2011年4月9日土曜日

知られざる、村上春樹の近著

JALマイラーな私のもとには、JALグローバルクラブから毎月「AGORA」という会報誌が送られてきます。そのAGORA最新号に、村上春樹が旅エッセイを綴っていました。題して「ギリシャのふたつの島」。


会報誌なのに村上春樹だなんて凄いやと思い、この媒体についてググってみると……AGORA、なんと67万2000部出ています。数字が細かいなと思ったら、ABC協会調べというから2度ビックリ。ABCの認証を受けた唯一のカード会員誌なんだとか。

村上春樹の小説は「ノルウェイの森」や「1Q84」など、私もいくつかは夢中で読みました。でも、正直それほど特別な感慨は持っていません。むしろ影響を受けたのは、彼の書いた紀行文の数々です。中でも、「遠い太鼓」と「雨天炎天」はそれぞれ数回読んでいるはず。


村上春樹は「ノルウェイの森」を、ギリシャやイタリアの島で執筆していましたが、その時の暮らしの模様を綴ったのが「遠い太鼓」。「島で執筆」といえば、南の島でヤシの木の下カクテル煽りながら、美女をはべらせ高級万年筆でといった、イアン・フレミングやヘミングウェイ的な執筆活動を想像してしまいますが、この本に綴られるのはそういうのとは正反対の日常です。村上春樹は、住む家を探すために自分で現地の不動産屋と交渉し、いざ住み始めると、(本人いわく)片言ながらギリシャ語やイタリア語を使って現地の人たちとコミュニケーションし、市場で魚や野菜を求めて料理したり、毎日欠かさずジョギングしたりと、しっかりその地に根を下ろし、つつましく生活しながら執筆を続けます。

「遠い太鼓」は、ローマに始まり、ギリシャのスペッツェス島、ミコノス島、シチリア島と拠点が移動します。南ヨーロッパ紀行文としても楽しめるし、文化人類学的にも興味深いし、何より、(後の)ベストセラー作家の創作の舞台裏という意味で面白い。おそらく「ノルウェイの森」があれほど売れなかったら、この本はそれほど注目されなかっただろうし、私も手に取ることはなかったかも知れませんが。

今回のAGORAのは、当時暮らしたギリシャの島を、25年ぶりに村上が再訪するという企画。


ミコノス島で、当時住んでいたフラットの管理人ヴァンゲリスの消息を訪ねたり、スペッツェス島で通っていたパトラリスの店で食事をしたりと、「遠い太鼓」を読んだことがある人には懐かしいエピソード。ウルルンで、かつて滞在した土地を再訪するような企画ですよね。今回はカメラマンも同行しています。

このAGORA、購入もできるようですが(どうやら定期購読だけみたい)、オークションサイトで見たら、今月号は100円ぐらいでごろごろしてました。興味のある方は是非。

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