2014年5月25日日曜日

イーロン・マスクの評伝が面白すぎる。私を火星に連れてって!

ちょっと安っぽい見出しをつけてしまいましたが、この男は凄い。本当に凄い。もう「ネクスト・ジーザス」ですよ。人類の未来はこの男の双肩にかかっているんじゃないかと。

昨年末に買って、積ん読状態だったこの本をやっと読みました。読み始めたら、もうイッキ読み。



私は、次に買う車は電気自動車のテスラと決めているんですが、そのテスラ・モーターズのCEOで、映画「アイアンマン」のモデルになった男としても有名です。イーロン・マスクさん。

本の帯には「スティーブ・ジョブズを超える男」と書いてあります。「ホンマかいな?」って思う人も多いことでしょう。だって、イーロン・マスクはまだ日本でそんなに有名じゃないし。

しかし、はっきりいってジョブズとは全然レベルが違うんだってことが、この本を読んで分かりました。

どれほど違うか?

そうだなあ、ジョブズはノーベル賞は取れなかったし、そのまま生きていても、その業績はノーベル賞とはちょっと違ったと思います。だけど、マスクはノーベル賞を取る可能性が十分ある。だって、アル・ゴアが取ってるんだからマスクもいずれ取れるっしょ。ノーベル平和賞ね。

マスクが将来ノーベル賞を受賞するとして、その受賞理由は2つ考えられます。
・人類の火星移住への道を開いた功績で。
・電気自動車を世界中に普及させ、地球から二酸化炭素を激減させた功績で。

後者の方が早く実現できそうです。

マスクは南アフリカ出身(1971年生まれ)ですが、現時点ですでに、南ア出身の人物としてはネルソン・マンデラよりも偉大かも知れません。

17歳でカナダに渡り、その後ペンシルベニアに移り、シリコンバレーにやって来ました。その後の「ハイパーわらしべ長者」人生はこんな感じ。

1995年 24歳でソフト製作会社「Zip2」を起業。

1999年 「Zip2」をコンパックに3億ドルで売却。自分の持ち分として22億円ゲット。それを資金にオンライン決済会社「X.com」を創業

2002年 「X.com」と「PayPal」を合併させ、その会社をeBayに15億ドルで売却。持ち分比率で170億円ゲット。宇宙開発を行う「SpaceX」を設立

2004年 テスラモーターズ社に出資し会長に就任。マスク33歳

2010年 テスラモーターズがナスダックに上場。公開価格17ドル。自動車メーカーのIPOは、1956年のフォード以来54年ぶり

2012年 SpaceXの打ち上げた宇宙船が、国際宇宙ステーションとのドッキングに成功。民間宇宙船としては史上初。テスラのモデルS、アメリカのカー・オブ・ザ・イヤーに選出

2013年 テスラモーターズの時価総額が、一時200億ドル超え。マスクの個人資産は8000億円に

この時点で、GMの時価総額は483億ドル、フォード・モーターが646億ドルですから、テスラの時価総額はGMの5分の2、フォードの3分の1という規模。


ここ数年の株価の動きはこんな感じ。で、ここから本題。

私は大いに誤解していました。イーロン・マスクは、テスラのCEOが本業だと思ってた。しかし全然違ったんですよ。彼の本業はSpaceX。宇宙開発です。

その原点は何でしょう? 彼の創造の原点は?

「地球上の人口は70億人を超え、2050年には100億人に迫るという。だが、二酸化炭素は増え、海面は上昇し、自然環境はさらに悪化。人類はいずれ地球以外の惑星に住まなくてはならなくなる。だから人類は火星をベースステーションに、複数の惑星にまたがる種になる必要がある」

実に壮大なビジョンです。本のタイトルには「野望」ってついてますが、そういうギラギラしたものじゃないですね。人類を正しい未来に導こうという神の視点です。ユダヤ人の錬金術的な金儲けとは全然レベルが違う。出エジプトのモーゼのような、ノアの方舟のノアような神の御業を行おうとしています。

動画をいくつか貼っておきましょう。

イーロン・マスクの宇宙船が、ISSと初めてドッキングに成功した時の動画。2012年の偉業ですね。



https://www.youtube.com/watch?v=QwDCWTqNceQ

スタッフの盛り上がりが凄い。アサヒ・スーパードライのCMみたいです。

マスクのロケットは、自力で帰還させることによって、再利用できるようにする計画です。これが実現すると、大幅なコストカットが実現できる。

1000メートル付近まで飛び、自力で戻って来るファルコン9ロケット。



https://www.youtube.com/watch?v=ZwwS4YOTbbw

凄いです。宇宙開発の世界は、いつの間にか「シリコンバレー>NASA」って構図になってた。

TEDにも出ています。MCがいて、質疑応答する形式ですね。21分ありますが、日本語字幕ONでどうぞ。



https://www.youtube.com/watch?v=bK3rZnj0-Co

マスクは、人類に必要なものとして、「持続可能なエネルギーと、持続可能な輸送手段」の2つをあげます。それがソーラーパワーであり、テスラや再利用できるロケットなのです。

動画の最後に、印象的なやりとりがありました。

MC「PayPal、ソーラーシティ、テスラ、スペースX。どれももの凄く野心的なプロジェクトです。どうしてそんな革新的な事業の数々を、1人の人間が実現できるの?」

マスク「正直、分かりませんね」

MC「私の意見をいいましょう。あなたは、デザインとテクノロジーとビジネスをひとまとめにして、超人的なやり方で統合することができる。その結果、生まれる物に自信をもっているから、途方もなく大きなリスクを負うこともできる。あなたは、自身の全財産をかけ、何度も革新的事業をやっている。いったい、秘伝のタレは何なの?」

マスク「考えるためのフレームワークは物理学です。原理と推論、つまり物事を本質的な真理まで煮詰め、そこから推論する。私たちは、生きていく上でアナロジーで推論します。これは、本質的には人のしていることをまねて、少しだけ変えるということです。それは必要なことです。しかし、何か新しいことをする場合は、アナロジーじゃなく、物理学的なアプローチが必要なんです。物理というのは、量子力学のような、直感に反する、新しいものを見つける方法なんです」

MC「よい子のみんな、物理を勉強しよう!」

ちなみに、イーロン・マスクはバツ2です。キャメロン・ディアスと噂になったこともありました。今はシングルかな?




そうそう、先日、若田さんがISS(宇宙ステーション)から帰還しましたけど、あのISSにドッキングして資材を補給したのが、SpaceXの宇宙船なんですよ。あれがNASAでなくて民間の船だっての、あんまり報道されてませんよねえ。

2014年5月18日日曜日

なじみだったラーメン屋が復活していた件

今日は、午前中から買い物がてら小石川植物園まで足を伸ばし、ピクニック気分で芝生ランチでも摂ろうかというノリで出かけました。

ところが、思いがけずラーメン店でのランチとなった次第。



私が住んでいる、文京区の音羽界隈には、いま、行列のできる店は一店しかありません。群林堂という和菓子屋で、名物の豆大福を求めて、連日朝から大行列ができています。

その群林堂から南に100メートルほどの場所に、もう一店、かつて行列のできていたラーメン店がありました。

「ちゃぶ屋」というその店は、TVチャンピオンで優勝するなど高い評価を得た店で、フレンチ出身のシェフが、麺にこだわり、食材にこだわり、インテリアにこだわった、なかなかスノッブなラーメン店でした。

ほら、食べログでも3.61というハイスコア。
[閉店] 柳麺 ちゃぶ屋 本店

ちゃぶ屋はこの護国寺の店をベースに、表参道ヒルズや香港などに次々出店していきますが、どうやら一連の拡大戦略が失敗して経営が傾き、2012年には倒産してしまいました。

音羽通りの旧ちゃぶ屋の店舗は、「麺’s BAR」というかなり残念な感じのラーメン店にとって替わられ、近隣の「大島ラーメン」とのコンビネーションによって、界隈は一気に「ラーメン不毛の地」へと転落してしまったというわけです。

さて、今日発見したラーメン店は、残念ながら音羽通りではありません。

小石川植物園近くの、桜並木で有名な播磨坂にあります。付近を歩いていて偶然見つけました。


これです。外観はどう見てもカフェ。あるいはブラッセリーといった佇まい。しかし正面に「らぁ麺」の看板が見えます。なんだなんだ?


もしやと思って近づくと「MORIZUMI」の文字が。そうです。かつてのちゃぶ屋の主人、森住康二の店でした。それにしても、相変わらず気取ってますねえ。


早速入ってみましょう。店内もカフェ風で、客層も若い。店主の森住氏のほかに、かつて音羽のちゃぶ屋にいたスタッフの顔も見えます。懐かしいぞ。


器も、重心が高いちゃぶ屋時代のスタイルと変わりません。箸はテーブルの右手についた引き出しに入っている、これまた懐かしいスタイル。

品書きは、醤油らぁ麺918円、塩麹らぁ麺918円、醤油煮たまごらぁ麺1026円(冒頭の写真がこれ)など。

食べログも3.53ついてます。
播磨坂もりずみ


こちらは塩麹麺。ちゃぶ屋時代は、塩味系は梅塩らぁ麺ってのが名物だったんですが、若干メニューが変更されているようです。水餃子もありますね。これも懐かしい。

麺があいかわらずツルツルです。スープも熱々すぎないほどよい温度。いや素晴らしい。懐かしい味を堪能しました。

店主におかれましては、くれぐれも拡大戦略は封印していただき、この店を末永く続けて欲しいものですね。

2014年5月17日土曜日

グーグルグラスを小一時間ほど使ってみた

会社のスタッフがLAでグーグルグラスを買って帰ってきたので、ちょっと借りて小一時間ほど使ってみました。


じゃーん! どうやら、ここ数日の間に、北米では一般の人でも簡単に買えるようになったらしい。

グーグルグラスを使うには、スマホに「MyGlass」ってアプリを入れないとダメだそうで、早速GooglePlayに行ってみます。


「このアイテムはお住まいの国でご利用いただけません」だって。日本じゃDLできない……。

iPhoneアプリもリリースされてるよってことなので、AppStoreに行きますが、USのストアじゃないとDLできません。AppStore右下の国旗をクリック、USのストアでチャレンジしますが、US発行のクレジットカードがないとダメ。PayPalアカウントを入れてみますが、PayPal登録の住所が日本なのでダメ。US発行のiTunes用プリペイドカードも持ってないのでダメ。

「なんだよ使えないじゃん!」って思いつつ、ググってみると、PCでWiFi接続でもなんとか行けそうです。

「MyGlass」ページに行って、Googleアカウントでログインし、「パソコンで設定を続行する」をクリックすると、WiFiに接続する画面が出てきます。


ここでひとつ、ビッグイベント。

このページで、自宅のWiFiルーターのアカウント情報を入力すると、QRコードが吐き出されます。これを、グーグルグラスでキャプるんですよ。

グーグルグラスを装着した状態で、PCのQRコード画面に顔を近づけていくと、グラス側でピントを合わせ、自動的にキャプチャーします。こりゃおもろい。

しばらくするとグラス側でWiFiをつかまえることができて、無事に使えるようになりました。


頭をカクっと上に持ち上げ、起動。するとこんな画面が表示されるので、「オーケー、グラス」と言ってみます。


はい、こんなメニューが出てきます。写真を撮ったり、動画を録ったり、目的地までの経路を調べたり、メッセージを送ったりできます。



https://www.youtube.com/watch?v=4EvNxWhskf8
この動画を見ると、グーグルグラスでできることがざっくり把握できます。 

試しに、さっきのメニュー画面で「オーケー、グラス テイク・ア・ピクチャー」と言って、部屋の写真を撮り、メールで送ってみました。


時間がかかりましたが、ちゃんと届いてました。これは楽しい。

ところで、このグーグルグラス、装着すると右目に全神経が集中します。すると、左目も思いっきり右の方に寄ってしまうという……。

会社で色んな人間に装着してもらいましたが、左目をつぶってウィンク状態になってしまう人もいました。

視野がかなり狭くなっちゃうので、グーグルグラスを装着して、外を歩いたり車の運転とかしたらけっこう危険だと思う。あと、両目が開いているのに、片目でしかモニターが見えてない状態がかなりストレス。これ、使っているうち慣れるんだろうか……。

かなり難易度の高いデバイスだと感じますね。

もちろん、面白いっちゃ面白い。だけど「正しい使い道」ってなんだろう?という大きな疑問が。

私はふだん眼鏡をしないので、そもそも装着すること自体、ハードルと感じます。よほど凄い(適切な)使い道がないと、おそらく使わないだろうな。

そうだなあ、外国語の看板がリアルタイムで日本語に翻訳されて見えるとか。あとは、サッカー観戦で、選手にピンを合わせてウィンクしたら、選手のプロフィールが画面に出てくるとか。要はスマホでも実現可能なことを、ハンズフリーでできるってところが当面の便利な使い道でしょうね。しかも、ここが大事なんですが、周囲の人々に「私は今グーグルグラスを使ってます」って暗に宣言しながら使わなくてはならない。周りの人は絶対に警戒しますからね。

あと、これ個人的にはかなり重要な点ですが、私がもし使うとしたら、モニターは右目じゃなくて左目で見たい。左目バージョンも是非。

ところで、グーグルグラスの使い方を調べていたら、アホな商品を見つけてしまいました。


「5000円以下で買えるグーグルグラス」だそうです。

キックスターターで出資者募集中だと。アホだなあ。

2014年5月12日月曜日

日々是安眠。スマホアプリ「寝たまんまヨガ」が必需品になってしまった件

今日は、スマホ用のアプリ「寝たまんまヨガ 簡単瞑想」をご紹介。ここ2週間ほど、毎日これ使って眠ってます。


この1~2年、夜眠るときには、Panasonicの「目もとエステ」を使っていました。




これもなかなかよく眠れるんですが、使い続けているうちに、ちょっと気になる点も出てきました。箇条書きにします。

・振動がうるさいと感じるようになってきた
・夏場など、気温が高い季節にこれやると目の周りが蒸れて逆に不快
・身体が慣れてしまって、入眠導入効果が低くなった
・旅先などに持って行くのが面倒

なんか代わりになるガジェットないかなあと思っていた折り、Twitterのタイムラインに気になる情報が。


自分にとって役に立つ情報は、いつもTwitterのタイムラインに現れます。これは試してみるしかありません。早速アプリをダウンロード。


「プログラムの流れ」を読むと、「部屋を暗くして、ヨガマットの上(ふとんやマットでもOK)に仰向けになります。体を冷やさないように毛布などをそばに用意しましょう」とあります。

やはりこれは、「眠るため」に使うということで問題なさそうです。実はこのアプリ、朝の起き抜けにベッドの中でヨガってシチュエーションもあるのかなと思ってた。でもどうやら夜ですね。就寝時、ベッドで実験です。


メニューから「Deep Relaxation Short」にあるIntroduction(無料)を選びます。

シタール(ヴィーナ?)の音に乗って、インストラクターの女性の声が聞こえてきます。

「これから、ヨガ・ニードラを始めます。ブランケットや枕が必要な方は、適切な場所に置き、仰向けのシャバーサナで身体が左右対称になるようにします。両手と両足はやや開いて、手のひらを上に向けましょう……」

言われるがままに、ベッドで簡単なポーズをとったり、呼吸したりしているうちに……あら不思議、ぐっすり眠ってしまいました。こんなにあっさり効くとは思わなかった。

無料コースはおよそ14分なんですが、翌日もまた、インストラクターの声を最後まで聞き終わることなく眠ってしまいました。これは使える!

無料のメニューは1つだけで、あとは課金メニューです。

イメージビジュアライゼーション(26分):100円
ディープリラクゼーションロング(42分):400円
チャクラ・メディテーション(32分):400円
プラーナ・メディテーション(27分):400円 

だけど、差し当たり無料メニューだけで十分眠れます。課金メニューは、効果がなくなって来てから検討すればいいかなと。

アプリの開発元はエキサイト。ヨガのインストラクションはスタジオ・ヨギーです。

あ、そうそう。無料コースをやってる中に、「サンカルパを3回唱えましょう」というのが出てきます。アプリの中にある説明によると、「サンカルパ」というのは、決意・願望を意味するそうです。

「短くシンプルな節を、毎回変えずに3回言い聞かせます」と書いてあります。ここが悩ましい。ヨガ中に、お題目を(心の中で)3回唱えなくてはならない。すっ飛ばすのも気が引ける。何か唱えないと。

そうだ。

「明日は酒を飲まない 明日は酒を飲まない 明日は酒を飲まない」

しかしこれだと、このアプリ使ってる限り一生酒が飲めません。だって毎回変えずに唱えるって書いてある。それは困る。

自分のサンカルパを設定しなくてはなりません。だけど、人生でこれといった決意とか目標とか考えたことないんだよなあ。昔から。

「毎晩ぐっすり眠る 毎晩ぐっすり眠る 毎晩ぐっすり眠る」

うん、これでいいや。

……今夜もぐっすり眠れそうです。

「寝たまんまヨガ 簡単瞑想」iOS版はこちらから

「寝たまんまヨガ 簡単瞑想」Android版はこちら


2014年5月7日水曜日

下北半島の絶景お花見スポット二景

ゴールデンウィークは青森に帰省しておりました。5月3日から5日まで。

青森に着いてみたら、思いがけず桜が満開で、花見三昧となりました。例年より開花が若干早かったようです。青森の花見シーズンは、東京からほぼ1カ月遅れと記憶しておけばOK。

青森県の桜の名所と言えば、弘前城が有名ですが、下北半島にもいいところがありますよってことで2か所ほどご紹介。

早掛沼公園(むつ市田名部小平舘ノ内尻釜)


ここは定番お花見スポットです。地元の人なら誰でも知ってます。


沼がミラーです。神秘的でなかなか趣がある。

今回、久々に訪れましたが、立派なオートキャンプ場が出来上がっていて、たくさんのキャンパーがテントを張っていました。上の写真はキャンプ場から撮ったものです。


こちらは、キャンプ場のちょっと先、折しも「むつ桜まつり」が催されていた会場で撮った1枚。左上に見える山は釜伏山といって、下北半島随一の名山です。頂上には航空自衛隊のガメラレーダーがそびえ立っており、間近で見るとかなりの偉容。


ちなみに、レーダーはこんな感じ(一昨年に撮影)。丸く突起した部分がガメラの甲羅みたいなので、ガメラレーダーと呼ばれています。釜伏山の山頂はなかなか楽しいので、山岳ドライブが嫌いじゃなければ、是非訪れてみることをオススメします。

さて、桜の名所もう1カ所。それは、大畑バイパスです。津軽海峡に沿って東西に走る道路。




およそ8キロにわたって、1300本以上の桜並木が延々続く圧巻の景色が楽しめます。後に公募で「かさまい大畑桜ロード」と名付けられたんだとか。


まさに「桜のトンネル」です。バイパスなので、基本、車で通過するための道路であり、人は歩いていません。近隣で花見イベントのひとつもやってよって感じもありますが、これはこれでいいのかな。私自身、帰省の折には必ず車で通る道なのですが、桜満開の時期は初めてだったので、その景観の長く続くさまにかなり興奮しました。

車内から撮った動画を貼っておきましょう。



下北半島、訪れるなら桜の時期がベストシーズンではないでしょうか。冬の間閉ざされていた恐山の参道も、GWから車の通行が可能になります。

また来年、桜の時期に帰省しようと思った次第。それにしてもこれだけの景観があるんだったら、ちゃんと町おこしした方がいいよねえ。

2014年5月2日金曜日

「ホドロフスキーのDUNE」で目からウロコ。若き日の自分に見せてあげたい映画

いやいやいやいや。またしてもすごいものを見てしまいましたよ。「ホドロフスキーのDUNE」。未完の超大作「DUNE」のオリジナル企画が、いかに頓挫していったかを描いたドキュメンタリーです。

何というか、目からウロコが何枚落ちたか分からないレベル。自分が培ってきた映画史観が全否定されたあげく、この映画によって上書きされたという感じ。

20代のころ、イスラエルを旅行した時、テルアビブのバーに入ったら「DUNE 砂の惑星」のポスターがドーンと飾ってあって興奮したことがありました。ユダヤ人はあまりお酒を飲まないんですが、さすがに首都にはバーぐらいあるよってことで繰り出したんですが、そこにB倍サイズの「DUNE」があった。B倍よりデカかったかも知れない。


「DUNE」の舞台となる星には、月が2つ沈むんです。クールな青い月ですねえ。私はそのバーで、この砂漠と空と星しか映っていない映画のポスターを見ながら、ジンを飲んだ夜のことを鮮明に覚えています。

ところで、2つの星が沈むと言えば「スター・ウォーズ」(1977)におけるタトゥイーンと同じなわけですよ。こっちは太陽が2つ。沈む夕陽を眺めるルーク・スカイウォーカーの後ろ姿に哀愁が漂います。てっきり「DUNE 砂の惑星」は、タトゥイーンの2つの太陽をパクって月にしたんだと思ってました。


ところが、パクったのは「スター・ウォーズ」の方だった。

後にデビッド・リンチが監督した「DUNE 砂の惑星」は1985年の公開ですが、そもそもアレハンドロ・ホドロフスキーが「DUNE」を映画化しようとしていたのは1975年のこと。つまり、タトゥイーンの2つの太陽より先に「DUNE」の2つの月があったんです。

私は完全に誤解していました。すべては「スター・ウォーズ」から始まったと思っていたんですが、そうじゃなかった。以下、SF界の主要作品の公開年をタイムラインに落としてみます。

1968年「2001年宇宙の旅」 ←まあこれはこれで「別格」。
1975年  ホドロフスキー版「DUNE」企画中 ←「DUNE」は「SW」の前の企画だった。
1977年「スター・ウォーズ 新たなる希望」
1979年「エイリアン」
1980年「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」
1982年「ブレードランナー」
1983年「スター・ウォーズ ジェダイの帰還」
1984年  デビッド・リンチ版「DUNE 砂の惑星」 ←公開がここだから「SW」の後の企画だと思ってた。

先の2つの太陽をはじめ、「スター・ウォーズ」がオリジナルだと思っていたものの元ネタは、ホドロフスキーの「DUNE」の絵コンテの中に山のようにあるんです。「その後のSF映画を変えた」作品は、「スター・ウォーズ」じゃなくて、未完に終わった(正確に言うと、制作もされなかった)ホドロフスキーの「DUNE」だったんです。

「スター・ウォーズ」だけじゃなく、「ブレードランナー」や「エイリアン」を初めて見たときに、「なんだこれ凄え!こんな映像見たことないよ」って素直に感動していた若き日の自分に、「おいおい、元ネタは『DUNE』だよ。全部ホドロフスキーのアイディアなんだよ」って教えてあげたい気分です。

例えば、ハルコーネンの居城のイメージは、H・R・ギーガーが担当しました。


ギーガーにとって、初の映画の仕事でした。「DUNE」は完成しませんでしたが、ギーガーの才能はハリウッドの注目するところとなり、後に「エイリアン」のキャラクターデザインに抜てきされました。

このでっぷりとしたハルコーネンのビジュアルは、ジャバ・ザ・ハットの原形であるとみて間違いないでしょう。

こんな感じで、「DUNE」からインスパイアされて、後のSF大作映画で使われたキャラクターやアイディアが山のように出てきます。もうビックリするばかり。しかもホドロフスキーは、パクられたとか全然思ってない。「元祖クリエイティブ・コモンズ」って感じでしょうか。

フランク・ハーバート原作の「DUNE」の映画化権は、やがてホドロフスキーの手を離れ、ラファエラ&ディノ・デ・ラウレンティス親子の手に渡ります。彼らのプロデュースにより、「イレイザーヘッド」「エレファントマン」で成功したデビッド・リンチが監督することになり、映画は製作されました。しかし出来上がった「DUNE 砂の惑星」は、世紀の失敗作という烙印を押されちゃった。リンチは「スター・ウォーズ ジェダイの帰還」の監督もオファーされていたんですが、それを蹴ってこっちを撮った。で、大失敗したと。

「DUNE」>「スター・ウォーズ」ってチョイスは、それはそれでリンチらしい変態的決断だったと思いますが、そもそも「DUNE」の根っこにいたのは、もっともの凄い変態だったというお話です。



ホドロフスキーの「DUNE」には、主要キャストにも凄い名前が出てきます。銀河帝国の皇帝役がサルバドール・ダリ! ハルコーネン男爵はオーソン・ウェルズ! この夢のようなキャスティングが内定していたという……私は気絶するかと思いました。でも、もうこれ以上の固有名詞は言いません(言いたいけど)。おまけに、キャスティングにまつわるエピソードがまた抜群におもしろい。ぜひ本編を見て驚いてください。

デビッド・リンチが「DUNE」をやることを知ったときの、ホドロフスキーのリアクションも最高です。リンチの名誉もちゃんと回復されている。

それにしても、この映画がホドロフスキーによって作られていたら、映画の世界はいまとまったく違うビジュアル世界になっていたかも知れません。

だけど、このホドロフスキーの「DUNE」は製作されずに正解だったとも思うんです。企画は凄いんだけど、ムチャクチャになってしまう可能性も十二分にあったわけで。とても難産だった映画で、その制作の過程がまた有名にもなった「地獄の黙示録」を思いだしますが、あれがSFの世界で成立するかっていうとかなり難しいものがあります。特に、SFXがまだまだ未確立だった時代です。

今となっては「未完の大作」の方がカッコいいね。しかも「DUNE」の場合は「伝説」と呼んでいい。「伝説的未完の大作」。予告編を貼っておきましょう。


http://youtu.be/r-cnFoqfJfI

しかし、この爺さんは本当に化け物ですね。85歳でこの若さは尋常じゃない。本人は「300歳まで生きたい」って言ってるけど、全然マジだよね。やっぱ人間、老いたらのんびりしようなんて考えたらアカンってことですか。死ぬまでアグレッシブに生きないと。

ちなみに、ホドロフスキーはチリ生まれのロシア系ユダヤ人です。酒もタバコもコーヒーも飲まない。赤身の肉は食べない。若い奥さんとベタベタするのが健康の秘訣だそうです。今思えば、テルアビブのバーの店主は、同胞へのリスペクトを込めて「DUNE」のポスターを飾っていたのかも知れません。

「ホドロフスキーのDUNE」は6月14日公開。