昨日、六本木でスーザン・ニコルスに会いました。スーザンに会うのは5年ぶり。
彼女は、2006年5月に私たちが製作したヨガのDVD、「スーザン・ニコルスの幸せになるOne Dayヨガ」の主人公です。ヨガのインストラクターが本業というわけではなく、ヨガグッズ(「スキッドレス」が有名)をプロデュースする「ヨギトーズ」という会社のCEOが本業です。サンタモニカの美人でロハスなCEOって感じ。その昔は「セックス・アンド・ザ・シティ」に出演したこともあるそうです。
このヨガのDVDはLAに住む友人から企画のオファーを受け、私の会社が、友人たちの会社やポニーキャニオンと一緒に出資&製作したものです。
当時、製作費(プラス宣伝費)が回収できるかどうかのシミュレーションでは、1万枚以上売れないと利益は出ないという計算でした。業界の知人たちは「ハリウッドのアクション映画ならともかく、こんなHOW TOもののDVDで1万枚なんてあり得ない」と、口を揃えて言いました。
我々も、確かに1タイトルを1万枚売り切るのは無理だろうと思い、製作費を切り詰めてリスクを減らそうと考えました。しかし、アメリカ(LA)で撮影を行うこともあり、コスト(=スタッフの人件費)を下げるのはなかなか大変。
そこで、頭を切り換えて、一度の撮影で3タイトルを作ることにしました。気に入った方には2種類、3種類買ってもらうという「大人買い」狙いですね。3タイトルは「目覚めのヨガ (FOCUS)」「きれいになるヨガ (ENERGY)」「癒しのヨガ (RELAX)」と設定し、それぞれのタイトルに沿ったメニューをスーザンに考案してもらいました。今思えば、ここが重要なポイントだった。
発売日前後には、スーザンの来日キャンペーンも敢行。京都のお寺でヨガのレッスンをやったり、雑誌やWebの取材を受けてもらったりと忙しく働いてもらいました。
しかし、残念ながら我々のDVDは思ったようには売れませんでした。映画と違って、宣伝をたくさん露出しても販売に直結する感じがあまりないんですねえ、DVDの場合。
「うーん、ダメだったか。失敗したかな」という雰囲気の数カ月が続き、やがて1年が過ぎ、皆このDVDのことは忘れ、それぞれの仕事に戻って行きました。
販売元のポニーキャニオンからは、3カ月おきに販売レポートが届きますが、売れ行きは徐々に鈍って行き、各社へ支払う分配金も少額になり、スーザンへの印税も雀の涙という状況に。このままフェードアウトするように、このDVDは廃盤になる運命なのか……。巷では、ヨガとは180度アプローチの異なるエクササイズソフト「ビリーズ・ブートキャンプ」がバカ売れしていました。
それでも、発売から2年目に入り、冬から春になって暖かくなると販売枚数が少し伸びるという現象が見られました。ヨガにもシーズン需要があるんでしょう。しかし、秋冬になるとまた売上げは減り、特にパッとしない感じでダラダラ売れているという状態が続きます。もちろん、出資金を回収できる見込みは全然見えません。
ところが、3年目に入ったところで潮目が変わったのです。
09年春のこと。販売レポートを見ると、06年のリリース時期と比べて明らかな変化がありました。リリース当初、3タイトルのうちもっとも良く売れていたのは「きれいになるヨガ」でした。これは予想通りです。「みんな、このヨガをやってハリウッドセレブのようにきれいになって下さい」というコンセプトですから、我々も3タイトルのうち「きれいになるヨガ」を一押ししています。
しかし09年春のレポートでは「癒しのヨガ」が一番売れていたのです。しかも、他の2タイトルの3倍以上と圧倒的な差がついています。「世の中、病んでいる人が多いんだなあ」なんて他のスタッフと笑いながら話していたのですが、全然笑い事ではありませんでした。
「ひどい肩こり、偏頭痛、吐き気etcが、このDVDで改善した」「涙が出てとまらない」「不思議な爽快感が味わえる」……まったく思いもよらないリアクションです。もちろん、このレビュー以外にも好意的なレビューが数多く投稿されています。ヨガって凄い。
金髪の美人インストラクター、きれいなパッケージ、西海岸のセレブ風な雰囲気を醸すパッケージという外面的な要因もさることながら、それ以上に内容に関するクチコミが販売に結びついているのは疑いがありません。
09年以来、「癒しのヨガ」は着実に売れ続けています。そして驚くべきことに販売枚数の7割がAmazonからの購入なのです。
直近3カ月の販売レポートが届きました。「スーザン・ニコルスの幸せになるOne Dayヨガ」は、リリース以来最高の販売枚数を記録しました。発売当初の3カ月と比べると、何と5倍の売れ行きです。発売からまる5年が経とうというタイミングで、ついに出資金を回収できそうなところまで漕ぎつけました。ちょっと感無量です。ユーザーレビューが商品の売れ行きを左右するという事例を、まさに身をもって体験しています。
投資を回収できそうだという点もさることながら、心身不調な方が治癒することに少しでも貢献できたということならば、それに勝る喜びはありません。
そして昨日、5年ぶりの再会&ディナーの席でこの話をスーザンと共有したわけです。彼女も非常に感銘を受けていました。彼女自身、ここ数年は病気をしたり、あまり体調が芳しくなかったみたいですが、今はとても元気で、新たなビジネスの立ち上げ準備中とのこと。「今日はとてもいい話を聞いた。2012年は新たなスタートの年になりそう」と楽しそうに語っていました。
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