世界最大のSNS、フェイスブックの誕生と、それを創設した天才プログラマー、マーク・ザッカーバーグ周辺の人々(ハーバード大学の学生たちや、シリコンバレーの会社転がし屋)を描いた話題作「ソーシャルネットワーク」を試写で見てきました。
一言でまとめるなら、「2000億円持ってるけど、友だちが3人しかいない男の話」。これがなかなか良くできてる。
監督は「ファイトクラブ」「パニック・ルーム」のデビッド・フィンチャー。プロデューサーがスコット・ルーディン。ルーディンは「ノーカントリー」でオスカー作品賞を手にしていますが、他にも「チーム・アメリカ」や「スクール・オブ・ロック」や「ズーランダー」「ロイヤル・テネンバウムス」などなど、手がけた映画は業界人を唸らせるものが多い。
ルーディンとフィンチャーが組むのは初めてなのですが、この2人の名前だけで、ある程度中身は保証されたと思って間違いないでしょう。余談ですが、エグゼクティブ・プロデユーサーにケビン・スペイシーの名前がありました。恐らく出資してるんでしょうね。さぞやいい投資になったことでしょう。
さて、全米では公開と同時に大絶賛の嵐。早くも今年度のオスカー最有力候補に祭り上げられています。「現代の『ゴッドファーザー』だ」という評論も飛び出しているほど。
ちょっと待ってください。この映画にはドン・コルレオーネみたいな重厚感あふれる人物は一人も登場しないし、描かれる人々は、血縁をよりどころにする組織とは相反する人たちです。しかも、映画の中で人は死なないし、拳銃も出てきません。いくらなんでも「ゴッドファーザー」は比較の対象として間違っています。
この映画は青春映画です。今時の若者を、しかもとびきりの大金持ちになった若者を描いたスパイスたっぷりの青春映画。
かつて青春映画は、思春期の男女が惚れた腫れたして、スポーツや学業で一定の成果をものにする高揚感・達成感を描くものでした。ところが「ソーシャルネットワーク」の主人公は、学生時代に起業して、株式の時価総額を高めて大金持ちになる。それも、億万長者(ミリオネア)どころの金持ちでなく、1000億長者(ビリオネア)というケタ違いな大金持ちに。
サクセス・ストーリーであるとはいえ、一昔前のアメリカン・ドリームや少年ジャンプ的な「努力・友情・勝利」といったレベルのものではなくて、「裏切り・訴訟・M&A」といった、とてもキナ臭いイベントに彩られたストーリー。高揚感・達成感がややねじれているさまが21世紀的です。
そして、この映画は主要キャストがみんな素晴らしい。まず、主演のジェシー・アイゼンバーグ(マーク・ザッカーバーグ役)。華のないルックスで、とても映画で主演を張るような俳優ではないのですが、「ゾンビランド」と本作の主演で、今年はすごい当たり年になってます。感情を露わにしない、ギークで不遜な感じが秀逸です。
アンドリュー・ガーフィールド。彼は、「スパイダーマン」の新シリーズで主演を張ることが決定しています。マーク・ザッカーバーグとフェイスブックを共同で創設したエドゥアルド役。学生にしては小金を持ってるけど、才能もカリスマもない共同経営者。尻すぼみな情けない役柄を好演し、観客の同情を買うことでしょう。これなら、スパイダーマン(=ピーター・パーカー)役も大いに期待できます。
そして、ジャスティン・ティンバーレイク。ナップスターの創業者という、成功者なのか犯罪者なのかよく分からないうさん臭い役柄にハマリすぎ。時間にルーズだが押しは強い音楽業界人現代版といった風情で、これまでの(そして今後も)彼のベストアクトでしょう。ひょっとしたらオスカー助演賞まであるかも知れない。
そしてボート部の双子の兄弟! この映画最大のサプライズかも知れません。この双子、実は双子の俳優ではなく一人二役なんだそうです。つまり、双子の片割れはCG。CGつか、コピペですね。
日本では、東京国際映画祭のオープニング作品になってます。一般公開は来年の1月。IT業界周辺の皆さんは、間違いなく必見です。
曲名は言いませんが、エンディングに流れるビートルズ・ナンバーにシビれました。声を出して笑ってしまいましたよ。
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