2011年3月1日火曜日

アカデミー賞の結果にがっかり

今日は朝からアカデミー賞の授賞式をTVで見ていました。毎年恒例です。結果はこちらでどうぞ。

まず、授賞式の結果そのものは、今年の日本の映画興行にとって非常に素晴らしいものとなりました。


公開されたばかりの「英国王のスピーチ」が、作品賞ほか4部門を受賞したのはタイミング的に完璧です。明日からこの作品に映画ファンが押し寄せるのは間違いありません。また、ナタリー・ポートマンが主演女優賞を受賞した「ブラック・スワン」にしても、配給会社は体制をしっかり整えて、5月からの公開に備えることができる。助演男優賞・女優賞受賞作で、3月26日から公開される「ザ・ファイター」しかりです。

一方、残念ながら主要部門を逃してしまった「ソーシャル・ネットワーク」は、これで潔く興行を終えることができます。

思いがけず、テクニカル部門など4部門も受賞した「インセプション」ですが、こちらはビジネスに影響はないでしょう。劇場公開、DVD、VODとすでに十分にヒットしているし、今回の受賞内容が今後のビジネスをさらにボリュームアップするとは思えません。

とにかく、これから公開を迎える(あるいは公開したばかりの)映画にオスカーが多数転がり込んだということは、当該作品にとって宣伝費をかけずに興行収入を最大化するビッグチャンス。ひいては、映画興行全体にとっても大きなプラスというわけです。

それでは、第83回アカデミー賞の選考についてはどうだったのでしょうか? 個人的には、大いに不満です。

もちろん「英国王のスピーチ」は、下馬評でオスカー最有力でした。私も映画を見ましたが、本作がオスカー作品賞に足る作品であることは十分認めます。しかし、それでも私は「ソーシャル・ネットワーク」に取って欲しかったし、同作が作品賞を取るべきだと思っていました。

「ソーシャル・ネットワーク」は素晴らしかった。でも、その疾走感とエネルギー、ねじれた成功と皮肉に満ちた内容は、アカデミーの老人たちには刺激的、あるいは反道徳的すぎたのかも知れません。そもそもアカデミーのメンバーたちは高齢なので、実際にフェイスブックを使っている人もそれほど多くなさそう。

そしてアカデミーは、ワインスタイン兄弟の「錬金術」にまんまとハメられてしまった。英国王室という、おなじみだけど特別の舞台、ハンディキャップを持つ国王、それを克服するための苦労と苦悩、そして超のつく演技派の俳優たち。

確かにいい映画です。安心して親に勧められる映画。……にしても、こんな古色蒼然たる映画が、2010年度最高の映画でいいんでしょうか?

2011年、ソーシャルメディアが世界を変えている(エジプトやチュニジアのことです)時代に、10年前、いや30年前だって作れた「英国王のスピーチ」が何でオスカーなの? 真っ当な映画だけど、時代的な必然性がみじんも感じられないのです。

「ソーシャル・ネットワーク」じゃないのなら、作品賞は「インセプション」にあげて欲しかった。今回、視聴率対策で、授賞式の司会者を若返らせた(アン・ハサウェイとジェームズ・フランコ)までは良かったかも知れませんが、賞の本質までは変えられなかったと。

シュターテ。本当に残念です。

しかし、「英国王のスピーチ」の名誉のために言えば、受賞者たちのスピーチは皆素晴らしかった。スピーチを題材にした映画で受賞しているだけあって、他の受賞者たちとレベルがまるで違いました。皆、受賞したら最高のスピーチをしようと約束して実践したんだと思います。個人的には、ジェフリー・ラッシュのスピーチが聞きたかったんですが。

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