2016年2月13日土曜日

「サウルの息子」ゲーマー世代による超絶長回しホロコースト映画

凄いものを見てしまいました。「サウルの息子」。昨年のカンヌ映画祭でグランプリ、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞を受賞、今年のアカデミー賞でも外国語映画賞が有力視されている映画です。


凄い、本当に凄い映画なんだけど、そう簡単に他人には薦められませんよ。だって、あまりに陰惨なホロコーストの現場が舞台です。そこに送り込まれる大量のユダヤ人の死体を「処理」するユダヤ人の話……。

ところでこの映画、映像が恐ろしく斬新なんです。まったくの想定外。

冒頭、画面はピンボケて始まります。やがて、主人公のサウルが画面にカットインしてくると、ようやくサウルの背中にピントが合います。灰色のコートの背中には、赤いバッテンが大きく描かれています。しばらくすると、このバッテンが「ゾンダーコマンド」という、死体処理班の印であることが分かります。

映像は4対3のスタンダードサイズです。16対9のビスタサイズより幅がかなり狭い。そして、常にピントは浅く、後ろボケ状態がずーっと続きます。カメラは常にサウルの背後にあります。ゲームでいうところの「三人称視点」。もちろん、ステディカムでウリウリ動く。


何なんですかね、これ。「バイオハザード」ミーツ「シンドラーのリスト」? 

アウシュビッツのおぞましい風景は、常にピンボケ状態なので、気分が悪くなるようなシーンは見えません。その代わり観客は、「死んだ息子をラビ立ち会いのもとに埋葬する」という、主人公サウルの意地をかけたミッションに、三人称視点で延々つき合わされる羽目になります。

ワンカット20秒〜30秒というのはザラ。1分を超える長回しもたくさん登場します。もの凄い臨場感。だけど、見たくないものは映らない。ホントよく考えたよなあ、こんな撮影方法。

重苦しい収容所を飛び出し、最後は屋外で映画は終わります。私は「希望のあるエンディング」と解釈しましたが、そうじゃない見方もあるでしょう。久々に「ヨーロッパ映画」を見たなという感じ。

予告編を貼っておきましょう。映像はクローズアップばかりです。音楽がカッコいいね。


監督は38歳のハンガリー出身、ネメシュ・ラースロー。長編1作目だそうです。覚えておこう。絶対に凄い監督になりますよ。ええ、もちろんユダヤ人です。





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