2017年1月22日日曜日

老人と海と革命……ゲバラとヘミングウェイに依存しすぎだよ、キューバ

ハバナの町をブラブラしていて驚く(つか、呆れる)のは、チェ・ゲバラの肖像ををやたらと目にすることです。

これは、1時間に1回とかそういうレベルではなく、5分に1回、いや旧市街なら1分に1回って感じです。


お土産屋には、ゲバラのTシャツがこれでもかと吊されています。


こちらはトートバッグですね。

チェ・ゲバラは1967年に亡くなっていますから(享年39)、今のキューバ国民のほとんどは、生前のゲバラの記憶などないでしょう。学校で学ぶところの「建国の英雄」のひとりですよねえ。

じゃあ、これを日本の偉人に置き換えてみたら誰相当なのよ?

60年代に、若くして亡くなった偉人についてググってみると、力道山が1963年没でした(享年39)。あとね、三島由紀夫が1970年没(享年45)。

つまり、日本に例えるなら、三島由紀夫や力道山がいまだに国民のアイドル(シンボル)だっていう状況です。どう考えても異常です。キューバにおいて「時が止まっている」感じが分かるでしょ?

アメリカ人だと、マルコムXが1965年没(享年39歳)なんですよ。ゲバラはマルコムXと同世代で、同じ年齢で没している。

建国(=革命)の英雄なんだけど、50年前に死んだ人物の亡霊がいまだに「国のアイコン」であるところが、キューバという国を象徴しているんだなあ。

この、肖像が蔓延しているゲバラのポジションは、本来フィデル・カストロのものだったはず。ですが、カストロは自身の肖像が偶像崇拝の対象になるのを嫌ったこともあって、ゲバラのみがこんなに普及したってことなったんでしょうか。

とにかく、この国最強のキラーコンテンツは、チェ・ゲバラ以外にありません。

そういえば、この「ゲバラあふれてる感」、過去にもどこかで記憶があるな……。

中国における毛沢東? うーん、ちょっと違うな。だって毛沢東、そんなにカッコよくないじゃん。

カリスマ性とルックスを兼ね備え、商品にもなるという点では、高知における坂本龍馬ですかねえ。


坂本龍馬は、1836年生まれ、1867年没です。享年31歳。

しかし、キューバのゲバラは坂本龍馬のレベルをはるかに上回っています。お土産屋以外にも、ゲバラの姿はそこら中にあります。


本屋の入り口の柱にもゲバラ。


屋根の上の給水タンクにもゲバラ。著作権(肖像権)フリー状態だな。


このゲバラの置物は1つ5CUC(=5ドル)。


ほら、お札だってゲバラ。

もう、どんだけゲバラ好きなんだよってw


これは、有名な革命広場のチェ・ゲバラ。

革命広場にはもう1人、やはり革命の英雄であるカミーロ・シンフエゴスの肖像もあるのですが……。


シンフエゴスを知らなかった私には、イランの故・ホメイニ師にしか見えませんでした。

シンフエゴスはキューバ人ですが、ゲバラはキューバ人じゃないんですよ。アルゼンチン生まれ(ユダヤ人説もある)。母国じゃなくて、他国でここまでになった人物ってあんまりないよねえ。

あと、キューバゆかりの人物といえば、文豪ヘミングウェイ。

前のエントリーでも書きましたが、ヘミングウェイの愛したモヒートやダイキリを飲ませる店が観光名所になっていて、大変賑わっています。

これは、ヘミングウェイが一番好きだったモヒート。ボギデータ・デル・メディオというバー。


ヘミングウェイは、砂糖抜きをオーダーしていたそうです。分かる分かる。キューバ人、砂糖の量多すぎw


これは、ヘミングウェイが一番好きだったダイキリを出すバー。フロリディータというバーです。カウンターの端っこに、ヘミングウェイの銅像がある。

あと、ヘミングウェイが定宿にしていたホテル、アンボス・ムンドスも観光名所ね。ここはハバナ市内有数のWiFiスポットになっていて、ホテル前の道端に旅行者が鈴なりに座ってます。

それにしても……キューバはもう、どんだけこの2人に依存してんだよって感じです。もっと観光名所を増やさないとアカンよね。

ところで、ゲバラとヘミングウェイには、意外な共通点がありました。

アーネスト・ヘミングウェイに、エルネスト・ラフェアエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ。2人ともファーストネームがErnestなんですよ。

そして、なんと今年「エルネスト」って映画が公開されるそうです。日本・キューバ合作だって。

ゲバラと一緒に、ボリビアでゲリラ戦を戦った日系人が主人公とのことです。



あ、そうそう。最後になりましたけど、ゲバラやカストロのキューバ革命の偉業について興味がある方は、革命博物館の見学はマストです。

ここを訪れて、私は「ミュージアム(博物館・美術館)」の定義を再考しましたね。そこに展示されているのは、美術品でも骨董品でもなく、キューバ革命のプロセスなんですよ。

カストロ率いる革命軍が、どんな作戦を立てて、どうやって政府軍との戦いを制していったかというキューバ革命の歴史が、恐ろしく地味な展示品を連ねて語られているという、非常に珍しいミュージアムです。


そしてここには、町中ではほとんど見かけない、フィデル・カストロの肖像があるんですよ。

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