2011年10月2日日曜日

モンサンミッシェルの罰当たりなオムレツ屋 フランス・クロアチア旅行記2011その4

パリからTGVでレンヌへ。そして、レンヌでレンタカーに乗り換えてモンサンミッシェルへやって来ました。前回ここを訪れたのは、1998年のワールドカップ・フランス大会の時。つまり、13年ぶりの再訪です。


到着したのがちょうどお昼時ということもあり、例のオムレツ屋で食事ということになりました。13年前、やはりお昼時にこの店でランチということになり、行列に並んだ末に、たいして味もしない名物料理に割高な勘定を支払った記憶があります。

しかし、主よ、人間は過ちを繰り返してしまう生き物なのですね。


その店、有名なプラールおばさんの店は、お昼時なのに意外なほど空いていました。給仕が、表紙の右肩に日の丸のついた、ペラペラのメニューを持ってきます。早速開いてみると、20ユーロ、10ユーロといった値段が見えます。そうだよ、13年前は味のしないプレーンなオムレツに20ユーロぐらい払った記憶があるよと思い出しながらメニューの検討を始めると、先の給仕が戻ってきて、我々のメニューを取り上げてしまいました。

新たに持ってきたメニューは、分厚い合成皮革の装丁に、やはり日の丸がプリントされた豪華版。

今度は、25ユーロ、35ユーロ、50ユーロと先のメニューより高い数字が目に入ります。思わず「さっきのメニューも見せて」と言いますが「ノン、ノン」と断られます。もう、ハナからうさん臭い。恐らく、さっきのは団体客向けのメニューだったのでしょう。

メニューのトップに載っている、オムレツにオマール海老が添えられているランチセットみたいなものを頼むことにします。25ユーロ。どうやら、これより安いものは頼めないようです。日本人は。

腑に落ちない感覚を抱きつつ、一行4人は同じものをオーダーし、白ワインのハーフボトルをシェアすることにしました。オーダーの際に「海老は1匹? それとも半分?」と聞かれます。答えはもちろん「半分」です。海老を食いに来たわけではありません。

ワインがきて、付け合わせのサラダがきて、乾杯してる間もなく、オムレツと海老がやってきました。「早い!」いや「早すぎ」です。作り置きしてあったのは間違いありません。


もともとオマール海老なんて食べるつもりはありませんでしたが、その効用は認めることにしましょう。味のないオムレツと一緒に食べることにより、食事の淡泊さが緩和されます。昔に比べ、1人前あたりのオムレツの量も少なくなっているようで、普通に完食できます。

だけど、オマール海老とオムレツ、主客逆転してないか? まあいいか。そんなことより、問題は勘定です。勘定を見て、ほろ酔い気分が一気に醒めました。

4人で344ユーロ(約3万6000円)。オー・ララー!

勘定書には、例のオムレツセットが1人75ユーロと書いてあります。そんなはずはない。メニューには25ユーロと書いてあったじゃないの。給仕を呼びます。

「ちょっと、何これ?」

若いお姉ちゃんは、声をかけられた瞬間説明責任を放棄して、近くにいたチンピラ風のオッサンを連れてきます。

「ちょっとこら、何だこの勘定は?」

オッサンは我々に説明を試みますが、英語が良くしゃべれないので、何を言ってるのかさっぱり分かりません。らちが明かないので、奥から一層極悪な風体の若頭を連れてきます。

若頭が言うには、「オマール海老は100グラムで25ユーロ。あんたらが食べたのは、300グラムだから75ユーロなんだ」と。「オマール海老は、ミニマムで300グラムからだ」と。

「そんなの聞いてねえ。もう一回メニュー見せてみろ」

メニューには、確かに金額の下に「海老100グラムの値段」と小さく書いてあります。しかし、ミニマム300グラムなんてどこにも書いてません。オーダーの際に説明も受けてません。

「なあ、あんたらは海老を300グラム食べたんだ。だからこの値段なんだよ」


大天使ミカエルの足下で、かくも悪辣な商売に精を出す一家は、間違いなく地獄に堕ちることでしょう。聖なるプラールおばさんの伝説すら、もはや美談などではなく、守銭奴経営者たちが捏造したのではないかと思わされるほど。

これから彼の地を訪れる方、決してこの呪われた店で食事をしてはなりません。店の前で演じられる、チャンチャンチャンと卵がかき混ぜられオムレツに焼かれる見世物を堪能したら、通りに並ぶ他の店で食事されることをおすすめします。どうしてもオムレツが食べたい方は、この店以外でも食べることができますから。

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