2016年12月20日火曜日

iPhoneがステディカムに大変身!DJIのジンバル、Osmo mobileを買ってみた

最近、ひょんなことで東京郊外の撮影所を訪れる機会がありました。その際、撮影所のスタッフたちにドローン出現後の空撮事情、移動撮影事情など聞いてみた時に「あ、そう言えばこれ凄いっすよ!」と見せてもらった機材がこれ。


スマホで動画(スチル写真も)を撮影する際に使うジンバルです。移動撮影用のスタビライザーね。DJIのOsmoという機種で、カメラの着いてないタイプ「Osmo mobile」です。

で、翌日、自分でも買っちまいました。Amazonで。


どうでもいいけど、付属のケースが微妙です。小学生の頃、ソロバン塾に通っていたのを思い出しましたよw。ソロバンケースだわ、このシェイプ。

早速Osmoをセットアップしてみましょう。iPhoneをステイにハメ込んだら、ダイヤルをグリグリ回して固定します。ここは簡単。

ただ、そのままだと水平が安定しないので、スタビライザーに対してiPhoneがバランス取れるように、調整ノブを回しながら細かくステイを出し入れしてFIX。ここ結構面倒くさ。


さあ、ポジションも固まったので、早速撮影してみましょう。

本体の電源をONにします。電動でステイがクルリと回転してウィーンと起き上がります。おおー! 重りでバランスを取るのではなく、電動アシストで姿勢をキープするんですね。


撮影は「DJI GO」という専用アプリで行います。Osmoの本体に組み込まれたボタンを操作して、iPhoneのカメラから撮影可能です。

挙動になれてきたので、家の外に撮影しに行ってみましょう。神楽坂の狭い路地を通過する様子を、動画で撮ってみました。1分21秒。


全然ブレません。途中、走っている部分もあるのですが、画面はすこぶる安定しています。

これは凄いわ。ステディカム並みの安定感。もう、気分はエマニュエル・ルベツキでっせw

公式の商品説明動画では、スタビライザーとしての基本機能に加え、人物を顔認識して追いかけるアクティブトラック機能、モーション・タイムラプス動画など、さまざまな付加機能も紹介されています。

Osmo mobile紹介動画(1分34秒)


GoProにしても、ドローンにしてもそうですが、撮影機材はどんどんコンパクトになり、しかも機動性が恐ろしく向上しています。いま、チープ革命の主戦場のひとつは、映像ソリューション業界です。ふだん使っているiPhoneとちょっとした機材で、誰でも簡単にプロ並みの映像が撮れる時代。

今回、DJIの商品を初めて買いましたが、この深センのメーカーからはしばらく目が離せませんよ。何しろ、世界のドローンのシェアのうち、70%を占めているのがDJIなんですから。

amazonのリンク


2016年12月18日日曜日

「ローグ・ワン」初日に鑑賞。「スター・ウォーズ エピソード3.99」だった


「スター・ウォーズ」(以下SW)の新作はとにかく早く見る。初日に見ると決めています。なぜなら、早く見ないと色んなノイズが入ってきちゃうから。

以下、例によってネタバレなし。「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」のレビューです。


冒頭、LUCAS FILMSのロゴに続いて、おなじみの「a long time ago in a galaxy, far far away…」が登場します。しかし今回、例のテーマ曲も台形スクロールの状況説明もありません。このあからさまな「本物じゃないよ感」がとても気になります。

事実、そこから30分ほどは登場人物の紹介と状況説明シークエンスが延々続くのですが、これがけっこうかったるい。初めての惑星、初めての都市、初めてのキャラがどんどん出てきますが、イベントが乏しいので全然頭に入りません。要素が整理できない=眠くなる。前半は正直シンドかった。

しかし、スタートから30分ほど過ぎたあたり。ドニー・イェン演じる盲目の戦士が出てきたところで、脳内アラームがけたたましく鳴りました。

「おおおおお。カンフー座頭市!」

アクション、キレっキレです。まさかSWに出演するドニー・イェンを見られる日が来るなんて。しかも座頭市がモチーフなのは間違いない。「I'm one with the Force, and the Force is with me.」彼の繰り返す台詞が頭にこびりついて離れなくなってしまいました。

後半は、惑星ジェダの地上および宇宙空間で激しい戦闘が繰り広げられます。ここに至ると「やっぱIMAXにしとけばよかった」という後悔も覚えるほど映像に没頭している自分に気づきます。

それにしても、主人公ジンを演じるフェリシティ・ジョーンズの出世っぷりが半端ないですね。「博士と彼女のセオリー」→「インフェルノ」→「ローグ・ワン」とトップスターの道を堂々歩んでいます。オックスフォード出身だって。スゲ。


それから、今回初登場のドロイド「K-2SO」が非常に重要な役割を占めていました。彼はコメディリリーフとして秀逸で、ひとりでC-3POとハン・ソロのロールをこなしていましたからね。

監督は「GODZILLA」のギャレス・エドワーズってことで、今回、ヒューマンドラマがしょぼいのは想定内。しかし、そんなハンディをしっかり埋めてさらにお釣りが来るほど、戦闘&アクションシークエンスの出来が素晴らしい。フォースに頼らない、ガチなファイトばかりなので好感度が高いんですわ。


ダース・ベイダー登場シーンは、涙している人もいましたね。「ああ、やっぱSWにはこの人がいないと」って感じでね。私は思いっきり笑ってしまいましたけど。

この映画は、SWの「外伝」とか「スピンオフ」とか言われていますが、なかなかどうしてメインストリームにズッポリ収まる見事な構成になっています。言ってみれば「スター・ウォーズ エピソード3.99」。見終わった瞬間、ほんと終わった瞬間に、シリーズ第1作目「エピソード4」が見たくなります。絶対になりますから。


2016年12月15日木曜日

オスカー最有力「ラ・ラ・ランド」を見た。オープニングの長回しに気絶寸前

見てきました。現時点におけるアカデミー賞最有力作品「ラ・ラ・ランド」。ゴールデングローブ賞で7部門ノミネートされてる。監督は一昨年の「セッション」で一躍名を馳せたデイミアン・チャゼル。ハーバード出身の弱冠31歳です。


この映画、秋のベネチア映画祭やトロント映画祭ですでにかなりの話題になっていました。チャゼル監督、今度はミュージカルです。ミュージカルは超絶苦手な私ですが、チャゼルの監督作なので見ないわけには行きません。チャゼルのこれの前の仕事は「10 クローバーフィールド・レーン」の脚本(共同ね)でしたけど、それも律儀に見ておりまして。

さて「ラ・ラ・ランド」、ネタバレなしでレビューしましょう。

冒頭、ロサンゼルスのフリーウェイのシーンで映画は始まります。大渋滞のフリーウェイ。カメラが横移動し、並んでいる車を次々映していきます。

するとカメラは車道の中に入り込み、車の運転席で歌を歌う女性にフォーカス。ここら辺で、観客はこのシークエンスがワンカットのステディカム撮影であることが分かります。

さらにカメラは、上り車線、下り車線、中央分離帯と縦横無尽に動き回り、車の中や車の外や、屋根の上で歌ういろいろな人々を忙しく追っかけます。

凄いんですよ。この路上のモブシーンが。しかも歌や踊りの振り付けつきを、ワンカットでやっつけてる。どんだけリハーサルしたんだよって思います。

映画見る限り、当該のフリーウェイ以外の近隣の道路は普通に車が通行しているので、2〜3キロメートルぐらいを封鎖して撮っているようです。

この長回しシークエンスは5分ほど続き、楽曲の終了「ジャ~ン!」とともにタイトルの「LA LA LAND」が「ドーン!」と登場したところでカット。

もう、ここで立ち上がって拍手したい気分になります。ベネチアでは、ここで実際にスタンディングオベーションが起きたらしい。それほどスペクタクルに溢れたオープニングシークエンスです。


このシーンに続いて、主演女優、主演男優が紹介され、ドラマがスタートするのですが、さっきのオープニングが凄すぎて、なかなかドラマに入り込めません。

スタイルはミュージカルですが、もちろん、ドラマもしっかり作り込まれています。女優を目指して、ウエイトレスをしながらオーディションを受けまくるミア(エマ・ストーン)。ジャズを愛し、いつか自分の店を切り盛りすることを夢見て、不本意ながら他人のバンドのメンバーをやってるセブ(ライアン・ゴズリング)。

この2人が、恋に落ちる物語です。

私はラブストーリーはあまり得意ではないので、もっぱら、撮影と照明を中心に鑑賞していました。まあ、どんな映画でもそうなんですが。

撮影はグレイトです。大好物の「手持ちカメラで長回し」が随所に登場します。興味深かったのは、楽曲を歌うシーンがほぼワンカットに収められている点ですね。ワンナンバー・ワンカット。凄いチャレンジです。そして凄い臨場感に仕上がっています。

照明もグッドです。照明仕事は、カメラと同じく撮影監督の仕事です。今回、「アメリカン・ハッスル」などを撮ったスウェーデン人、リナス・サンドグレンという人が撮影監督をやっています。

ストーリーが進む中、なんかちょっと不完全燃焼だなあ、あのオープニングシークエンスを上回るシーンがなかなかないなあと思って見ていたら、最後の最後に凄いカットがぶっ込まれていました。

わーお。

チャゼル、あんた凄いよ。シビれたよ。さすがハーバードは違うなあ。


ところで、この映画を見て一番喜ぶのはジャズファンですね。デイミアン・チャゼルのジャズに関するこだわりがこれでもかとリフレインするし。

それから、この映画「ラ・ラ・ランド」のタイトルの意味するところが最後までわからなかったんですが、後でググったら簡単に出てきました。


「La La Land」ってLA(ロサンゼルス)の別名でもあるんですね。ドラッグでぶっ飛んでる状態もLa La Landだそうです。なるほどー。それはそれで違った映画の解釈が導けるかも。

2017年2月24日公開です。アカデミー賞授賞式の直前!

2016年12月5日月曜日

映画「メッセージ」が傑作すぎる。YOUは何しに地球へ?

確か、去年の今ごろはこのブログで「オデッセイ」を「来年(2016年)公開のベスト映画候補」だってレビューした記憶があるのですが、今年もまた来年(2017年)公開のベスト映画候補作を先取りしてしまいました。

またしてもSciFiムービーです。原題は「ARRIVAL」。邦題は「メッセージ」。プレス試写で鑑賞しました。ネタバレなしでレビューしましょう。


まずはポスタービジュアルをご覧ください。宙に浮かぶカツオ節のような物体はUFOです。形はだいぶ違いますが、立ち姿が「2001年宇宙の旅」のモノリスを連想させます。

このUFOが、ある日突然地上に出現します。しかも、世界中に12体も。彼らはいったいどこから来たのか、どうやって飛来したのか分からない。そして最大の謎は、彼らの目的です。そう、まさに「YOUは何しに地球へ?」を明らかにするのが、この映画のメインテーマです。

このUFOの出現で世界がパニックに陥る中、米軍はUFOとのコンタクトのために一人の言語学者に白羽の矢を立てます。映画の主人公ルイーズ(エイミー・アダムス)は、同じ任務にアサインされた数学研究者イアン(ジェレミー・レナー)とともに、地球にやって来たエイリアンとのコミュニケーションをあの手この手で試み、彼らが地球にやって来た目的を探っていきます。

この映画を見ながら思い出していた映画が3本あります。まず「未知との遭遇」。次に「インデペンデンス・デイ」。それから「インターステラー」。

この3作品で描かれていたモチーフを、もっとリアルに、より現代的に洗練させ、しかも3作品のどれにも似ていない映画に仕上げています。驚くべきは、映画の本当のテーマはSFではなく、ディザスターでもなく、ヒューマンドラマであること。ルイーズのパーソナルな物語となっていることです。


映画を見終わって、心理学的、哲学的スタディを経験したような不思議な気分になりました。「人生って何だ?」「幸せって何だ?」みたいなね。ルイーズに感情移入して、泣けちゃう人も意外に多いと思います。

監督はドゥニ・ビルヌーブ。往年のF1レーサーみたいな名前です。直近だと、メキシコの麻薬戦争をテーマにした「ボーダーライン」とか、ヒュー・ジャックマンとジェイク・ギレンホールが出演した「プリズナーズ」とか撮ってます。実は私はこの監督の映画を1本も見たことなかったのですが、「メッセージ」を見て、初期の作品から見始めることにしました。

とにかく脚本が素晴らしい(エリック・ハイセラー)。撮影もグッド(撮影監督はブラッドフォード・ヤングという人。覚えておこう)。音楽も斬新(ヨハン・ヨハンソンというアイスランド人。これも覚えておこう)。凄い才能が結集していると感じます。監督は、これが初めてのSF作品だなんて信じられません。VFXのシークエンスは洗練されていて、映像的カタルシスも非常に大きい。「こんな演出、よく思いつくな」というシーンが次々現れます。

プロダクションノートから、例のUFOの造形に関する監督の語りを引用しておきましょう。

「当初、宇宙船は球体のように丸かったんだ。でもそれだと今までにも見たようなものになるし、それほど不吉な感じも奇妙な感じもしないと思った。だから、小石のような卵形の宇宙船にしようと考えたんだ。そして太陽系の軌道を公転しているエウノミア(別名、第15番小惑星)という小惑星を参考にして形を決めた。(中略)あの変な形がパーフェクトだった。不吉で謎めいていて恐ろしい感じがしたんだ」

ビルヌーブさん、そのこだわり、ナイスです。センス良すぎだわ。

本作はアメリカで11月に公開され、興行的にも好成績を記録しています。批評家からも絶賛評を集めており、RottenTomatoesでは93%フレッシュという驚異的な数値を叩き出してます。来年のアカデミー賞の有力候補となることは間違いありません。

だけど(だから)日本での公開は2017年の5月なんですよ。半年も先。まあ、分かりますよ。オスカーの結果出てからがビジネスチャンスだよねえ。

あと、最近のSFもの、宇宙ものの映画の邦題が迷走傾向なのも少し気になりますね。「Gravity」が「ゼロ・グラビティ」、「Martian」が「オデッセイ」、「Arrival」が「メッセージ」となかなかにガラパゴス。

予告編を貼っておきます。日本語版もあるのですが、ここは敢えてUS版のFinal Trailerを貼ります。だってこっちの方が雰囲気でてる(1分)。



最後に、このエントリで一番語りたかったことを。それは、このカナダの変態監督ドゥニ・ビルヌーブの次回作が「ブレードランナー2049」だってこと。あの「ブレードランナー」の公式な続編です。「メッセージ」を見てしまった今、「ブレラン2049」もまた大傑作となる予感大ですよ。だってこの映画が「ブレラン2049」の壮大なリハーサルだって考えたら……ワクワクドキドキが止まりません。スタジオも同じソニーですし。

「ブレラン2049」は2017年11月公開。来年は、5月の「メッセージ」もあるので、日本におけるビルヌーブ祭りになりますね。

ところで、「メッセージ」には原作がありました。「あなたの人生の物語」という短編です。著者はテッド・チャン。早速、Amazonで買いました。原作読んで、また映画見ます。来年の5月にね。