2018年8月6日月曜日

「カメラを止めるな!」快進撃。いったい、ゴールはどこなのか?

「カメラを止めるな!」の勢いが止まりません。(2018年)6月下旬、新宿K'sシネマと渋谷のユーロスペースのたった2館で始まった興行は、その痛快な面白さがSNSと口コミで異常なまでに拡散し、8月に入って、公開劇場数がどんどん増え、週末の興収ランキングでもついにトップ10圏内に入ってきました。


これ、てっきり私は、124館まで拡大された結果10位に入ったんだと思っていたのですが、8月5日時点で16館でしか上映されていないんだそうです。124館まで拡大されるのはまだしばらく先。それにしても、わずか16館でのトップ10入りはもの凄い快挙です。時々、アニプレックス配給のアニメが、40とか50館ぐらいの公開規模でトップ10入りすることがありますが、20館未満でのランキング入りとなると、ちょっと記憶にありません。


この映画に関するツイッターの投稿を見ていると、「ネタバレするから、内容は詳しく話せないけどとにかく見て」というのが他人に薦めるときの礼儀のようです。しかしこの映画には、特に大きなドンデン返しがあるわけでもないし、むしろあの内容をネタバレできる人は、相当のストーリーテラーだと思います。「ネタバレするから」ではなくて、「どんな話か上手く説明できないけど、すげー面白いから」とにかく見て、ということですね。それだけプロットが秀逸で、脚本が重層的なんです。

私は、W杯明けの7月のある日、平日の朝10時台に池袋のシネマロサで見ましたが、もちろん場内超満員。面白いのは、女子高生からシニアまでと客層が実に幅広いことですね。冒頭から37分のゾンビ部分は、正直、途中で出たくなるぐらいつまらないのですが、ここで寝たらダメ。もちろん、出ちゃったらおしまい。そんな人はあまりいないと思いますけど、生理的に一切ゾンビを受けつけない人もいますからね。


だから、私が他人に薦めるときは「前半のゾンビパートが、ちょっとだけグロいのと最高にくだらないけど、そこを頑張ればあとは楽しいだけだから」ということになりますね。

この映画がこれほどの共感を呼んでいるのは、登場人物のうち主要な3人(プラス1人)のキャラクターが秀逸だからだと思います。ゾンビ映画の監督および、その妻と娘、つまり日暮家の3人ですね。「権威に弱く、長いものに巻かれがちな中年男」、「普通の主婦。しかし、ゾーンに入ると制御不能になるワケあり女」、「自分を信じ、他人を説得してまでクリエイティビティーを極限まで追求する若い女子」。日本のサラリーマン社会の「あるある」を体現する3人と、カメラマンの女子もいいですね。ハンディカムの180度切り返し、ナイスでした。


上映中、後半パートでは、私の隣にいたシニアなおばさんが、ずーっと大声で笑っていました。「そこも笑うの?」「これはギャグじゃないから」というところでもゲラゲラと。もう、箸が転んでも状態です。場内、そういう人が続出してました。さすがに上映後に拍手は起きなかったけど。

海外の映画祭にも引っ張りだこみたいなので、世界各国での興行はどんどん決まるだろうし、最終的にハリウッドリメイクまであるかも知れませんね。世界中の映画界を眺めてみても、10年に1度あるかないかのシンデレラ・ストーリーになりそうな予感がします。「万引き家族」は、カンヌで受賞してから日本の興行が弾けましたが、「カメラを止めるな!」は、日本の観客の圧倒的な熱狂を追い風に海外に出て行く。

製作費たったの300万円の映画が、最終的にいくらの出来高になるか。世界のどこまで広がって行くか。最高に楽しいサクセスストーリーの、まだまだ端緒のところを我々は目撃しているだけなのかも知れません。この映画の、この後のジャーニーが本当に楽しみです。「バードマン」のイニャリトゥ監督にも是非見てもらいたい! だって「バードマン」に始まる一連のワンカット長回しブームがなかったら、この映画は存在していないわけですから。

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