2017年6月21日水曜日

「ベイビー・ドライバー」見てきた。カーチェイス版「ラ・ラ・ランド」? イエス!

カーチェイス版「ラ・ラ・ランド」って言われている映画があるよって聞いて、楽しみしていた一本がありました。「ベイビー・ドライバー」という映画です。

配給会社からの案内を見ると、「ロッテントマトで驚異の100%フレッシュ」って書いてあるので、「ウソだろう〜」と思ってサイトにアクセスしてみたら、本当に100%フレッシュです(6月21日現在)。もう、これは早めに見に行くしかないと決めて、プレス試写に行ってきました。


ストーリーはこんな感じ。

主人公「ベイビー」は、20歳そこそこの男子。少年の頃の交通事故が原因で、耳鳴りに悩まされる日々を送っている。そして彼は、音楽が大好きで、超絶ドライブテクニックの持ち主でもある。お気に入りの音楽をiPodで流し、ドリフトをキメながら走っている間は、耳鳴りに煩わされることなくノリノリの時間を楽しめるのだ。そんなベイビーの才能に目をつけたのが、ある強盗組織のボス。現金強奪の現場から、車で逃走する運転手にベイビーをアサインし、「実行犯が強奪→ベイビーのドラテクで逃げ切り」というシノギを繰り返していた……。

オープニングの「強奪→逃走」シークエンスが最高にクールです。車はスバル。ベイビーはエンジン全開、アドレナリンも全開で、走行車線、反対車線、道路脇の土手と自由自在に走り回ります。パトカーとチェイスになっても全然捕まらない。スピンターン一発決めて、180度方向転換し、パトカーをその場におきざり。

いやあ、痛快です。「ラ・ラ・ランド」を引き合いに出すのは十分に理解できます。「ラ・ラ・ランド」のオープニングは、ハイウェイで止まってる車の脇で人間が踊っていましたが、「ベイビー・ドライバー」は車が踊ってる。ロックのリズムに乗って、ベイビーの運転する車がダンスしているって感じ。

トレイラー貼っておきましょう。US版。2分19秒。


監督はエドガー・ライト。「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン」とか「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う」で知られるイギリス人監督。サイモン・ペッグ一味ですね。実はこの映画、今年のSXSWでワールドプレミアされてたんですね。オースティン行ってたのに、全然気がつかなかったw

しかし、ベイビーのやってることは、誰がどう見ても犯罪です。本人も罪の意識は感じていて、しかも最近「運命の女子」と出会っていい感じになってたりして「いい加減足を洗わなきゃ」と思っていた矢先、「最後の仕事」に担ぎ出されます。そして、映画は一気にクライマックスへ……。


強盗団の親玉にケビン・スペイシー、キレまくる強盗実行犯にジェイミー・フォックスと、脇も何気にゴージャス。主人公ベイビーのアンセル・エルゴート、「運命の女子」のリリー・ジェームズはともにフレッシュでラブリーです。

個人的には、エンディングのコンセプトが気に入らなかったんですが、トータルでは大いに気に入った作品。選曲のセンスがハンパないんですよ。

例えばこれ。YouTubeのライブ音源を貼っておきますが、フォーカスっていうプログレバンドの「Hocus Pocus」。4分37秒。かなりキテますw



この曲をバックに、ベイビーのドラテクが炸裂するというシーンにいたって爆笑→号泣。中学生の頃に聞いてたロックの名曲に、21世紀になった今、こんな形で再会するなんて感涙ものです。

フォーカスは、「ヨーデル・ロック」って言われてましたよね。上の動画の歌詞みつけた。

Joladadijoladadijoladadijoladadi
Joladadijoladadi-jo-o-ooh!
Joladadijoladadijoladadijoladadi
Joladadijoladadi-jo-o-ooh!
Oooooh-oooooh-oooooh-oooooh…

歌詞じゃなくて、呪文だよ!

ロッテンが100%フレッシュってことは、アメリカでも相当ヒットしたのかなって思ってIMDB見たら、まだ公開前でした。6月29日全米公開。日本は8月19日です。ロックと車が好きな人に(だけ)オススメw

▼Rotten Tomatoes BABY DRIVER
https://www.rottentomatoes.com/m/baby_driver/

2017年6月13日火曜日

WWDC2017、およびサンノゼに関する覚え書き

2017年の6月5日から9日まで行われた、WWDCに参加してきました(8日に帰国)。来年以降また行くかは未定ですが、取りあえず覚え書きを残しておきます。

■WWDCに関する覚え書き

新しいアップル・キャンパスで開催されることを期待したが、会場はサンノゼのマッケナリー・コンベンションセンターだった。新キャンパスはまだオープンしていないが、来年は会場になるかもね。


Keynoteは、さながらロックコンサート。5000人以上の参加者が、CEOテイム・クックはじめプレゼンターの発表に過剰なまでに反応してる。ノリ的には若干、「信者の集会」的なところがあるよね。

WWDC参加者向けの配布物に、紙資料は1つもない。さすがアップル。WWDCのスケジュール管理は専用アプリがベース。




ランチやスナックのスケジュールもアプリで告知。基本、朝食(フルーツ&スナック)とランチはコンベンションセンター内で無料で食べられる。


ランチボックスは3種類ぐらいあって、基本、参加者のタグを首にぶら下げていれば食べ放題。ひとりで2つランチボックス持ってる人もいた。


コンベンションセンターには、デスク&チェアーがたくさんあるし、充電器もあるし、WiFiは飛んでるし、いくらでも仕事できる。

バスタオルも用意されてて、それを敷いて日光浴してる(寝てる?)人もたくさんいる。


個別にAppleのコンサルを受けたい場合は、朝7時からWeb予約可能。我々も、AppStoreに申請したけどリジェクトされたアプリについて、Appleの担当者と直接ミーティングすることができた。

Keynoteに関して言えば、実際に参加してみて、その注目度、そして発表内容についての反響の大きさに驚いた。Keynoteを生で聞いていると、世界を先取りしている感がハンパない。このKeynoteには、Appleの過去1年と、向こう1年が集約されてる


しかも、自分がブログにKeynoteに関するエントリをアップしたずいぶん後に、日経新聞やBBCがWWDCの記事を出しているという。なかなかの先取り感。

特に今年のKeynoteはネタがてんこ盛りだった。MacOS、iOS、tvOS、watchOSと、全部で4つのOSに関するアップデート。iMac、MacBook、iPad、HomePodとハードウェアに関するアップデート。

現地にいる参加者も盛り上がっていたが、メディアも盛り上がるよね。各メディアが、2時間に及ぶKeynoteのどこにフォーカスしてるかを、自分のフォーカスと比べてみると面白い。 

■サンノゼの覚え書き

サンノゼの人口は、100万人超。意外にもサンフランシスコより多い。


サンノゼには、これといった観光名所はない。お土産屋もなければ、適当なお土産もない。

サンノゼのダウンタウンには、ホームレスがけっこう目立つ。スーパーのSafewayや、サンノゼ現代美術館のあたりにたくさんいる。

サンノゼ現代美術館は、あんまり期待していなかったのだが、思いがけず楽しめた。


これは、2Fで行われていた「Your Mind, This Moment」という特集展示の、瞑想をガイドするオブジェ。近くにあるスイッチを押すと「リラックスして〜、息を深く吸って〜」という感じの音声も流れる。

サンノゼにはMUJI(無印良品)がある。5ドルでスリッパを買った。シャツとかパンツとかここで手に入る。

レストランはグルテンフリー(GF)、ベジタリアン(V)の表示がある店も多い。


スーパーマーケットでもGF表示がある。

ちなみに、飛行機(ユナイテッド航空)も機内食にグルテンフリー食を申し込んでみた(1カ月ほど前に)。


サラダ(左)、アボカドサラダ(右)、左上のパンは玄米パン(山梨で作ってる)。


メインは鳥のササミ。サイドにはオリーブとかケイパー。ぶっちゃけ、あんま美味くないよw

GFは、小麦粉はもちろんですが、醤油を使わないってのがポイントですね。私はそこまで厳密ではないので、この食事だったら醤油OKにして和食を選ぶ方がいい感じかな。



x

2017年6月8日木曜日

シリコンバレーで「ツイン・ピークス The Return」にハマる

シリコンバレーに来ています。Appleの開発者向けのコンベンション、WWDC2017に出席するためにやって来たのですが、私はエンジニアではありませんので、初日のKeynoteが生で見られた時点で大満足。さらに翌日は、前ファーストレディ、ミッシェル・オバマのスピーチも聞けたりして、予想以上の獲れ高に達成感もかなり大きめ。

エンジニア向けのセッションにもいくつか参加しましたが、内容的に、ほとんどのセッションは出ても意味ないと確信できたので、残りの時間を今回の旅のもうひとつの重大ミッションに費やすことにしました。


それは「ツイン・ピークス」です。デビッド・リンチの往年の大ヒットTVシリーズが、25年を経て復活しています。いまアメリカでは「ツイン・ピークス The Return」が放映中なのです。

先月訪れたカンヌ映画祭でも、惜しくも一日違いで見られなかった「ツイン・ピークス The Return」を、日本の放映(7月22日)より早く、今回アメリカに滞在しているうちに見ておくというのがもうひとつのミッション。

まず、私がサンノゼに到着したのが6月4日の日曜日。ちょうどこの日は、新シーズンの第5話がSHOWTIMEで放映されるタイミングでもありました(基本、毎週日曜日の放映)。第1話から4話まで未見のまま、いきなり第5話を見るというのも抵抗がありましたが、タイミング的に恐らくそれしか見られません。ここは割り切って、「今見られるものを見る」と決めました。


しかし……。

ホテルのテレビのチャンネルをチェックすると、SHOWTIMEがありません。私が泊まったホテルのテレビは、全部で92チャンネルあって、HBOは4チャンネルもあるのにSHOWTIMEがない! FXやコメディセントラルはあるのにSHOWTIMEがない! なんてこった……。

しかし世の中、捨てる神がいれば、拾う神もいます。

参ったなあと思いながら、Twitterのタイムラインをチェックしてみたところ、SHOWTIMEがYouTubeで第1話と2話を無料でストリーミング配信しているという情報が!

キタキタ! 来ましたねえ。カルマの導きを感じますw

Twitter情報では、この無料ストリーミングが見られるのはアメリカのIPだけで、日本では見られないとのこと。私はいまカリフォルニアのサンノゼにいます。はやる気持ちを静めつつ、早速YouTubeにアクセスしてみようじゃないの……。


はい、映りました。「The Return」の第1話、第2話、バッチリ見ることができました。

北米のテレビは、映画やドラマはすべてクローズドキャプション(英語字幕)が入っているので、これをオンにして見ればけっこう理解できます。しかもオンデマンドなので、理解するのが難しかった部分は、巻き戻して何度でも見ればいい。

そもそも「ツイン・ピークス」は非常に中毒性の高い、「ハマるTVドラマ」として世界中の老若男女を中毒状態に追い込んだ罪深い番組です。

今回、私も取りあえず一旦はYouTubeの第1話、第2話で満足したのですが、サンノゼに滞在している間に、SHOWTIMEのオンデマンドで第5話まで見られることが判明しました。

そうと知ってしまったら、もう、いても立ってもいられません。早速、現地在住の友人のサポートを仰ぎ、残りの3話も見られる環境を作りました。

もう、典型的な中毒状態です。滞在中、第1話から第5話までを2回ずつ見ました。第3話は3回見たw


これから見る人たちのために、内容については一切触れませんが、「The Return」ヤバいっすよ。25年前と同じ心理状態になっている自分がここにいます。

一言で言えば「ツイン・ピークス」の続編というよりは、「デビッド・リンチの集大成」とでも呼ぶべき代物です。「ツイン・ピークス」のパイロット版に「ローラ・パーマー最期の7日間」、さらに「ロスト・ハイウェイ」と「マルホランド・ドライブ」を全部まぜて18時間のドラマを作ったような、そんな感じ。

また、日本での放映が始まったら詳しくレビューしようと思いますが、今の心境は「早く昔の仲間たちと語り合いたい」っていうやつですかね。今回もまた謎だらけで、しかも旧シーズンに比べて謎解きの難易度が上がっている気がします。その、謎の解釈をめぐって昔の仲間たちと語りたいと。そんな心境です。

ただし、リンチ作品がNGな人はまったく受け付けないと思いますよ。「マルホランド・ドライブ」見て寝ちゃったような人は、今作も「何、今の?」「誰、これ?」って具合に、全然ワケ分からないでしょうね。


「ツイン・ピークス The Return」は、そんな特殊なドラマです。全18話になると言われています。日本では7月22日からWOWOWで放映開始です。久々に、どっぷりハマれる案件です。ええ。 

2017年6月6日火曜日

WWDC2017にやって来た。最後の最後で「HomePod」がデビュー

Appleが毎年5〜6月に行う開発者向けのカンファレンス、WWDC(World Wide Developers Conference)にやって来ました。初めての参加です。今年のWWDCは、サンフランシスコではなくサンノゼで行われます。サンノゼに来るのは2度目ですが、前に来たのは20年以上前ですよ。まだGoogleも存在しない時代、最初のITバブルが弾ける前のシリコンバレーに一度来たことが。……しかし全然記憶がないw


今回、東京からサンフランシスコまでは直行便で飛んできて、Uberでサンノゼまで移動しました。同僚と2人です。Uberの運賃はおよそ70ドル。当然、タクシーよりは遙かに安い。6月4日に現地入りし、翌朝、6月5日の朝10時に行われるKeynoteに参加する流れ。

例年、日本だと夜中の2時からストリーミングでKeynoteの模様を見ることが可能ですが、是非ともライブで観戦してみたいと思っていました。生のティム・クックを、生のAppleのプレゼンを見てみたかった。


レジストリを済ませ、参加者へのお土産をもらいます。リーバイスのデニムジャケットにバッチ。意外にシンプル。紙の印刷物や、それを入れるためのトートバッグがないところが新鮮ですね。でも、もらってもあんまりうれしくない土産でしたw

今日、Keynote当日は「何時から並べば確実に入れるか」についてネットや現地で情報収集した結果、開始2時間半前、朝7時半に会場に行って並ぶことにしました。


会場の外で1時間待って、8時半頃ようやく建物の中に入れました。赤いTシャツを着たAppleのスタッフとハイタッチして入る人がたくさんいます。「イェ〜!」って叫びながら。信者の祭典、なかなかノリが陽気です。日本でもちょっと前に報道されてた、iPhoneの発売初日に徹夜で並んで、開店と同時に店員とハイタッチしてお店に入っていく、あの感じ。


中に入ってからさらに通路で1時間待ち、ようやくホールに入ったら、すでに席はかなり後ろしか空いていません。今年は5300人がこのKeynoteに参加したそうです。

定刻を10分ほど過ぎ、「もしも世界にアプリがなかったら」的なテーマの良くできたムービー(場内は爆笑に次ぐ爆笑)に続き、尊師ティム・クックが登場します。信者はもちろん大喝采。


Keynoteの詳しい内容は省きますが、この日発表されたのは6項目です。1.tvOSにamazon videoアプリが追加された。2.watchOSが4にアップデートする。3.macOSがアップデートし、名前は「ハイ・シエラ」に(場内爆笑)。iMacとmac bookもブランニューに。4.iOSが11にアップデートする。5.iPadが新しくなる。そして6番目が、新製品「HomePod」のリリースです。

かなりてんこ盛りでした。iPhone8以外は全部発表された感があります。個人的にも、向こう1年ぐらいはかなり出費が増えそうな予感を覚えました。新しいiMac、新しいmac book……。


さて、HomePodです。日本でもこれから市場がオープンする、IoTカテゴリの最重要デバイスです。家庭用のボイスアシスタント・デバイスなどと呼称されています。ずばり、Amazon EchoやGoogle Homeの競合となる製品です。基本的には「話しかけると、音声で答えてくれる」という機能をもったデバイスなんですが、AppleはAmazonやgoogleに先を越されているために、競合他社とは違うアプローチを仕掛けてきました。

Appleが打ち出したのは、「家庭におけるリスニングを革新する」というコンセプトでした。つまり、SONOSやEchoのスピーカーの性能が中途半端だとDisった上で、「Appleは長年音楽にコミットしてきたメーカーで、そのAppleが家庭用のスピーカーを作るとこうなるのよ」という主張です。音響面の特長をひととおり語ったあとで、「あ、そうそう。実はこのスピーカーにはマイクもたくさん着いていて、Siriだって動くんだよね」と。あくまで音楽がメイン、AI駆動のボイスアシスタント機能は、敢えてサブ的なところにおいてあるという。

これ、どうなんでしょうね。後発でありながら、そのポジションを認めたくない強弁なのか、それとも、AIで負けてもスピーカーとして生き残ればよしとするという2段構え的な戦略なのか。


ちなみにHomePodは、現物によるプレゼンはなく、スライドのみでしたが、ハンズオン会場にブツがありました。しかし音楽は鳴らしていませんでしたから、モックかも知れません。今年の12月発売予定で、最初の発売国はアメリカ、イギリス、オーストラリアです。つまり英語圏のみ。価格は349ドル。

繰り返しますが、家庭用ボイスアシスタント部門では、すでにAmazonとGoogleがだいぶ先行しています(とりわけAmazon Echo)。マイクロソフトやFacebookなども参入が確実なこのジャンルで、Appleがどれだけマーケットを獲得できるか。今年から来年(2018年)にかけて、見逃せない戦いがもうすぐ始まります。


2017年6月3日土曜日

カンヌ映画祭2017覚え書き。また行くか? 微妙だけどたぶん行く

カンヌ映画祭は、映画を見ている間は修業ですが、映画を見ていない時は極めて楽しいリゾート気分を味わえます。来年以降、「またカンヌに行くか?」と問われれば、「たぶん行く」と答えるでしょう。何故かと言えば、このエリアにおけるこの季節は、映画祭以外の色んな魅力が、映画祭を上回っているからです。もしも次回カンヌ映画祭に行くなら、モナコGPとハシゴすることに決めました。

以下、カンヌを再訪する時のために、覚え書きを残しておきたいと思います。


カンヌの人口は7万人。映画関係者は「カンヌは、日本で言うなら熱海みたいなところだ」と口を揃えるが、それはちょっと違うんじゃないかと。熱海にはあんなに大金持ちは集わないし。ちなみに熱海の人口は3万7000人。

夜の正式上映(ソワレ)のドレスコードはブラックタイ。今回、喪服上下と黒い靴と蝶ネクタイを持参したが、結局着ることはなかった。夜の上映のチケットが取れなかったため。

ボウタイ(蝶ネクタイ)を持ってなかったので、行きがけに羽田空港のブルックスブラザースで買ったら、なんと9000円もした。これ、現地のZARAとか行けば20ユーロぐらいで買えたのに。


このショウケースのブラックタイ対応セットは、ジャケットが99.95ユーロ、シャツが39.95、パンツ49.95、靴69.95ということで、合計260ユーロ。3万円ちょっと払えば、上から下まで揃っちゃうんだよね。

ファストファッションでOKならば、カンヌでは洋服は安い。一方、バカ高いのが食事。ちょっとワインを飲んだりするとランチでひとり50ユーロとか平気で超える。中華とかアジアンならば、お酒飲んでも10ユーロ程度で収まるんだが。


カンヌは、港に停泊しているクルーザーのデカさもハンパない。逗子とか沼津に停泊しているヤツの3倍ぐらいのクルーザーがゴロゴロいる。そんな豪華クルーザーを借り切って、パーティーを開く映画会社もあるそうです。バブリーですなあ。

映画祭期間中は、映画関係者で賑わっているカンヌ市街地だが、週末になると映画祭とは関係ない観光客もワンサカ押し寄せて、通りがごった返してる。人気のレストランに行くなら、土日は外した方が無難。

カンヌ映画祭期間中は、ホテルもべらぼうに高い。私たちの泊まったホテル・ベルビューという宿は、ふだんは1泊57ユーロの安宿です。それがカンヌ映画祭期間中は、8泊しばりで27万円。1泊3万4000円弱である。……しかし、SXSW期間中のオースティンよりはマシだという話も。

カンヌに空路で行く場合は、ニース空港からUberを使うのがオススメ。空港の場合、タクシーとの兼ね合いでUberに乗車できる場所は限られるが、ニースは第1ターミナルでも、第2ターミナルでも問題なく乗車可能。アプリ見れば乗れる場所が分かる。タクシーなら100ユーロ相当が、Uberなら約60ユーロ。夜なら30分でニース空港からカンヌに着く。


あ、そうそう。カンヌのUberには、ヘリコプターもあんのよ。これ、値段いくらか分からなかったが、初めて見たな、UberCOPTER。

カンヌにはルーフトップバーがいくつかあって、今回楽しみにしていたんだが、実際に突撃してみると、ことごとく貸切で全然入れない。映画祭期間中は、映画会社が貸し切ってパーティーやったり、インタビュー場所にしたりなんだと。


カンヌ映画祭にやって来て一番驚いたのは、その印刷物の多さ。初日、レジスターが終わると、こんだけのブックレットが渡される。私はミニマルに行動したいので、印刷物は全部捨てて、スマホアプリでスケジュールを管理していたが、けっこう紙ベースで行動している人が多いんだよね……。


さらに驚いたのが、バラエティとかスクリーンなど日刊の専門誌が複数あって、前日のコンペ作品の星取りとか、当日の催し物の情報が掲載されてる。これが100ページぐらいのけっこうなボリュームで。日刊ですよ! 全然エコじゃない!


ちなみに、スクリーン誌によるコンペ星取では、河瀬直美監督の「光」は1.8で下から3番目。一番高いのは3.2の「Loveless」です。前々回のエントリで紹介したやつ。パルムドール取った「The Square」は2.7で2位タイ。まだ、コンペ作品が全部上映されていない、途中までの評価ですが。

カンヌ映画祭は、階級社会で敷居が高い。あと、いろいろ不案内で初心者にはハードルがずいぶん高い。さらに、Informationのスタッフもレベルがバラバラ。オバちゃんスタッフはまともなんだが、オッサンは超いい加減。こちらが知りたいことは、何一つ分からなかった。



カンヌのリビエラホテルには、マリリン・モンローの壁画がデカデカと描かれているが、これは、フレスコ画商の広告。発注を受けて、いろいろな壁面に絵を描くビジネス。

そう言えば、ブルガリア映画を1本見たんだが、首都ソフィアの町が舞台で、映画の中でソフィアの人は、「ありがとう」を「メルシー」と言い、「さようなら」を「チャオ」と言うんだよね。あとで気になって地図を見たんだが、ブルガリアはフランスにもイタリアにも国境を接していないという。ブルガリア人と会う機会があったら、どういうことなのか聞いてみたい。 

2017年5月31日水曜日

カンヌから半日遠足。モナコ、エズ、ボノの別荘

カンヌ映画際2017に来ています。しかし、連日見る映画がことごとくダークでヘビーなので、ちょっとここらでブレイクを入れましょう。カンヌを離れてコート・ダジュールの景勝地を観光することにしました。友人たちから「モナコに行けば?」「エズって町が最高に素敵よ」といくつか情報を得ています。


現地集合・現地解散ツアーが数多く揃う「Veltra」にちょうどいいのがありました。

「紺碧色のリヴィエラ海岸 エズ・マントン・モナコ公国<終日/日本語ドライバーガイド/モナコ発>」

ツアー名がナイスです。ケツにリンク置いときます。

所要時間4時間で、1人120ユーロです。1人しか参加者がいない場合は、2人分(240ユーロ)払えばツアー催行となります。私の場合もこれでした。

出発はニース各地。9時スタートと14時スタートがありますが、ニースまでカンヌから電車で30分ほどかかるので、朝イチのはパスして14時の回を選びます。


こんなやさぐれた感じの電車に乗って、ニースへ向かいます。2等なら7ユーロ。ニースは、フランスで5番目に大きい都市だそうです。しかし人口は40万人。

14時にニース駅にてガイド兼ドライバー氏と合流します。結局、参加者は私ひとりでした。貸切ツアーのスタートです。

海岸沿いの道を北東へ向かってドライブし、モナコを目指します。


ヴィルフランシュ=シュルメールの海岸線。ブーゲンビリアが咲いています。なんてラブリーな南仏の景色。

「ほら、あそこに見える赤い建物が、ボノの別荘ですよ」

「ちょ、ちょっと止めてください。写真撮るから」


これがボノの別荘だそうです。プライベートビーチつき。ボノがここに滞在するときは、入り口にガードマンが立っているので、すぐにそれと分かるそうです。

「丘の上にはエルトン・ジョンの別荘が。あちらにはショーン・コネリーの別荘もありますよ。ミック・ジャガーのは、数年前に売りに出されましたね」

そう言えば、今年カンヌ映画際にエルトン・ジョンが来ていましたが、ご近所だったんですね。

そうこうするうち、モナコに到着しました。モナコの町は、週末に行われるモナコグランプリ(F1)の準備で大忙し。


仮設の観戦スタンドが急ピッチで建設されています。

私が行ったのは火曜日ですが、木曜日のフリー走行は、無料で見学できるそうです。へー、そうなのか!

「でもね。モナコGPの期間中は、ホテルが1泊3000ユーロからになりますよ」

「げー。1泊37万円!」

「3000ユーロは一番安い方で、1泊5000ユーロぐらいはザラですね。ロブションの料理を食べながらレース観戦するランチコースが、1300ユーロです」

モナコGP、ハンパねえ! 本物の金持ちしか見られないレースだわ。

「いえいえ。ニースならホテルが安いから、ニースに泊まって、レースをモナコまで見に来ればいいんですよ。レース自体のチケットは300〜500ユーロぐらいですから」

なるほど。それなら許容範囲です。次回モナコに来ることがあれば、是非レースが見たい。

「ちょっとモナコGPのコースを車で走ってみましょうか?」

「是非是非!ぜひぜひ!」


スターティンググリッド付近。ここら辺はレースに向けて、すでに一方通行になっています。

左に見えるのが、あの有名なヘアピンカーブ(分かりにくいけど)。ここらはまだ対面通行ですね。


このヘアピンカーブは、かつては道路に面したローズ・ホテルにちなんで「ローズ・ヘアピン」と呼ばれていましたが、その後経営が変わり、今はフェアモントホテルになってます。

レースの準備中だったので、本番のコースをそのまま走るのは無理でしたが、それでも半周ぐらいは実際と同じコースを走ってもらうことができました。助手席からタイムラプス撮影したのがこれ。24秒。終盤がめまぐるしいw


レース関連以外では、グレース・ケリーのお墓参りができます。墓所がある聖ニコラス聖堂内は、写真OKです。


モナコは人口3万5000人ですが、ネイティブモナコ人は5000人ぐらいしかいないそうです。残りの3万人は、この国にセカンドハウスと居住権を持つ、世界中の大金持ちってことですね。

続いては、モナコを後にし、エズ(Eze)に向かいます。

エズは、崖の上にあるこぢんまりとした集落で、中世の佇まいがラブリーです。


階段をえっちらおっちら上っていくと、てっぺんに植物園(入場料6ユーロ)があって、そこからの絶景が素晴らしい。


エズにはホテルが2軒あるので、泊まりで滞在するのもよさそうです。レストランからのビューが素晴らしいとのこと。

40分ほどの滞在で、エズ観光は終了。

モナコとエズの他にも、予定されてた観光ポイントがいくつかあったのですが、カンヌに帰る電車に合わせ、ツアーを早めに切り上げてニースの駅へと戻ります。貸切だとフレキシブルでいいですね。


カンヌに帰って、ひとり寿司ディナー。醤油が2種類(辛口と甘口)で、ロールは海苔が内側ですね。

グルテンフリーは、一応、続いています。


▼紺碧色のリヴィエラ海岸 エズ・マントン・モナコ公国<終日/日本語ドライバーガイド/モナコ発>

2017年5月30日火曜日

連日の「映画修行」。カンヌ映画祭で面白かった映画は?

カンヌ映画祭に初めて参加して気づいたことには、このイベントは、カンヌ市内に点在する30以上のスクリーニングルームで、毎日200回以上のスクリーニング(上映)が行われるという、いささか気が狂ったような催しだってことです。「映画祭」なんだから、色んなところで色んな映画が上映されてるのは当たり前ですけど、それにしても12日間でのべ2000回以上の上映が行われるなんて常軌を逸しています。


これは、オランピアという映画館。9スクリーンあって、一般の興行と映画祭の上映が両方行われています。

上映には、非常に大ざっぱに分けて2種類あります。監督やキャストが登壇し、招待客やプレス向けに行われる「公式上映」と、マーケット(マルシェ)に映画を買い付けにきたバイヤー向けの「マルシェ上映」です。要するに、映画を「買わない人向け」と「買う人向け」。私たちは「買う人向け」のマルシェ上映を中心に、スクリーニングルームをハシゴするように見ていきます。

朝イチの上映は8時30分からで、最終は22時30分スタート。時には深夜24時30分スタートの上映もあります。


バイヤーの人たちは、毎日4〜5本、多い人で7〜8本の映画を見ます。といっても、本編を全部通して見るわけではなく、「つまらない」あるいは「商売にならない」と見切った時点で席を立って、次のスクリーニングに向かいます。

だから、常に通路に近い席に座る。上映が始まって、5分で出る人もいます。退場者が続出すると、何か場内が殺伐とした雰囲気になります。「退場者が多い=売れない作品」でほぼ間違いない。

そして、上映される映画は、もちろんヨーロッパ映画が中心。ダークな色調、あるいはダークな内容のものがやたら多い。例えば、シリア難民が流入しすぎて社会問題になっているのがテーマの映画がたくさんあります。LGBTものもかなり多い。

パルムドールを取った「The Square」という映画も見ましたが、個人的には「ヘンな映画だなぁ」という感想しかありません。監督の才気がにじみ出るキラーショットはいくつかあるけど、まとまりに欠ける軽量級作品という感じ。パルムドールとは驚きでした。


逆に、重い話なのに忘れがたい凄い映画もありました。「Loveless」という映画です。「裁かれるは善人のみ」のアンドレイ・スビャギンツェフ(←なんて覚えにくい名前)監督の新作で、完全に結婚生活が破たんしている夫婦の家から、ひとり息子の12歳の少年が行方不明になる話です。

冒頭、カメラは固定アングルで、沼を映しています。何の変哲もない沼を。沼の周囲の木々には雪が積もっています。冬景です。この沼の画が、角度を変えて3カットも4カットも続くんですわ。「これ、どこの沼だよ。この沼、世界遺産かなにかかよ?」って突っ込みたくなるぐらい延々と。

途中のストーリーは一切省きますが、主人公の夫婦に、観客はまったく共感できません。夫婦の間に愛はなく、お互いに不倫関係の相手がいて、しかも自分たちの子どもすら疎んじている始末。「感じられるは不愉快のみ」。

そんな展開の末、なんと映画のラストシーンで、冒頭の冬景の沼が再び登場するんですね。「ピンピンピンピンピン……」というピアノの高音とともに。

私は思わず「ぐおおお」と呻いてしまいました。イライラしながら鑑賞していた観客は、最後の最後、沼のカットに到って、この辛いストーリーの結末を知るというもの凄い仕掛けでした。辛いけど大きなカタルシス。遠大なループ構造。ちょっと感動したな。審査員賞ゲットだそうです。さすが。


そんなこんなで、参加初日から4日間で14〜15本の暗い映画を見た私は、身体も頭もヘロヘロです。

朝っぱらから映画を見る。暗い。重い。
映画館を出ると南仏の最高の青空。何だこのギャップ。
次の映画がまた暗くて重くて辛い。
青空の下、白ワイン飲みながら美味しいランチ。ひゃっは〜。
午後の映画もまた暗くてヘンでワケわかんない。

これ、何かの修行ですね。カンヌ映画祭の神髄がだんだん分かって来ました。



自身の体力とメンタルについて熟考の結果、5日目はオフにして、ひとりでモナコに遊びに行くことにします。