2016年10月7日金曜日

「英国一家」とデビッド・リンチが突如リンク

今日は本のご紹介。当ブログでもかつてレビューした「英国一家、日本を食べる」というけっこう売れた本の著者が、今度は家族でインドに長期滞在する話。

この本は2〜3カ月ほど前に中央区の図書館で一度借りたことがあります。しかし、冒頭からあまり面白いと感じることができず、3分の1ほど読んだところで返却してしまったのでした。私はインドに数回行ったことがあるので、この本の著者が体験したカオスな町の様子はすでに経験済み。そこが、面白いと感じなかった理由なのかも知れません。


そして先週、今度は文京区の図書館から、「ずいぶん前に予約していた『英国一家、インドで危機一髪』が、ようやくあなたの番になったわよ」とメールが来ました。

悩ましいところです。面白くなかったかので、一度はドロップアウトした本です。だけど、他にも予約していた本(というかCD)が同じタイミングで準備完了になっていたので、スルーせずにもう一度借りることにしました。

そしたら、これがちょっとした驚きの展開だったんですよ。

この本は、異国での生活に関する英国人一家のドキュメントなんですが、「日本を食べる」が食いしんぼう記録だったのに対し、今作は自我の再構築みたいな話になってます。著者も前書きに次のように記しています。
「結局この本は、精神的に破たんし、崩壊し、燃え尽き、失望し、大食漢で、頭の回転が悪くて、アルコール漬けで、しかもふたりの子を持つ男が、インド亜大陸の人々と人情と狂気と知恵に立ち向かい、その顛末を語る内容となってしまった」
四十路を間近に控えた著者が、将来を憂い、アルコールに現実逃避して悶々とする中、インドで理不尽な場面に何度も遭遇して疲れ果てるという、なんともストレスフルな描写が続きます。読んでて辛い……。

前回、私は本の前半部でくじけたので、おもむろに真ん中あたりを開いて読み出しました。著者が、マイソールでヨガの道場(ヨガシャラ)に通い始めます。以下、初日の記録。
「僕は泣きたくなるくらい痛くて涙を浮かべ、額には滝のような汗が流れ落ちていた。下腿と足にはひどいしびれがビリビリと走っていて、胸にはただならぬ痛みがあり、ペニスは身体をすくませたシャー・ベイ犬のように縮み上がっている。ヴィネイ(ヨガの先生)の指示でうつ伏せにになって休むまで、身体がまったくついていかずに二度も中断する羽目になり、ゴールしたトライアスロン選手のようにただ立ちつくしていた」


実際に著者が通ったヨガシャラのWebサイトがありました。なんともハードコアなシャラみたいです。実はこれ、著者の奥さんが、旦那のアルコール依存症を改善(つか、治療だな)するために、無理矢理ブートキャンプみたいなヨガシャラに申し込んだってことみたいです。奥さんはもっとマイルドなシャラに行き、旦那だけハードな1カ月のコースにぶち込まれたと。

ヒィヒィ言いながらも、毎朝律儀にシャラに通い続ける筆者でしたが、ある日こんな出来事が。
ある朝、天然のオーストラリア人、キムの声が聞こえてきた。気難しいニューヨーカーと超越瞑想(TM)について話しているが、どうやらニューヨーカーはそのコースを受けるつもりらしい。
「カリフォルニア生まれの新興宗教みたいなものよね、ヨギが宙に浮かんだりするんでしょ?」キムが言った。
「ちがうわ、新興宗教じゃなくて立派な瞑想テクニックよ」ニューヨーカーが答えた。「アメリカにはね、住民全員でそれをやって、犯罪が減った町もあるのよ。憂鬱や緊張やストレスや不安から解放されて、集中力が増すらしいわ」
僕の耳がピクリと動いた。
「……それに、クリント・イーストウッドだってもう何年もやってるそうよ」
それが決め手になった。
結局、彼らはマハリシュ・マヘーシ・ヨギ(ビートルズのメンバーも通った歴史的なヨギ。1918ー2008)の門弟のひとり、マンダヤム・A・ナラシマンに師事することになります。アナンタ研究財団という団体を運営する人物です。

ヨガのところでけっこう面白くなってきたので、どんどん読み進めて行きます。そして、瞑想体験のくだりになって読書のエンジンがぶんぶん回りだしました。引用します。
TMの著名な支持者であるデイヴィッド・リンチは、初めての瞑想についてこう述べている。
「エレベーターに乗っていて、ケーブルが切れたような感じでした。ドーン! とね。至福のなかへーー純粋な至福のなかへ落ちていったのです。次の瞬間、僕は幸福のなかにいました。すると先生がこう言った。『目を覚ましましょう。20分たちました。僕は叫んだ、『もう20分たったのですか!?』……それはあなたを純粋な意識、純粋な知識の海に連れて行きます。でも、それはよく知っているもの、あなた自身なのです。幸福感はすぐに湧き上がってきますーーまやかしではなく、中身の濃い、すばらしい幸福感が」
キター!デビッド・リンチ。まさかこの本でデビッド・リンチに関する記述が出てくるなんて! 思わず「おお」と唸ってしまいました。

何をかくそう、わたしもリンチの影響で瞑想を始めた人間です。ただし、私のはあくまで自己流。TMも検討しましたが、けっこうな費用がかかるので二の足を踏んだ過去があります。

そして今週末、LAで行われるデビッド・リンチのイベントに私は参加するのでした。DAVID LYNCH Festival of Disruptionというイベントで、2日間にわたってリンチがキュレーションする、ライブやトークや映画の上映などが行われるイベントです。収益金は、リンチの運営するTM普及のための財団、David Lynch Foundationに寄付されます。


デビッド・リンチに関するちょっとしたセレンディピティー体験ですね。ていうか、カルマの導きって感じ?

いずれにせよ、この本読んで改めて思ったのは、インドは遊びに行くところじゃなくて、修行しにいくところなんだなと。私も、ヨガや瞑想をワールドクラスのグルに教わりたい。年末はマイソールに行こうかなと真剣に考え始めました。

その前に、まずはLAです。今日の7時の飛行機で、デビッド・リンチに会いに行ってきます。

▼プラナヴァーシャ・ヨガ
▼アナンタ研究財団
▼David Lynch Festival of Disruption

▼「英国一家、日本を食べる」のエントリ



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