今年のアカデミー賞は、2月22日(日本時間23日)に授賞式が行われます。
ここまでの賞レースの結果をみてみると、「6才のボクが大人になるまで。」と「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のどちらかが作品賞を受賞すると予想されています。
毎年、この1月から2月にかけての賞レースの時期は、オスカー候補作の試写を集中的に見て回るのですが、多くのノミネートを受けている作品は、とにかく試写室が混み合うのが当たり前。そんな中、今日は「バードマン」の試写を見に行ってきました。13時からの試写ですが、50分前の12時10分に到着。ちゃんと席が確保できましたが、その5分後にはもう満室になってしまいました。そうなんです。前回は40分前に行って入れなかったので、今日はさらに早く出かけて正解でした。
さて、映画の方は前評判通りの内容でした。とにかく最初から最後までテンションが異常に高い。主演のマイケル・キートンの強迫観念症的な危うさと、舞台上じゃないと勃起しない(笑)エドワード・ノートンのキレっキレの演技に、エマ・ストーンやナオミ・ワッツという女優陣が絶妙に絡んでいきます。舞台劇団をテーマにしているので、キャストも演技派で固めてあります。キャストたちが、ニューヨークのシアターで実際に演じる舞台のシーンもあって、さながら一大演技合戦です。俳優の存在感がハンパない。
ところが、私が本当に驚いたのは、キャストたちの演技ではありません。撮影です。カメラワークです。
結論から言ってしまいましょう。この映画は、ほぼ全編、作品の99%近いパートがワンカットなんです。信じられます?
オープニングのシーン。カメラは、マイケル・キートン演じるリーガンの控え室で、リーガンの背中を撮っています。その後、デスクにあるMacBookで娘とSkypeする画を写すと、今度はドアに振り返って部屋に入ってくるマネージャー(ザック・ガリフィナキス)に向きます。そして彼が部屋から出て行くとき、カメラも追随して廊下に出て行きます。
「ずいぶん長いカットだなあ。ステディカム使ってんだな」と思いながら見続けていましたが、5分たっても、10分たってもカットが切り替わりません。そのうちこれは、「最後までワンカットで繋いでしまうつもりなんだな」と確信しました。
信じられないチャレンジです。ほぼ2時間、カットなしのひと繋がりの映像で映画を作るという。監督はアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。「バベル」や「21グラム」の監督ですね。
そして、こんな無謀なチャレンジにつきあうカメラマンはひとりしか思いつきません。
エマニュエル・ルベツキです。「ゼロ・グラビティ」の撮影監督のルベツキです。
私はしばらくの間、撮影に集中してしまって台詞を追えませんでした。しかも全編ステディカム。もう、軽い酩酊状態になりますよ。
もちろん、すべてを本当にワンカットで撮っているわけではありません。編集でつなげて、CGで処理してカットなしに見せている部分もあるでしょう。「ゼロ・グラビティ」の宇宙のシーンのように。しかし、ほとんどのシーンは超絶長いワンカットで撮っているはずです。俳優のストレスもとんでもないレベルになっていたことが想像できます。
話にはウィットが効いているし、映画の締め方も絶妙です。大傑作と言っていいでしょう。
「6才のボクが大人になるまで。」にせよ「バードマン」にせよ、今年はイノベーティブな2作品がオスカーを争うことになります。これまで誰もやったことがない偉業を成し遂げた2本です。22日の授賞式が俄然楽しみになりました。
あ、「バードマン」の公開日は4月10日です。もっと早く公開すればいいのに。
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