2017年1月31日火曜日

キューバの桂林 ビニャーレス渓谷へ2泊3日で行ってみた

ハバナに5連泊した後は、ハバナから西に180キロ離れたビニャーレス渓谷に移動し、2泊します。ビニャーレスは、中国の桂林にあるような岩山に囲まれた風光明媚なエリアです。 

ネットで調べてみると、ハバナから日帰りツアーが出ていて、多くの旅行者はそのツアーに参加するのがポピュラーなようです。


しかし、こんな風景を写真で見た時に、「ここは日帰りじゃない。宿泊するしかない」と直感が告げたので、断崖の上に立つ、景色の素晴らしいホテル・ロスハスミネスを2泊分予約しました。

ところが。

出発の1週間ほど前に、予約した旅行サイトから「ロスハスミネスは満室だ。同じ値段でそれよりもグレードの高いホテル・サンビセンテを用意できるがどうする?」というメールが来たのです。

「何だそれ。最初っから予約エンジンに満室フラグつけといてよ!」って話で、あきれるしかありません。後で現地の人に聞いた話では、キューバのホテルは予約エンジン以前の状態で、しかも3~4日に一回しかメールチェックしないので、色んな行き違いが起きるそうです。IT化、激遅れ。

ビニャーレスには、ホテルは3軒しかありません。チョイス、少なすぎです。仕方ないので、旅行サイトの提案に乗って、景観は諦め、斜面にコテージ風の客室が点在するリゾートホテル、ランチョ・サンビセンテで妥協することにしました。

次はハバナからビニャーレスへの足。これについては、現地に着いて交通事情を肌感で把握した上で、レンタカーを手配する作戦でした。現地でバスとかタクシーなどの自動車に乗って、自分で運転する自信があるか確信してから決定する。


ハバナに着いた翌日、町をひとまわりし、車の運転はそれほどハードルが高くないと踏んだ私たちは、レンタカー作戦を決行すべく、泊まっていたホテルの中にあったレンタカーオフィスを訪ねます。

ところがところが。

「セニョール! 車はないよ。今日だけじゃないよ。12月いっぱいは、貸せる車は一台もないんだ」

ガーン! 甘かった。日本でネット予約するんだった。せっかく、国際免許や車載用のiPhoneラックとか充電セットも持参してあったのに、無駄になっちまった。

何だか、ちょっと相性の悪いデスティネーションです。

速やかにプランBに移行しましょう。ホテルのフロントでバスでの行き方を教わって、当日の朝9時出発のバスでビニャーレスへ突撃しました。


途中、ピニャ・デル・リオという町を通過した際に、フリーメイソン関連の家を偶然目撃。LOGIAって書いているので、ロッジなんでしょうね。メイソンのコンパス紋章は、キューバ滞在中3〜4回目撃しました。

バスは4時間ほどで(休憩含む)、ビニャーレスに到着です。到着前、バスの添乗員が席までやってきて、どこで降りたいのか聞くので、「ホテル・ランチョ・サンビセンテ」と告げます。どうやら、ホテルまでバスが連れていってくれるようです。

バスはまず、ビニャーレスのダウンタウンのバス停に着きました。乗客たちは、なんと私たち2人を除いて全員がここのバス停で降りました。ビニャーレスには、ホテルは3軒ですが、カーサ・パルティクラルという民泊施設が800軒あるんです。そのほとんどがダウンタウンに集中しています。ヨーロッパのバックパッカーに人気の町だと、現地で知りました。ほらね、やっぱ泊まりで正解じゃないの。


これが私たちの今晩の宿です。平屋のと2階建てのが数十軒建っています。写真の建物の2階の右側の部屋に泊まります。ほったて小屋風だけど、それなりに雰囲気あるんじゃない。

ホテルの周りには何もないので、バーで軽い昼食を摂ったあと、ダウンタウンに出かけようとフロントでタクシーを呼んでもらいます。

「タクシー、5分で来るわよ」

しかし、待てど暮らせどタクシーは来ません。

ビニャーレスの5分=45分です。タクシー頼んでから、45分後にやっとこ来たよ。

この日は、ダウンタウンでブラブラしたあと、当初泊まる予定だった景色の素晴らしいホテル・ハスミネスのカフェでまったり。


夕景も素晴らしいんですが、1本だけ生えているヤシの木がじゃまです。オレがロスハスミネスのオーナーだったら、この木、絶対切り倒すけどなあ。

暗くなったところでダウンタウンへ戻り、イタリアンレストランで夕食を摂って、ホテルに帰ります。基本、移動はタクシー。どこへ行くにも10CUCから15CUC。乗る前に交渉ありきです。

夜も更けたので、バンガローの部屋に戻ります。あとは寝るだけ。

ところがところがところが。

全然寝られない。この部屋、なんなんだ……。

エアコンが轟音をあげてフル稼働しています。工事現場並みにうるさい。
しかし、エアコンの消し方が分からない。リモコンのボタンも一切効かない、コンセント(電源)も見あたらない
ええい、しょうがない。ブレーカーを落としちゃえ!
エアコンが切れたのはいいんだが、隣の部屋のイビキが凄いんですけど
トイレの水が流れなくなった。ブレーカーは給水ポンプも兼ねているのか
朝、シャワー浴びられない、トイレも使えない

ビニャーレスとオレたち、相性悪すぎです。

トイレの問題は、ブレーカーとは無関係で、あとでホテルの人が修理しに来て直りました。それにしてもここはなかなか厳しいホテルです。


2日目は、葉巻農家を訪ねたり、洞窟をボートでめぐるビニャーレス堪能ツアーに参加して、この渓谷の町を満喫しました。このツアーは2人で82CUC(=82ドル)。


ホテルのフロントスタッフやツアーデスクのオバちゃんは超フレンドリーでみんないい人です。そこは良かったんだけどなあ。部屋がなあ……。エアコン、ウルさすぎ。

2泊目もブレーカーをガツンと落として就寝。

3日目は、ハバナに帰る日ですが、バスは14時出発。少し早起きして、ダウンタウンまで徒歩で行ってみました。およそ7キロ、1時間半の散歩です。

朝は涼しくて快適だったのですが、日が昇るにつれて、どんどん暑くなります。


道端の木がいい感じ。道路の端には、馬用の道もあります。

歩き続けていると、色んなものに遭遇します。


馬に荷車引かせてます。これはけっこうよく見かける。


お兄さんがニンニクを自転車にぶら下げて売っています。

葉巻工場の入り口が開いていたので、ちょっと覗いてみましょう。


葉巻は、完全に手作業で作ってるんですね。

ダウンタウンでランチを済ませ、おんぼろラーダのタクシーに乗ってサン・ビセンテに戻ります。2泊3日のビニャーレス観光が終了しました。

次にキューバに来ることがあれば、今回泊まれなかった、ホテル・ロスハスミネスに是非泊まりたい。ただ、このホテルも案外シャビーです。ロケーションがいいんだから、もっとゴージャスなリゾートホテルに改装すればいいのにね。


帰りのバスは、14時にビニャーレスを出発しました。私たちは一番最初にバスに乗れたので、一番前の席(運転席の直後の席)を確保します。それで気づいた驚きは、道中、バスは高速道路を走って帰りますが、現地人のヒッチハイカーがあちこちにいること。バックパッカーじゃないですよ、明らかにキューバ人のハイカー。私たちのバスに向けてもガンガン手を挙げてアピールしてきます。

これ、かなり確率は低いんじゃないでしょうか。社会主義の国だから、そうでもないんですかね? 現地の人たちの長距離移動は、なかなか大変そうです。 

2017年1月25日水曜日

ハバナのおいしいレストラン、微妙なレストラン

キューバの食事は、はっきり言ってまだまだです。「キューバにおける三重苦」と言えば、「ネットが使えない」「カードが使えない」「英語が通じない」で決まりだと思いますが、「メシがうまくない」ってのも加えて四重苦にしてもいいんじゃないかと思えるレベル。

やはり、社会主義とグルメは相容れない関係なのでしょうか。ロシアでもそれは感じたなあ。基本、キューバの料理は素朴です。

今回、ハバナには6泊。朝食は毎日ホテルで食べていましたが、昼食と夕食は、毎回違うレストランで摂ると決め、おもにTripAdvisorを頼りにレストラン探しをしました。

その中で、印象に残ったレストランをいくつかご紹介しましょう。すべてオールドハバナのお店です。


まずは「HABANA 61」。TripAdvisorにおける、ハバナのベストグルメ・レストランランキング1位の店です。

ちなみにハバナは、英語では「Havana」という綴りですが、スペイン語では「La Habana」です。現地では両方の表記を見かけます。

このレストランは予約した方がいいですね。予約がないと、外で1時間以上待つことになります。私たちはホテルのコンシェルジュに電話してもらい、「翌日ならOK」の返事だったので無事に予約できました。人気の店は、前日か前々日に押さえるべし。


HABANA61の料理です。タコをうすーくスライスしてスモークしたカルパッチョが名物です。だけど、絶品ってほどではありませんよ。となりのコロッケは、日本人にはうれしい一品です。


こちらはロブスターのグリル。これは今一歩だったな。キューバは常夏の国なので、ハワイと同じで魚介類はそんなにねえって感じ。ロブスターは他の店でも食べましたが、日本人が「美味しい!」と感じるレベルにはないと思います。


これはロパビエハという牛肉の料理です。私はこれが一番お気に入りでした。キューバのレストランなら、ロパビエハはほとんどどこでも食べられます。トマトスープで煮込んだ牛肉を、ほぐした状態でタマネギやパプリカとあえてサーブします。食感がコーンビーフにちょっと似てる。ライスとも合いますよ。

この店にしてもそうですが、どこの店でもキューバはお酒が安かった。ワインはボトルで20ドルぐらい。東京の半分から3分の1ですね。このHABANA 61は、2人でワイン1本あけて料理4品頼んで、合計50ドルぐらいで収まりました。リーズナブル。そして、クレジットカードは使えません。

「HABANA 61」

お次、ハバナのランキング3位の店「Donde Lis(ドンデ・リス)」。イタリアン・レストランです。キューバ風イタリアン。


ここは正直、ちょっと微妙でしたね。

内装はオシャレ。かなりレベル高い。接客もなかなか洗練されています。

だけどねえ、パスタが茹ですぎでぐだぐだなんだよね。量は多いです。ボリューム満点。値段はそこそこ。お店の雰囲気は青山なのに、料理は浅草の昭和なイタリアンって感じ。


パスタじゃなくて、リゾットを食べるべきだったかな。でも、接客がマルだったので許すかなと。

Donde Lisは、上のHABANA 61の近くにあります。オールドハバナですが、メインのオビスポ通りからはちょっと離れたエリア。

「Donde Lis Restaurant and Bar」

次。TripAdvisorでは6位、「304 O’Reilly」。ここはランチで行きました。

オールドハバナのメインストリート、オビスポ通りと平行しているオライリー通りに面しています。

お通しのバナナチップスが素朴で美味い!


タコスはOK、スープは2つオーダーして1勝1敗。まあ合格ですね。

「304 O’Reilly」

キューバでは、魚よりも肉を食べるのが正解です。

肉は、牛か豚か鳥。どれも美味しいですよ。牛なんか、何気にグラスフェッドじゃないかな。


カジュアルな店では、こんな感じでワンプレートに全部乗って出てくるケースが多いですよ。これはポーク&ライス。

意外なことに、キューバの主食は米なんだよね。町の電気屋では、炊飯器をよく見かけます。しかし、米はボソボソです。日本のとは品種が違うのか。

あと、野菜が欠乏してますね。生野菜は特に少ない。プレート料理の付け合わせは、イモとかバナナを揚げたのとか。


そうそう、中華も行きました。ハバナにはチャイナタウンがあるんです。

しかし、このチャイナタウンにはすでに中国人は住んでいないそうです。だから、なんちゃって中華料理にはご用心。「ヌードル」という名のスパゲティが平気で出てきます。


我々が行ったのは、天壇飯店(TIEN TAN RSTAURANT)というお店。ここは、ハバナ唯一のリアル・チャイニーズ・キュイジンを提供する店だそうです。


焼きそば、美味しかったですよ。ちゃんと中華な味がしてた。

「天壇飯店」

もう一品。キューバサンドの話もしなきゃ。

一昨年、「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」って映画がありましたけど、その中に出てくるキューバサンドイッチがとっても美味しそうだった記憶があり、滞在中ずっと探してたんですよ。

で、キューバから帰る最終日、ついにキューバサンドを見つけました。アメリカ人観光客でごった返す、ホテル・ナシオナルの中庭カフェにありました。


ちょっと映画で見たのとは違ったよね。パンがトーストされてないからかな。

でも、これはこれでアリです。マスタードをたっぷりつけて召し上がれ。

「Hotel Nacional de Cuba」


オールドハバナのレストランは、生バンドの演奏が楽しめるお店がたくさんあります。通りをぶらぶら歩いていると、「チャン・チャン」をはじめ、ブエナビスタ・ソシアル・クラブのナンバーやサンタナなんかのラテンミュージックが、そこら中から聞こえてくる、何とも楽しいところです。

音楽を楽しんだら、1CUC〜3CUC程度のチップをお忘れなく。

2017年1月23日月曜日

キューバの町を走るレトロな車は、50年代のアメ車だけじゃないのよ

ひとつ前のエントリーで、キューバにおける名物がチェ・ゲバラとヘミングウェイだって話をしました。でもそれ以前に、誰もが知ってるキューバ名物と言えば、「レトロなアメ車」ってことで異論はないですよね。


実際に、ご覧のようなクラシックなアメ車はキューバの重要な観光資源になっており、「クラシックカー利用のハバナ市内ツアー」の主役として活躍したり、驚くことには、普通のタクシー(=市民の足)としても、そこら中を毎日走りまわっています。


しかし……ちょっと待って下さい。

キューバを走る車の、すべてがレトロなアメ車ってわけではありません。さらに、レトロなアメ車がキューバにおける最適の乗物だってことでもないんです。

私はもともと車好きってこともあり、キューバにおける車事情についても興味津々で乗り込んで来ています。で、今回9日間キューバに滞在して自分なりに体感した、キューバにおける車(乗用車)のシェアは次の通りです。

アメ車(=レトロなアメ車)…… 30%
ラーダ(旧ソ連の車)…… 20%
今どきの車(普通の車)……50%

驚愕の事実発見です。キューバに来てみないと分からなかった真実、それはこの国が「ラーダ天国」だってことです。


これがラーダです。ラーダはソ連の自動車メーカーです。日本人には、ほとんどなじみがありませんが、ラーダ・ニーヴァという四駆の車種なんかは、けっこうファンが多かったと記憶しています。

たまたま私が子どもの頃から自動車オタクで、モーターショーのカタログなんかを隅から隅まで読んでいたから知ってただけの話です。そんなカタログの隅っこに載ってたぐらいの車が、キューバにはわんさか走ってるんですよ。

この、車のシェア案件は、キューバの歴史と関連づけて説明すると分かりやすいんですね。

キューバ革命以前、キューバは実質アメリカの属国でした。当然、アメ車もどんどん入ってくる。

1959年、キューバ革命が起こり、キューバとアメリカは断交します。従って、60年頃からアメリカの車はキューバに輸出されなくなった。

代わって、1960年代以降はソ連がキューバのケツを持つ関係になりました。だから、ソ連の国民車であるラーダがキューバにどんどん入ってくるようになった。

しかし、ソ連は1991年に崩壊します。ソ連のキューバへのサポートも実質的に終了。ラーダの輸入もここで終了。

それ以降は、ヨーロッパの車、アジアの車で廉価なものがキューバにやって来るようになりました。いまキューバの町を走る車は、アメ車とラーダを除けば、韓国のKIAやHYUNDAI、ヨーロッパだとVWとかFIATとかPEUGEOTとかCITROENなどなど。タクシーは中国のGEELY(吉利)です。

面白いことに、日本車の姿はほとんどありません。ごくまれに、トヨタのハイエースなんかを見かけるぐらい。

ラーダの話に戻ります。キューバには50年代のアメ車がたくさん走ってますが、クライスラーとかGMとかフォードなど、メーカーはバラけています。

メーカー本位で比較すれば、恐らく、キューバでもっとも多く走っている自動車はラーダでしょう。これは、キューバに来るまで知らなかったし、ほとんど誰も指摘していなかったことです。「ラーダ天国」、キューバ。面白すぎるよ、キューバ。


ほら、ラーダが3台連なってる。こんなの他の国じゃ絶対にあり得ない。

トヨタはじめ、日産やらホンダやら自動車メーカーがひしめく自動車大国日本では、ラーダの車はまず見かけません。

もっと言うと、昨年訪れたロシアでも、こんなにたくさんのラーダは見なかった。

もともと、イタリアのFIAT124という車をベースにノックダウンした車なので、シンプルだけど味のあるデザインですよねえ。BOXYでとてもキュート。

これは、ビニャーレスという田舎の町に出かけた時に撮ったラーダ。1970年頃のロシアにタイムスリップしたみたいだわ。


これ、箱スカみたいじゃね? 懐かしすぎ。

いやあラーダ、味があるよ。これ、一台欲しいわ。マジで。

初日にガイドしてくれた日本人の方に聞いた話では、キューバでは新規に登録できる自動車の数が年間5000台に制限されていて、一般人が手に入れるのは相当大変なんだそうです。制限されちゃってるから、値段もつり上がるそうで、このエントリで紹介したようなおんぼろのラーダでも、一台100万円ぐらいするそうです。

まあ、そんな制約もあるせいで、ハバナは確かに自動車の数は少ないですね。ただし、半分ぐらいは古いアメ車とかソ連のラーダなもんだから、エンジンはうるさいわ排ガスは臭いわで、空気は全然きれいじゃありません。


ほら、こんな光景をあちこちで見かけます。オーバーヒートか、もっと深刻なエンジントラブルか。このアメ車たち、 製造から60年ぐらい経っているので、走っていること自体が奇跡です。ボディは製造当時のままだけど、エンジン乗せ替えちゃってる車もたくさんあるそうです。

そして自動車メーカーも部品メーカーも、もはやこんな古い車のパーツなんか作ってませんから、スピードメーターは動かないわ、窓を開けるハンドルはもげてるわ、サスペンションやシートはガタガタだわと、本当のオンボロ車です。

オンボロなんで、はっきり言って乗り心地は最悪です。まあ、キューバに行ったら一度は乗ってみたいというのは誰しも思うでしょうから、一度は乗ってみてください。だけど、一度でOKですよ。だって、いつぶっ壊れるか分かったもんじゃない。


ハバナ滞在中、私たちが気に入って何度か乗っていたのがこれ。ココタクシーといって、原付相当のバイクに丸いカウルと後部座席をつけた代物。インドや東南アジアにおけるリクシャーみたいなもん。乗る前に料金交渉しますが、普通のタクシーとあんまり値段は変わらない。スピードはそれほど出ませんが、風を浴びながら走るので、なかなか快適ですよ。

2017年1月22日日曜日

老人と海と革命……ゲバラとヘミングウェイに依存しすぎだよ、キューバ

ハバナの町をブラブラしていて驚く(つか、呆れる)のは、チェ・ゲバラの肖像ををやたらと目にすることです。

これは、1時間に1回とかそういうレベルではなく、5分に1回、いや旧市街なら1分に1回って感じです。


お土産屋には、ゲバラのTシャツがこれでもかと吊されています。


こちらはトートバッグですね。

チェ・ゲバラは1967年に亡くなっていますから(享年39)、今のキューバ国民のほとんどは、生前のゲバラの記憶などないでしょう。学校で学ぶところの「建国の英雄」のひとりですよねえ。

じゃあ、これを日本の偉人に置き換えてみたら誰相当なのよ?

60年代に、若くして亡くなった偉人についてググってみると、力道山が1963年没でした(享年39)。あとね、三島由紀夫が1970年没(享年45)。

つまり、日本に例えるなら、三島由紀夫や力道山がいまだに国民のアイドル(シンボル)だっていう状況です。どう考えても異常です。キューバにおいて「時が止まっている」感じが分かるでしょ?

アメリカ人だと、マルコムXが1965年没(享年39歳)なんですよ。ゲバラはマルコムXと同世代で、同じ年齢で没している。

建国(=革命)の英雄なんだけど、50年前に死んだ人物の亡霊がいまだに「国のアイコン」であるところが、キューバという国を象徴しているんだなあ。

この、肖像が蔓延しているゲバラのポジションは、本来フィデル・カストロのものだったはず。ですが、カストロは自身の肖像が偶像崇拝の対象になるのを嫌ったこともあって、ゲバラのみがこんなに普及したってことなったんでしょうか。

とにかく、この国最強のキラーコンテンツは、チェ・ゲバラ以外にありません。

そういえば、この「ゲバラあふれてる感」、過去にもどこかで記憶があるな……。

中国における毛沢東? うーん、ちょっと違うな。だって毛沢東、そんなにカッコよくないじゃん。

カリスマ性とルックスを兼ね備え、商品にもなるという点では、高知における坂本龍馬ですかねえ。


坂本龍馬は、1836年生まれ、1867年没です。享年31歳。

しかし、キューバのゲバラは坂本龍馬のレベルをはるかに上回っています。お土産屋以外にも、ゲバラの姿はそこら中にあります。


本屋の入り口の柱にもゲバラ。


屋根の上の給水タンクにもゲバラ。著作権(肖像権)フリー状態だな。


このゲバラの置物は1つ5CUC(=5ドル)。


ほら、お札だってゲバラ。

もう、どんだけゲバラ好きなんだよってw


これは、有名な革命広場のチェ・ゲバラ。

革命広場にはもう1人、やはり革命の英雄であるカミーロ・シンフエゴスの肖像もあるのですが……。


シンフエゴスを知らなかった私には、イランの故・ホメイニ師にしか見えませんでした。

シンフエゴスはキューバ人ですが、ゲバラはキューバ人じゃないんですよ。アルゼンチン生まれ(ユダヤ人説もある)。母国じゃなくて、他国でここまでになった人物ってあんまりないよねえ。

あと、キューバゆかりの人物といえば、文豪ヘミングウェイ。

前のエントリーでも書きましたが、ヘミングウェイの愛したモヒートやダイキリを飲ませる店が観光名所になっていて、大変賑わっています。

これは、ヘミングウェイが一番好きだったモヒート。ボギデータ・デル・メディオというバー。


ヘミングウェイは、砂糖抜きをオーダーしていたそうです。分かる分かる。キューバ人、砂糖の量多すぎw


これは、ヘミングウェイが一番好きだったダイキリを出すバー。フロリディータというバーです。カウンターの端っこに、ヘミングウェイの銅像がある。

あと、ヘミングウェイが定宿にしていたホテル、アンボス・ムンドスも観光名所ね。ここはハバナ市内有数のWiFiスポットになっていて、ホテル前の道端に旅行者が鈴なりに座ってます。

それにしても……キューバはもう、どんだけこの2人に依存してんだよって感じです。もっと観光名所を増やさないとアカンよね。

ところで、ゲバラとヘミングウェイには、意外な共通点がありました。

アーネスト・ヘミングウェイに、エルネスト・ラフェアエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ。2人ともファーストネームがErnestなんですよ。

そして、なんと今年「エルネスト」って映画が公開されるそうです。日本・キューバ合作だって。

ゲバラと一緒に、ボリビアでゲリラ戦を戦った日系人が主人公とのことです。



あ、そうそう。最後になりましたけど、ゲバラやカストロのキューバ革命の偉業について興味がある方は、革命博物館の見学はマストです。

ここを訪れて、私は「ミュージアム(博物館・美術館)」の定義を再考しましたね。そこに展示されているのは、美術品でも骨董品でもなく、キューバ革命のプロセスなんですよ。

カストロ率いる革命軍が、どんな作戦を立てて、どうやって政府軍との戦いを制していったかというキューバ革命の歴史が、恐ろしく地味な展示品を連ねて語られているという、非常に珍しいミュージアムです。


そしてここには、町中ではほとんど見かけない、フィデル・カストロの肖像があるんですよ。

2017年1月19日木曜日

まずはハバナの町を把握しよう 市内ツアー>2階バス

キューバへのフライトは、夜10時過ぎの到着でした。なので、ハバナの町を観光するのは翌日の朝からです。朝日が顔を出したのは、午前7時を過ぎたあたり。


前回、夏休みの旅行でロシアに行った際、現地での宿泊と移動のすべてを代理店にアレンジしてもらったところ、これがなかなかハードコアな旅になった経験がありました。「連日、移動に次ぐ移動で体力的に大変」&「食事が連日ツアー客と一緒の店&一緒の定食メニューでうんざり」&「日本語ガイド&ドライバーが何でもやってくれるので緊張感ナシ」

これはこれで楽チンですが、旅行の姿勢としていかがなものか、と?

なので今回のキューバ旅行は、往復のエアーと全8泊のホテルのみ日本で予約して、あとは現地での流れで決めることにしました。首都ハバナにどっかり6泊、あとの2泊はビニャーレス渓谷という大自然を抱くローカルな景勝地にしてメリハリをつけます。

念のため、ハバナに到着した翌日の「ハバナ市内観光ツアー<1名参加OK/昼食付/日本語ガイド/ハバナ発>」というのだけは、日本で予約しておきました。

ツアー内容はこんな感じです(でした)。

ホテルロビーにて待ち合わせ(朝9時)
オールドハバナを徒歩で観光

ヘミングウェイゆかりのバーでモヒート体験
ヘミングウェイゆかりのパブでダイキリ体験
ヘミングウェイの定宿だったホテルでヘミングウェイ体験(部屋を見学できる)

タクシーで新市街に移動、昼食
50年代のオープンカーに乗って市内をドライブ
革命広場
オールドハバナに戻り、ちょっとだけぶらぶら
ホテルにもどり解散(16時30分頃)

このツアー、日本語ガイド付きは、大人1名250ドルとやや高め。英語ガイドだと99ドルなのですが、恐らく参加者が少ない(=フレキシブルになる)のは日本語ガイドの方だろうと踏んでのチョイスです。

結果、現地在住の日本人女性(ダンナがキューバ人)のアテンドで、私と、私の奥さんと、ニューヨークに留学中の学生クンの総勢4名でなかなか濃密なツアーとなりました。

面白かったのは、オープンカーで巡ったスポットの1つ、アルメンダス川のほとりにある緑地です。


太めの樹木に覆いかぶさるように、別のシダのような植物がびっしりまとわりついて、ティム・バートン的な風景を醸し出している不思議なエリアです。不思議というか、ちょっと不気味。

そこで非常に珍しい光景を目撃しました。

サンテリアという、アフリカの土俗信仰とカトリックが融合して生まれた宗教がキューバにあるんですが、そのサンテリアの人々の儀式に遭遇したのです。


人々は楽器を鳴らし、激しく踊りながらトランス状態に入っていきます。私たちが見た儀式では、白装束の男が踊りながら川に入ったり出たりを繰り返していました。サンテリアの人たちは、生け贄として鳥や動物を屠って捧げるんだそうですが、一時、あまりに生け贄屠殺が増えすぎて問題になったので、最近は儀式をやっていいエリアがだいぶ制限されているんだとか。

サンテリアの修行をしている人は、足の先から頭のてっぺんまで白い衣服を身につけているのが特徴です。ハバナの町でも何度か遭遇しました。

ハバナ市内観光、行きたいけれどそんな高額は払いたくないよって人には、2階建てバスに乗って自力で観光するのがオススメです。


この2階バスなら、たったの5CUC(=5ドル)で一日に何度も乗り降り可能です。ホップオン、ホップオフ形式。このバスだけで、主要な場所にはだいたい行ける。ただし、アルメンダス川の緑地は行きません。

このバス、「ハバナ・バスツアー」は、ルートが「T1」と「T3」の2系統(T2は廃止された)。革命広場など市内の要所をグルっと回るのはT1の方で、こっちの方が利用価値が高い。早速T1に乗ってみましょう。

バスに乗るときに、車掌にチケット代を払います。ただし、キップはその場でくれません。バスを降りるときに「また乗るからキップちょうだい」って感じでもらうのです。

バスに乗ったら、2階の一番前、できれば右側の席を目指しましょう。どこの町でも、2階バスに乗ったら2階の最前列を目指すのは定石ですが、ハバナのバスは、海沿いを右に見て走る区間がけっこう長いので、右側最前列がオススメなんです。


ただしハバナの2階バスは、他の色々な都市の2階バスに見られるような、イヤホンによる各国語の観光ガイドはありません。車掌兼ガイドさんが同乗して、スペイン語と英語で随時ガイドする程度。ハバナの町に慣れてない状態だと、降りる場所が分かりにくいので、路線図を把握して、前のエントリで紹介した地図アプリを開きっぱなしにしつつ、降りたいバス停に近づいたらダッシュで1階に降りて運転手に告げる作戦をオススメします。

一方、T3のバスは海峡を越えてビーチに行く時に使います。私たちは、カバーニャ要塞やチェ・ゲバラの家を見学する時に、このT3のバスを使いました。


T1もT3も、セントラル広場で乗降が可能です。5CUCなので、タクシーよりも全然お得。T1は30分おき、T3は40分おきの運行だったと記憶しています。 あと、T3はオープントップじゃなかったな。