2015年2月15日日曜日

「恋するソマリア」一気読み。想定外の結末に唖然

バレンタインの週末は、高野秀行の新刊「恋するソマリア」を読みふけっていました。もう、面白すぎて一気読みです。


私が高野秀行を知ったのは、2011年の「イスラム飲酒紀行」という本がきっかけでした。割と最近のことです。自分もイスラム圏で酒が飲めずに苦労した思い出があるので、大いに共感しながら読んだ記憶があります。

この本に登場するイスラム諸国は、マレーシア、トルコなどの世俗的イスラム圏から、カタール、イランなど湾岸諸国、さらにはパキスタン、アフガニスタン、ソマリランドなど紛争地帯も網羅されており、「いったい、この著者は何者なんだ? 本職は戦場ジャーナリストか?」と不思議に思ったことを覚えています。


この本がとても面白かったので、その後間もなく高野の本はほとんどすべてを読みましたが、これがまたどれもこれも面白い。この人は戦場ジャーナリストなんかではなく、ノンフィクション作家でした。

著作を読みまくって分かったことは「イスラム飲酒紀行」は、高野にとって本業の著作というよりは副産物で(SPA!での連載をまとめたもの)、やはり本業のルポルタージュというか冒険記の方が圧倒的に面白い。なかでも、地球上に未だ存在する「秘境」や「辺境」に長期間滞在してものにした一大冒険譚ともいうべき作品群には感嘆するばかりです。

例えば、コンゴ奥地の湖に生息するという幻の生物を発見しにいく大冒険「幻獣ムベンベを追え」とか、ミャンマーの反政府ゲリラが支配する地域で、アヘン生産の農家に半年以上滞在した渾身のルポ「アヘン王国潜入記」など、わくわくドキドキの連続でぶっ飛びの面白さです。

筆者紹介によると「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」のがモットーとのこと。そう、重要なポイントは「面白おかしく」という点。文章はエンターテインメント性に満ちていて、いちど読み始めると止まりません。

そしてこの筆者の凄いところは、滞在する現地の人々と深く交流するために、必ず現地の言葉を学んで行くところ。

「恋するソマリア」でも、苦労しながらソマリ語を学び、だんだん話せるようになっていく様子が記されています。

少し引用してみましょう。南ソマリアの軍用空港で、高野の一行が、60歳前後と思われるソマリ人の老女性兵士と遭遇する場面です。
性差の彼岸に達しつつあるおばあさん兵士はひじょうにさばけていた。同時に妙な色気もあった。私がソマリ語で挨拶すると、ガシッと私の腕をつかんで引き寄せ、「あら、ソマリ語話せるじゃない。あたしと結婚しない?」としなを作った。周りが大爆笑するので、私も、「じゃあ、結婚式はいつやる? 今?」などと返し、やんやの喝采である。
「恋するソマリア」は、講談社ノンフィクション賞を受賞した「謎の独立国家ソマリランド」の後日談でありスピンオフ的な作品です。なので「謎の独立国家ソマリランド」の方を先に読まないとですね。


ソマリアといえば、映画「キャプテン・フィリップス」なんかを思い出しますが、アフリカ東部に位置する、営利目的の海賊で有名な国です。日本の船も襲われる事件がありました。いまも内戦状態にあり、荒れた大地にならず者たちが暮らす「北斗の拳」のような国だと思われています。では、現実のソマリアはどうなっているのか。「恋するソマリア」の「はじめに」から引用します。
だが、そのソマリアが国の体をなしていたのは1991年までだ。独裁政権が倒れてからは無数の武装勢力や自称国家が跋扈し、ソマリアは20年以上無政府状態であった。一度アメリカが介入しようとしたが、完膚無きまでにたたきのめされて撤退した。あとはもうアンタッチャブルの土地と化した。

その中に独自に内戦を終結させ、あろうことか複数政党制による民主主義を達成した「謎の国」があるという。ただし、国際的には一切認められていない。信用すべき情報もいくらもない。名前は「ソマリランド」という。

そんな国がほんとうにあるのか。私が半信半疑で彼の地に旅立ったのは2009年のことだ。ソマリランドは実在した。アフリカやアジアの平均以上の平和と安定を享受していた。
テレビや新聞では(もちろんインターネットでも)とうてい知り得ない、ソマリランド(およびソマリア)のリアルな姿を描く「謎の独立国家ソマリランド」と「恋するソマリア」は、2部作と捉えて、両方を一気に読むことをオススメします。

「謎の独立国家ソマリランド」に登場する人々(ソマリ人)は、みな一癖あって、強く印象に残る人物が多いのですが、続く「恋するソマリア」では、その登場人物たちの人生を変えるようなさまざまな出来事が起こります。

また、「恋するソマリア」は全編が筆者の「ソマリア愛」に貫かれています。この、国を擬人化して恋愛の対象にするという手法が、なんともラブリーな味わい。

そんな中、最後の章と「おわりに」で記された内容には驚きの連続でした。戦場、亡命、府中刑務所……。慄然、唖然、呆然の波状攻撃。とはいえ、シリアスな話も「面白おかしく」書かれているところがこの筆者の真骨頂です。

高野の本は、新刊の「恋するソマリア」を除いて、過去作のほとんどがKindleでも読めるようになりました。一度ハマるとなかなか抜けられませんから、読みたいと思った方は、どうか覚悟を決めてから読み始めてください。






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