2016年2月19日金曜日

オスカー4部門ノミネート「ルーム」を見た。天才子役のバカウマ演技にうなるしかない

プレス試写で「ルーム」を見てきました。今年のアカデミー賞に作品賞以下4部門にノミネートされています。


アメリカ(あるいはカナダ?)で、「部屋(=ルーム)」に7年間監禁されていた母(20代)と、監禁の間に生まれた5歳の少年ジャックが主人公です。この2人が、いかに監禁生活から脱出し、外の世界(我々が暮らす現実の世界)に適応していくかを描いたなかなかシリアスなドラマです。原作は「部屋」というベストセラー小説です。ブッカー賞の候補にもなった。

冒頭からしばらくの間、映画は、監禁状態の親子の暮らしを描いていきます。ワンルームしかない部屋で、明かりとりの天窓が1つあるだけの薄暗い部屋。外界の様子は一切見えない部屋で親子は暮らしています。リアル社会とのチャンネルはテレビしかありません。食材や日用品は、母親を誘拐・監禁した男であり、ジャックの父親でもある男が、週に1回届けにきます。鉄製のドアは暗証番号でロックされており、逃げ出すすべはありません。

重苦しい室内劇です。部屋は汚く、主人公の母親(ブリー・ラーソン)もアグリーメイク(ノーメイク?)です。「いったい、この辛い監禁生活をいつまで見せられるんだ」という気分になります。しかし映画が始まって10分ほど経過し、かなり悶々とした気分になりかけた時、突然気がつきました。「そうか。この映画は、子役の演技を見る映画なんだ」と。

監禁中の部屋で生まれ(出産の様子がどうだったのかとても気になりますが)、一度も外に出たことがなく、窓越しにすら外の世界を見たことのないジャック。もうすぐ5歳になろうとしているが、友だちもいなく、母親以外の人間とは一度も話をしたことがない。父親らしき男が週に一度部屋の中に入ってきますが、男が来るときは、ジャックは納戸に閉じ込められてしまうのです。


これは相当に難しい役柄ですよ。リアル社会を一切知らない少年役。そこに気がついてからは、俄然、ストーリーを追うのが楽しくなりました。

脱出シーンは、意外に早く訪れます。脱出劇がこの映画のハイライトではない。むしろその後ですね。

外に出てからのジャックは、初めて車に乗り、初めて警官に会い、初めて病院に行き、初めて母親以外の作った食事を食べ、初めて祖父や祖母に会うのです。もう、知恵熱が出っぱなしw

ジャックを演じたのは、ジェイコブ・トレンブレイ。2006年生まれです。なかなか中性的な顔立ちをしています。てか、女の子にしかみえない。「髪の毛が長いから、お嬢ちゃんだと思ったら、坊やなんだね」って感じ。


プレス資料にあった、レニー・アブラムソン監督の言葉を引用しましょう。

「5歳という設定なら通常の場合、子役は単に本来の自分でいることを望まれる。しかし、ジャック役には演技ができる子役が必要だった」

「彼はひときわ目立っていた。チャーミングでスウィートなだけでなく、俳優として素晴らしい技術を持ち合わせていた。まるでカジノで大金を当てたような気分だったよ。天井からキラキラと光が落ちてきたように見えた」

その後のストーリーはすべて端折りますが、この映画は、最後のカットが秀逸です。実にしみじみとする余韻を残す、カメラの静かな動きを堪能してください。

見終わった私は、この少年で「ホーム・アローン」のリメイクいけるんじゃない? いやいや「ベニスに死す」もやれるんじゃ? などと考えながら試写室を後にしました。

しかし正直に言えば、私のこの映画に対する率直な感想は「お金かかってないねえ〜」です。ネットのソースを調べると、製作費は600万ドル程度の模様。その金額でオスカー4部門(作品賞、監督賞、主演女優賞、脚色賞)ノミネートですからね。近年の作品賞ノミネート作品の中でも、群を抜いてローバジェットな作品だと思います。

北米での興行収入は、今のところ1100万ドルを超えた程度でそれほどの大ヒットでもないのですが、これでもしオスカー取るようなことがあれば(主演女優賞受賞が有力視されています)大儲けですね。日本での公開は4月8日です。

それにしても今年のアカデミー賞はサバイバル映画がやたら充実しています。「オデッセイ」に、この「ルーム」に「レヴェナント」。「レヴェナント」も凄い映画でした。次回書きます。




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