2015年11月30日月曜日

「2001年宇宙の旅」のフルオーケストラ上映を見に行ってみた

先週の水曜日(2015年11月25日)、「2001年宇宙の旅」をフルオーケストラの伴奏で上映するという公演がありました。ライブ・シネマ・コンサートというイベントで、場所がBunkamuraのオーチャードホール。


映画は全編を上映し、音楽やコーラス部分をライブで演奏するというなかなかチャレンジングかつゴージャスなショウです。台詞やSEはオリジナルの音声がイキ、日本語字幕がついてます。

このフォーマットによる公演は、2010年にロンドンでロンドン・フィルの演奏で初めて行い、その後ヨーロッパ各地やニューヨーク、ワシントンDC、さらに上海など世界中で現地のオケの演奏で公演が行われているのだそうです。そして、ついに東京にもやってきたと。

今回のオーチャードホールの演奏は、指揮がロバート・ジーグラー、オケが日本フィル、東京混声合唱団、合唱指揮が山田茂という構成です。

ライブ演奏される曲目は;
リヒャルト・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」op.30から 導入部
リゲティ 「レクイエム」から キリエ
ヨハン・シュトラウス2世 ワルツ「美しく青きドナウ」
リゲティ 「ルクス・エテルナ」(永遠の光を)、「アトモスフィール」
ハチャトゥリアン バレエ「ガイーヌ」から アダージョ


開演前の会場はこんな感じ。

そうなんです。オーチャードホールはオケピットがないんです。オケ団員も合唱団もステージ上にむきだし。しかも、スクリーンがちっさい!

この時点で、だいぶ鑑賞のモチベーションが下がってしまったのですが、まあしかし、オケピットがあるホールでも、合唱団まで全員は収まらないかこれがベストかと気を取り直して上映に備えます。

19時、オケによるプレリュードがしずしずと始まりました。そして上映スタート。



♪パーパーパーーッ パパーッ!
♪デンドンデンドンデンドン……

おうおう。生だよ、生オケだよ。生ティンパニのサウンドがめっちゃ響いてくる。

オープニングはさすがにちょっと興奮します。しかし、猿人が骨を振り回すシーンが終わり、宇宙船のシーンに移っていくと、このホールの致命的な問題が明らかになります。

オケおよび合唱団の手元照明が、スクリーン下部に反射して明るく光ってしまうんです。スクリーンがちっとも暗くない。

宇宙のシーンなのに、宇宙が暗闇じゃないわけで。キューブリックなら激怒してんな。

合唱、オケ、それぞれのパートがない場合は、照明を消灯してくれるので、だいぶスクリーンが暗くなってましたが。

それにしても残念だなあ……。



残念だなあ、残念だなあと思いながらも、インターミッションを挟んで都合3時間、堂々のパフォーマンスを堪能しました。

オケについては「ツァラトゥストラはかく語りき」のパートで、正直、あんまり合ってない部分がありました。「美しく青きドナウ」のパートはまずまずでしたね。

そして思いがけず、クワイヤ(合唱)が予想外に素晴らしかった。



モノリスが聳え立つ、禍々しい雰囲気のシークエンスにリゲティの神々しくも前衛的な旋律が絶妙にマッチ。この合唱団、ちゃんと数えてないけど40人ぐらいいましたからね。

残念な部分もあり、想定外に素晴らしかった部分もあり、個人的には75点ぐらいの評価なんですが、とにかくもっとデカいスクリーンに「2001年」を映して欲しかったというのが正直な感想です。

だって、往年の名画を違ったフォーマットでプレゼンテーションするという主旨のイベントですから、まずは映像を主役として、きっちりと、圧倒的なクオリティで投射するべきです。オケはその引き立て役として、映像の陰で力いっぱい演奏しているというのがあるべき姿。

しかしスクリーンの大きさと解像度が十分でないと、どっちが主役かわからない、中途半端なステージになってしまう。

この日の翌日に、全然別の用事でTOHOシネマズ日本橋のスクリーン8に行ってたんですが、ここのスクリーンはオーチャードの3倍ぐらいありましたからね。面積にして。

21世紀の映画ファンはIMAXとか3Dを経験してしまっているので、生半可なスクリーンサイズでは、伝説的な傑作「2001年宇宙の旅」をもってしても、映像的なカタルシスは得られないと。

まあしかし、それでも「2001年」は本当に凄い映画です。公開されたの、1968年ですよ。およそ50年前ですよ。ちなみに、アポロ11号が月面に着陸したのが1969年ですから、アポロより先! アポロが月を目指している時代に、キューブリックは木星を目指していた。

この「2001年」、私が前回見たのは「インターステラー」公開時なんですが、その時はDVDでの鑑賞。スクリーンで見るのは、おそらく20年以上ぶりです。

改めて見るに、「CGのなかった時代に、どうやって撮ったんだ?」の連続です。

一番驚いたのは、居眠りしている宇宙飛行士の指からがペンが離れて中に浮かび、スッチーが歩いてきてそれをキャッチして飛行士の胸ポケットに戻すシーン。うーむ。どうやって撮影したんでしょ。

あと、個人的に嬉しくなったのは、Siriのネタ元がHALだって確信できたことね。

50年を経て、いまだ後世に影響を与え続ける映画。ひれ伏すしかありません。私の生涯ベストワン作品であることに変わりはありません。いまだに。

ところで、これを見て以来「生オケ(ライブ演奏)と映画のコンビネーション」で見たい映画って何だろう?というのをずっと考えています。

例えば「地獄の黙示録」。


ヘリからのナパーム弾投下のシーンにワグナーの生オケ!ワクワクしますねえ。しかし、この映画ではドアーズも重要だからなあ。さすがにドアーズのパートをコピーバンドにやらせてしまったら、ガッカリしかないでしょうね。

次に「ラストエンペラー」。


これ、意外にイケルんじゃないの? オケに加えて、中国系の楽器が多くなりそうですが、西洋の現代音楽がないので上手く仕上がりそうです。教授がタクト振ったら完璧じゃないですか。


以上、2本とも撮影はヴィットリオ・ストラーロですね。ストラーロのゴージャスな映像にオーケストラの生演奏。想像するだにワクワクですね。 

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