曲です。



動画見えない方は→こちら
http://www.youtube.com/watch?v=Tp0uePiRH6s

上の動画と当日のもっとも大きな違いは、イダンがドレッドをきれいに剃り上げて、スキンヘッドになっちゃってること。女子たちはガッカリでしょうね。


イダンは左端です。スキンヘッド、分かりますかね。写真拡大するとハッキリ見えます。

意外だったのは、イダンが曲の合間に語るトーク(英語)がけっこう面白くて、会場を大いに沸かせていたこと。

「ボクはイスラエルにいて、自分の国の音楽を作っているだけなのに、イスラエルを離れるとボクの音楽は『ワールドミュジック』になっちゃう。何なんだろうって感じ」

「頭を丸めた理由はいくつかあるんだけど、一番大きな理由は、彼女がそうしろって言ったからだよ(大歓声)。イスラエルの男は、マッチョにはなれないよ。女性の言うことには逆らえないもん(笑)」

あと、テルアビブの高名な占い師の話やら、バンドのベーシストの話など、数分間にわたって語るトークも繰り出して、会場から笑いと歓声を浴びてました。

演奏の参考動画をもう1本。



動画見えない方は→こちら
http://www.youtube.com/watch?v=A-zaKge2eIA

ライブは、新しいアルバム「Quarter to Six」からが半分、残り半分はそれ以前のアルバムからって感じで構成。徐々にクライマックスに向かっていきます。こちらはオフィシャルの動画。



動画見えない方は→こちら
http://www.youtube.com/watch?v=95anpoEb4fM

ところが、1時間45分ぐらい経って、イダンが「Goodbye, New York!」って叫んだあたと、様子がおかしくなります。演奏がグダグダに続く感じなんです。抑揚を欠いたメロディ、ヴォーカルも入らない。ダラダラと続く。「Goodbye」って言ってる割には、イダンもバンドもステージを去らない。客席はずっと手拍子。

思い出しました! オフラ・ハザの来日公演を。

バブル絶頂の1989年頃、イスラエルの歌姫オフラ・ハザの公演をエムザ有明(だったかな)で見たんです。ステージが終わろうとしているのに、バンドは演奏をやめず、オフラ・ハザ本人も何度もステージから下がっては戻りを繰り返し、また歌う……。30分ぐらいそんなグダグダの演奏が続きました。

あとで雑誌かなにかで読んだんですが、イスラエルでは、客がひとり残らず会場から立ち去るまで、バンドは演奏を続けるという習慣なんだそうです。日本でもアメリカでも、普通、演奏が終わるまで客は帰らない。だからバンドは延々と演奏し続けるという……。


バンドの演奏が、そのグダグダループに陥ったのは明白です。イダンは3回目の「Goodbye, New York!」を叫びました。しかし、バンドにもイスラエル国外での豊富な経験があるので、習慣にはしばられないんでしょう。10分ほどのグダグダのあと、アコギ1本の伴奏でイダンがステージ中央でマイクをにぎり「Yored Ha’Erev (Quarter to Sixの1曲目)」を歌い終わったところで、バンドが勢揃いして客席に深々と礼をし、ステージを去っていきました。

もしかしたら、この後も拍手に応えてバンドがステージに戻って演奏を続けたかも知れませんが、先のオフラ・ハザの件を思い出した私は、ここで会場を後にしました。満足満足。

そう言えばオフラ・ハザって2000年に亡くなったんですよね。こないだ、住んでた家が売りに出たってニュースを読みました。

ニューヨークの客は、けっこうな人数が、いくつかの曲で合唱してました。もちろんヘブライ語で。バンドにとっては、アウェイなのにホームのような、そんな不思議な感覚ですね。

次は是非ともイスラエルで見てみたい。かなりの盛り上がりになるのは間違いないと思います。

ここに載せるYouTubeの動画をいろいろ見ていて気づいたんですが、イダンは2013年の1月にもニューヨーク公演をやってます。なんというか、年に一度の定例公演みたいなもんですか。14年はシカゴとデトロイトがもう決まってます。

ユダヤ人コミュニティがサポートする全米ツアー。ワールドミュージックのアーティストとしては、断トツの動員力ですね。もちろん、その音楽が最高にクールだって前提があるわけですがね。

さて、ライブも満喫したことだし、ラーメンでも食って帰ろう。

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