2016年1月25日月曜日

これも誰か映画化してくれ、イーロン・マスクの評伝が面白すぎる

映画化希望シリーズその2です。「イーロン・マスク 未来を創る男」です。

イーロン・マスクについては、2013年に出た「イーロン・マスクの野望」という本がすでにあって、それ読んだ時にブログにレビュー書いているんですが(ケツにリンク置いときます)、今度の本はシリコンバレーのど真ん中から出てきたヤツで、こっちの方が全然面白い。筆者はアシュリー・バンスという人で、ニューヨーク・タイムズやブルームバーグでテック系の記者をやってる人物。


早速引用してみましょう。かつて、シリコンバレーのナンバーワン・ヒーローはスティーブ・ジョブズでしたが、今はイーロン・マスクなんだそうです。
この男は本気だ。宇宙移民の実現は、彼の人生の目的でもある。
自然体でこの世の不可能に挑戦するマスクのやり方は、シリコンバレーでは半ば神格化されていて、ラリー・ペイジのようなCEO仲間からも崇め奉られているほどだ。
かつてはスティーブ・ジョブズに心酔していた駆け出しの起業家らも、今はこぞってイーロン教に宗旨替えしている。シリコンバレーの起業家は時代の先を歩んでいるとはいえ、所詮、現実の域を外れていない。
ところがマスクは、シリコンバレーの居心地のいい世界とも一線を画し、常に波風を起こし、論争の的になっている。電気自動車、太陽光発電、ロケットなど壮大な夢を説き回っている。19世紀に人々の不安を煽って莫大な財産を築いたP・T・バーナムという興行師がいたが、マスクはそのSF版と言っていいだろう。


彼の1週間は次のような感じだそうです。自家用ジェットで全米中を飛び回っています。もう驚くしかない。
そんな崇高な目標のためにマスクが実践している生活は常識からかけ離れたものだ。典型的な1週間はテキサス州ベレアにある邸宅から始まる。月曜日にはプライベートジェットでロサンゼルスに飛び、スペースXで終日仕事だ。そのまま泊まり込み、火曜日はシリコンバレーに移動、今度はテスラで2〜3日過ごす。同社のオフィスはパロアルトに数カ所、工場はフリーモントにある。北カリフォルニアには住居がないため、高級ホテルのローズウッドか友人宅に泊まる。
金曜日の8時ごろだった。子どもたちとベビーシッターを引き連れてプライベートジェットで一気に移動し、空港からはクルマで友人らが待つキャンプ場に向かうことになっていた。友人たちはマスク御一行の荷ほどきを手伝い、真っ暗闇での到着をサポートするのである。
週末はハイキングだ。日曜の午後には子どもたちを連れてロサンゼルスに戻る。その晩には1人でニューヨークへ。そして睡眠。
月曜は朝のトーク番組に出演、会議に出てメールに返信してベッドに潜り込む。火曜朝にはロサンゼルスに取って返し、スペースXに出社。同日午後にはテスラの工場に顔を出す。その晩、ワシントンDCに飛び、オバマ大統領と会談。
水曜夜にロサンゼルスに戻る。スペースXで数日過ごし、週末はグーグルのエリック・シュミット会長がワイオミング州イエローストーンで開催する週末会議に出席する。当時、マスクは2人目の妻である女優タルラ・ライリーと離婚したばかりで……。


世の中に、プライベートジェットが存在しなくてはならない正統な理由がようやく分かりました。「飛び回る」ってこういうのを言うんだ。

ちなみにマスクはバツ2で、最初の妻との間に5人の子どもがいます。だから、テスラのモデルSが7人乗り(補助シート使用時)なんですよ。

テクノロジー業界の関係者は、マスクの取り組みや野望をビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズの例になぞらえたがる。
かつてジョブズやゲイツのもとで働き、マイクロソフトのチーフソフトウェアアーキテクトに上り詰めたエドワード・ジョンは、「イーロンは技術に造形が深く、しがらみや常識にとらわれずに大きなビジョンを掲げる。そして長期にわたって何かを追求する決意がある。加えて、ジョブズが得意とした天性の消費者感覚を持っている。自分の専門外で優秀な人材を引っ張ってくる才能はビルに近い」と評する。
「ゲイツとジョブズの2人を掛け合わせてバージョンアップしたのがマスクだ」と表現するのは、ベンチャー・キャピタリストとしてスペースX、テスラ、ソーラーシティに投資するスティーブ・ジャーベットソンだ。彼もまたかつてジョブズのもとで働き、ゲイツとも親交がある。

もう絶賛なわけですよ。シリコンバレー関係者は。「ビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズを掛け合わせてバージョンアップ」だって。がしかし、彼の下で働く社員の言葉はこんな感じ。

「あの人は信義とか人間関係みたいなものが完全に欠落しています。みんな長年、彼のために辛抱強く働いているのですが、よく考えもせずにゴミ屑同然にクビにされた人はたくさんいます。たぶんほかの社員に対する見せしめ的な意味もあるんでしょう。人間関係をすっぱり忘れることができるのだと思います。彼の下で働いている人たちは、戦争のための弾薬みたいなものです。ボロボロになるまで使われて、目的を達成したらお払い箱なんですね」

ジョブズと一緒じゃないですか! 典型的な「毀誉褒貶相半ばする人物」だよ。やっぱ天才CEOはこうでないと。

ジョブズとまったく違う面もあります。

マスクのやり方は限界がある。マーケティングやメディア対応はジョブズほどうまくない。プレゼンテーションのリハーサルもしないし、スピーチを磨くこともない。せっかくの大ニュースを金曜日の午後に出すような素人っぽさもある。記者たちの都合など考えもしないのだ。
ジョブズはすべてのプレゼンテーションやメディア掲載のタイミングをとにかく重視した。マスクにはそういう余裕がない。
「練習するような暇はないね。ぶっつけ本番で話すから、結果はそのときどきで違ってくるよ」とマスクは気に留めない。
グーグルの共同創業者でCEOのラリー・ペイジもマスクの熱狂的な支持者のひとりだ。マスクがあちこちのオフィスを飛び回る関係で寝る場所も毎日のように違うことはすでに説明したとおりだ。ペイジの家も、その宿泊先のひとつにされてしまった。
「彼はホームレスみたいなものですよ。本当に面白い。たいていは『今夜泊まるところがないんだよ。行っていい?』っていうメールが来るんです。さすがに鍵までは渡してないですけどね。

いま、宇宙開発の分野では、イーロン・マスクとジェフ・ベゾスがガチでやり合っています。マスクのスペースXと、ベゾスのブルーオリジンが、「自力で戻って来るロケット」を打ち上げる実験をやっていて、両社とも成功させています。そしてマスクは、ベゾスに対して怒りを隠しません。
スペースXが複雑なシステムを進化させた例は枚挙にいとまがない。同社の工場には不気味な巨大装置がある。摩擦攪拌接合法(FSW)という方法で溶接する機械だ。この装置のおかげで、ファルコンロケットのボディーに使う巨大な板金の溶接が自動化できるようになった。
この技術が有効とわかるや、ライバル各社は一斉にFSWに飛びつき、中にはスペースXから専門家を引き抜こうとする動きも見られた。
特になりふりかまわなかったのは、アマゾンの創業者、ジェフ・ベゾスが設立した航空宇宙会社ブルーオリジンだ。同社は、世界トップクラスのFSW専門家であるスペースXのレイ・ミレクタを引き抜き、マスクとの仲違いを引き起こした。マスクが憤慨する。
「ジェフの奴がレイを引き抜いて、特許を取らせようとしたんだ。そもそもレイがウチの会社でやっていた技術なのに、図々しいにもほどがあるよ。ブルーオリジンはこういう専門能力のある人材を見つけると、給料2倍を餌に一本釣りで引き抜こうとするんだ。まったく余計なことをしてくれる。不愉快だ」
「彼は大王様になりたくてたまらないんじゃないか。倫理観もへったくれもなくて、ネットショッピング業界で邪魔者がいれば皆殺しにしている。正直言って、まったく面白くない男だよ」とマスクはバッサリ切り捨てたのだった。

いずれにせよ、この2人が21世紀の宇宙開発における超重要人物であることは間違いありません。マスクは「火星で死ぬ」のが夢だそうです。

「火星で死にたいね。できることなら、火星に行って戻ってきて、70歳くらいになったら再び火星に行って、あっちで暮らしたい。順調に行けば不可能じゃない。誰かと結婚して、たくさんの子どもが生まれていたら、たぶん奥さんは子どもたちと地球に住むと思うけどね」

誰か、このスーパースターの映画を作ってください。「スティーブ・ジョブズ」より絶対面白くなるはず。自家用ジェットで移動するロードムービー(スカイムービー?)でも面白いかも。

【過去記事】イーロン・マスクの評伝が面白すぎる。私を火星に連れてって!


Photo credit: pestoverde via VisualHunt / CC BY
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