2013年10月30日水曜日

ニューヨークでバンクシー・ハンティング

今回のニューヨーク旅行は、ライブを2本見ることと、ブルックリンをぶらぶらするのが主要な目的だったのですが、出発前に思いがけない獲物が飛び込んできました。


バンクシーです。バンクシーはイギリスのブリストル出身。正体不明・年齢不詳・神出鬼没のストリート・アーティストです。

そのバンクシーが、10月1日から、突然ニューヨークでゲリラ的な展示をスタートさせたのです。10月いっぱい、毎日1点、ニューヨーク各地の路上に作品を残し、自分のWebで公表するというリアルタイム・インスタレーション。

「作品」は毎日午前中に専用のWebサイトで発表されます。当日の新作は、作品の写真と大まかな場所(Hells KitchenとかBrooklynなど)しか明らかにされません。新作がWebに上がると、バンクシーの熱狂的ファンやアート好きのニューヨーカーたちが、「場所を特定」→「写真つきで場所をツイート」→「他のフォロワーが現地に殺到」というサイクルで拡散していきます。これが毎日行われるのです。一種の宝探しですね。

私たちがニューヨークに着いたのは10月25日ですから、それまで25点の作品が発表されています。最北がサウス・ブロンクス、最南がスタテン島。私たちのホテルはソーホーなので、そこを拠点に、翌26日の朝からそれほど遠くないエリアの作品を探しに行くことにしました。ニューヨークに着いて早々に、バンクシー・ハンティングに突入です。



アッパー・ウェストサイドでまず1点。こちらは#20(10月20日の作品)で、靴屋の外壁に描かれています。

作品は透明のアクリル板で覆われており(靴屋のオーナーが保護のために設置したとか)、かなりコンディションはグッド。幸先いい感じです。

しかし、2点目で早くも衝撃が。

ヘルズ・キッチンのハスラークラブのシャッターに、この絵が描かれているはずでした。

しかし現地に着いてみると、作品の描かれたシャッターは外されており、職人が新しいシャッターを取り付けている真っ最中。


おそらくは、お店のオーナーがコレクションにしてしまったんでしょうね。コンディションの良いうちに撤去してしまえと。

これが#24ですから、私たちがハンティングを始めた前々日の作品なんです。つまり、描かれてから3日ともたなかった。この日は土曜日で、現地にはこれ目当てで来た人々が7〜8人いて、皆がっかりして帰っていきます。

凄いイベントですよね。

基本的に、作品は「路上の落書き」が中心なので、上からさらに落書きされて作品が原形を失ってしまったり、作品ごと塗りつぶされてしまうこともある。この#24は、作品ごと取り外されてしまいました。「早く見に行かないと、見られなくなってしまう」という焦燥感に駆られて、ファンが東へ西へ、南へ北へとニューヨーク中を駆け回るという寸法。 

調べてみると、こんな便利なまとめマップも出来上がっており、大変役にたちそうです。

気を取り直してハンティング再開。ミッドタウンで#3をキャッチ。作品(=落書き)の上に落書きされちゃってますが、しっかり原形をとどめています。



次のターゲットは#26。下記の写真は公式に載ってたもの。ブルックリンのサンセットパークというやや遠い所にあります。トラックの荷台コンテナの後部ゲートに描かれた、26日の作品。


翌27日に地下鉄に乗って1時間かけて探しに行ってみると、すでにトラックは走り去っており、こんなメッセージが残されてました。ガックシ。


こんなことがあると、悔しいからリベンジしてやろうって気分になるんですよね。

で、次に向かうのは#27。さっきのトラックを見損ねたその足で、当日アップの新作を探しに行きます。翌日までもたない可能性もありますからねえ。


はい、無事でした。100%の状態。これもブルックリン。作品のアップ当日だけあって、ギャラリーもこんなにたくさん。みんなで写真撮りまくり。


結局、26日と27日の2日間で12地点を訪れ、7勝5敗という結果。面白いんだけど、移動が大変でとても疲れます。あと、辿り着いたけれど作品がすでに消滅していた時の徒労感ったらね。

今回、非常に役立ったツールを2つご紹介。

1つは、フォースクエアというアプリ。まあ、これはご存知の方も多いと思いますが、場所にチェックインできるサービスです。



ご覧のように、「banksy」で検索してみると、今回のバンクシーのインスタレーションの場所が位置情報とともにまとめて出てきます。作品探しが超絶便利。作品のコンディションに関するTipsもたくさん投稿されていてとっても役に立ちました。

そして、ニューヨーク・シティバイク。


パリやロンドン同様、公共の交通機関としてニューヨーク市が導入した自転車です。車体、システムともに、ロンドンのものとほぼ共通ですね。

今回のバンクシーの作品は、観光客が普段行かない、こんなことでもなきゃ絶対訪れないような場所にあるので、地下鉄やバスの移動だけだとかなりキツくて、たくさん歩かされる羽目になります。

そこを解決するのが、この自転車です。9.95ドル払えば、24時間乗り放題。ただし、30分以内にドック・トゥ・ドックという条件で使います。


こんなアプリと組み合わせて使えば、かなり効率よく移動することができます。

今回のバンクシーの一連の作品が、いつまで残っているかは神のみぞ知るですが、これからバンクシー・ハンティングにチャレンジする方は、この自転車をうまく使って移動するのがオススメです。ただし、もちろん交通事故のリスクは少なからずありますので、自己責任ということで。

自動車が一方通行のところは自転車も一方通行。また、歩道を走ると検挙されることもありますので十分ご注意の上。

今回のバンクシーのインスタレーション、「BETTER OUT THAN IN」のWebサイトはこちらです。

2013年10月27日日曜日

ニューヨークでSIMフリー。JALのWiFiは利用できず

6年ぶりにニューヨークにやってきました。宿はソーホーにとってあります。


往路のJAL便が、機内WiFiの使える便だったので試しに使ってみたのですが、WiFi電波は捉まえるもののインターネットに接続できません。

スッチーに聞いたら、「iOS7デスカ?」と聞くので「そうです」と答えたところ(iPad miniを使ってた)、何やらペラ紙を持ってきて「iOS7の場合、設定がチョト違います」と。

しかし、その紙に書いてある説明はまったく要領をえたものではなく、相変わらずネットには繋がりません。


iPad miniを諦め、ギャラクシー・ノートで試してみますが、それでもだめ。ブラウザを見てみると、画面の右肩の部分に「衛星接続無し」と出ています。機内のサーバーが衛星回線に繋げられなかったってことでしょうね。

まあ、新しいサービスなんて万事こんなもんです。JALさん、iOS7に罪をなすりつけてはいけませんよ。

いずれにせよ、JAL便でネットを使用する予定の方はくれぐれもご注意ください。このサービス、1時間で10.75ドル、24時間で19.75ドル(いずれもJALカード料金)って料金体系も納得感に欠けますね。24時間連続でフライトって物理的に無理だし。

さて、海外に出かける場合はお約束の、現地キャリアのSIMカードですが、今回はハードルの高い米国ということで、旅行前に調査した結果、AT&TのSIMを日本のAmazonから買うことにしました。正確にはマーケットプレイスの業者から購入。SIMは渡航の1週間ほど前に到着しています。



こいつを、香港で買ったiPhone4Sに入れて使います。バックアップのために、ギャラクシー端末も持参します。あわよくばホテルでWiFiを購入しなくても済むように、WiFiドングルも持参しておきます。

しかし、この日本で買ったSIMが、ニューヨークでiPhoneに入れても「圏外」でちっとも動作せず。

AT&TのSIMは、2年前にハワイで使った時もけっこう苦労した記憶があります。その時はAT&TのショップでSIMを買い、いったん店を出た後さらにサポートを受けに店に行って、結局はどうにか使えました。アンドロイドで。iPhoneではダメだった。



今回、iPhoneの設定画面にはこんな表示が出てます。「プロビジョニングされていないSIMです。」ってどういうこっちゃ。

こりゃアカンだろってことで、地下鉄に乗ってタイムズスクエアのAT&Tへ。


ショップのお姉さんに事情を説明しつつiPhoneを渡すと、ちょっと調べた後に「このSIMは死んでるわ。捨てておくからねっ!」とあっさり殺処分。Amazonで事前に購入作戦、大失敗です。新たにショップでSIMを買わなくてはなりません。

お姉さんが出してきたSIMは、Amazonのとまったく同じデザインのものでした。これに、米国内通話無制限(要らないんですけどね)、パケット2GB分をつけて60ドル。ちょっと高いし、現実劇にパケは1GBぐらいあれば十分なのですが、2GBの下は200MB程度まで上限が下がってしまうという実に巧妙な料金設定。有効期限は90日です。

60ドルコースで手を打って、iPhoneにSIMを投入。テザリングも行けそうですが、インターネット共有の設定画面に行くと、AT&TのWebで設定するか、電話で聞けとのアラートが。ショップのお姉さんに確認すると、「テザリング? できないわよ」と一蹴されました。

GALAXY端末でも試してみましたが、端末自体でのデータ通信はできるものの、やはりテザリングはできません。ま、しょうがないですね。

それでも、ハワイの時よりはだいぶマシです。特に設定を行う必要はないですし、何よりもiPhone(SIMフリー機)で使えるというのが大きい。

さて、武器も手に入ったことさし、さっそく行動開始です。今日のミッションは、10月の頭からアート好きのニューヨーカーを熱狂させている、バンクシーのゲリラ的パフォーマンス「BETTER OUT THAN IN」のハンティングです(続く)。

2013年10月24日木曜日

映画「ゼロ・グラビティ」の超絶映像にシビれる

今日は、朝から「ゼロ・グラビティ」の試写に行ってきました。

いま、北米で大ヒットしていて、日本でもこの正月の本命作品になりそうな雰囲気。日本でも、すでに見た人たちが騒いでいるので、早く見ておかないと、どんどん「見た気になってしまう」わけで。

主演はサンドラ・ブロック。共演がジョージ・クルーニー。2人とも、NASAの宇宙飛行士を演じます。

宇宙空間の無重力状態の中、船外活動していた宇宙飛行士が、デブリ(宇宙ゴミ)の襲来によって、母船から切り離され、宇宙空間に放り出されてしまう。果たして、その状態から無事に帰ってこれるかどうかというのが映画の大まかなストーリーです。

「アポロ13」を思いだしますね。

「ゼロ・グラビティ」はフィクションですが、「アポロ13」は船内、今回は船外ってことで、はるかに帰還までのハードルが上がっています。



オープニングから、凄くつかみの強いプレゼンテーション。

地球の上空60万メートル。
温度は摂氏125度からマイナス100度の間で変動する。
音を伝えるものは何もない。
気圧もない。
酸素もない。
宇宙で生命は存続できない。

「エイリアン」をも彷彿させる不気味さをもかもしています。

だけど、「エイリアン」から実に34年、「アポロ13」からは18年。映画の技術も激しく進化していました。

とにかく、この「ゼロ・グラビティ」は映像が凄いんです。アクションシーンが凄いとか、爆破シーンが凄いとか、そういうレベルではありません。

「どうやって撮ったか分からない」んです。

ちょっと映像を見てみましょうか。例えば、この予告編をご覧ください。



スマホの方は↓のリンクから。
http://www.youtube.com/watch?v=12ZRnBfASNA

冒頭の、地球をバックにデブリが飛んでくるシーンから、シャトル周辺で船外活動中の宇宙飛行士を映し、破片がシャトルにあたって博士(サンドラ・ブロック)がベルトを外して宇宙空間に放り出されるまで、カメラは縦横無尽に動き回りますが、これが何と1分半あまり全編ワンカット。 

次の予告編はもっと凄くて、最初はサンドラ・ブロックの視点だったカメラが、いつの間にか彼女のヘルメットを飛び出して宇宙空間で第3者視点になってる。これも最初から最後までワンカットの映像。



http://www.youtube.com/watch?v=1Z8o5xc26DQ

もう、何が起きてんだ? どうすりゃこんな画が撮れるんだ?って感じで、ゾクゾクしっぱなしですよ。 

昔「アポロ13」のメイキング映像を見たときに、旅客機で急降下するときに生まれる無重力に近い状態での撮影を、何度も繰り返したというのを思いだしますが、「ゼロ・グラビティ」は無重力のレベルが全然違う。この予告編見ただけでも、無重力状態の描写がハンパないのがお分かりいただけるかと。

何だかもう、全編マジックを見せられているみたいな感じですね。

まあ、よく考えれば、デスクトップで合成してるという結論しかないんですが、それにしても生半可なお仕事ではないですね。映画を見終わって、久々にプレスキットを精読しました。

そしたら、この映画は撮影もさることながら、照明がまたイノベーティブなんだと書いてある。

うーん。もう1回見るしかないですね、これは。

撮影のことばかり書きましたが、もちろんストーリーもよくできていて、しかもオリジナル脚本だというのがまた意義深い。映像の革新性については、「アバター」を引き合いに出す人もいますが、「ゼロ・グラビティ」はファンタジーじゃないってところもいい。実にリアルなんですよ。

来年のアカデミー賞の有力候補作品なんですが、撮影賞と編集賞と、音響効果賞あたりは鉄板ですね。絶対に間違いない。あとはサンドラ・ブロックの主演女優賞もかなり確率が高い。

問題は作品賞だな。これまで、SF作品が作品賞を取ったことはないらしいので。でも、もしもこれが作品賞取ったら、デスクトップ・ムービー初のオスカー作品ということになりますね。

それにしても、監督のアルフォンソ・キュアロンは変態ですね。よくぞこんな映画を思いついたもんだ。

いやあ、久々に痺れる1本でした。12月13日公開。